ラブラドールレトリバーで注意したい主な病気
ラブラドールレトリバーでは、関節疾患や一部の遺伝性疾患など、犬種との関連が知られている健康問題があります。ただし、ラブラドールレトリバーだから必ず発症するわけではありません。
ここでは、特に知っておきたい病気について、特徴と日常生活で気づきやすい変化を紹介します。似た症状が別の病気でみられることもあるため、気になる変化が続く場合は動物病院へ相談しましょう。
股関節形成不全
股関節形成不全は、股関節が正常に発達せず、関節にゆるみや不安定さが生じる病気です。ラブラドールレトリバーでは、注意したい関節疾患のひとつとして知られています。
立ち上がるまでに時間がかかる、後ろ足の動きがぎこちない、階段や段差をためらう、散歩や運動を嫌がるといった変化がみられることがあります。
股関節形成不全には遺伝的な素因だけでなく、成長過程や体格など複数の要因が関わります。そのため、肥満や運動のさせ方だけを原因として考えるのは適切ではありません。
歩き方の異常は筋肉や靱帯、神経などの問題でも起こります。気になる変化がある場合は、症状だけから股関節形成不全と判断せず、獣医師の診察を受けましょう。
肘関節形成不全・変形性関節症などの関節疾患
ラブラドールレトリバーでは、股関節だけでなく肘関節形成不全にも注意が必要です。肘関節形成不全は、成長期に肘関節を構成する骨や軟骨などの発達に異常が起こる疾患群です。
前足をかばう、歩き始めがぎこちない、運動後に足を引きずる、以前より散歩を嫌がるといった変化がみられることがあります。
また、ラブラドールレトリバーでは、変形性関節症との関連を示した犬種比較研究もあります。変形性関節症は、関節軟骨などが徐々に変化し、痛みや動かしにくさにつながる病気です。
肘関節形成不全と変形性関節症は同じ病気ではありませんが、どちらも歩き方や活動量の変化として現れることがあります。「年齢のせい」と決めつけず、普段との違いを確認することが大切です。
外耳炎
外耳炎は、耳の入口から鼓膜までの外耳道に炎症が起こる病気です。ラブラドールレトリバーでも、日常生活のなかで注意しておきたい耳のトラブルです。
耳を何度もかく、頭を頻繁に振る、耳から強いにおいがする、耳垢が増える、耳の入口が赤くなるといった変化がみられることがあります。
外耳炎には、耳の形だけでなく、アレルギー性皮膚疾患や感染などさまざまな要因が関係します。垂れ耳であることだけを原因と考えないようにしましょう。
耳を痛がる、触られるのを強く嫌がる、耳掃除をしても症状が繰り返すといった場合は、家庭で処置を続けず動物病院で原因を確認してもらうことが大切です。
アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患
ラブラドールレトリバーでも犬アトピー性皮膚炎はみられ、遺伝的要因の関与を調べた研究があります。繰り返すかゆみや皮膚炎がある場合は、原因を確認することが大切です。
皮膚を何度もかく、足先をなめ続ける、皮膚が赤くなる、毛が薄くなるといった変化は、皮膚に何らかの問題が起きているサインになることがあります。
ただし、かゆみや赤みの原因はアトピー性皮膚炎だけではありません。寄生虫などによる感染症、食物に関連するアレルギー反応、皮膚コンディションの不安定さにより増殖しすぎた細菌が関連する皮膚炎などでも似た症状がみられます。
かゆみが続く、皮膚を傷つけるほどかく、脱毛やただれが広がっている場合などは、原因を確認するために動物病院へ相談しましょう。
進行性網膜萎縮症(PRA)などの遺伝性眼疾患
ラブラドールレトリバーでは、進行性網膜萎縮症(PRA)などの遺伝性眼疾患が知られています。PRAは、目の奥にある網膜が徐々に変性し、視覚に影響する病気の総称です。
暗い場所で動きにくくなる、以前は避けていた物にぶつかる、段差をためらうなど、日常の行動の変化から視力低下に気づく場合があります。
ただし、見えにくくなる原因はPRAだけではありません。目そのものの病気だけでなく、ほかの健康問題が関係することもあるため、家庭で病名を判断することはできません。
視覚に変化があるように感じた場合は、早めに動物病院で目の状態を確認してもらいましょう。
慢性肝炎・銅関連肝障害
ラブラドールレトリバーでは慢性肝炎への犬種素因が報告されており、なかでも肝臓に銅が過剰に蓄積する銅関連肝障害について研究されています。
銅関連肝障害には、銅の代謝に関わる遺伝的な素因に加え、食事から摂取する銅の量なども関係します。ただし、ひとつの遺伝子や特定の食事だけで発症が決まる病気ではありません。
元気や食欲の低下、嘔吐、体重減少などがみられる場合がありますが、初期には飼い主が気づける症状がほとんどないこともあります。
これらの症状は肝臓病だけにみられるものではありません。元気や食欲の低下が続くなど普段との違いがある場合は、原因を自己判断せず動物病院へ相談しましょう。
てんかん
ラブラドールレトリバーでは、特発性てんかんについて犬種内での遺伝的な背景を調べた研究があります。特発性てんかんとは、検査で明らかな脳の異常などが見つからないものの、繰り返して発作を起こすてんかんです。
発作では、全身のけいれんだけでなく、体の一部が繰り返し動く、突然反応が乏しくなるなど、さまざまな様子がみられることがあります。
ただし、けいれんや意識の変化がすべててんかんによるとは限りません。低血糖や中毒、脳の病気など、ほかの原因でも発作に似た症状が起こることがあります。
発作のような症状がみられた場合は、安全を確保したうえで、可能であれば様子や続いた時間を記録しておくと、受診時に獣医師へ状況を伝える手がかりになります。
ラブラドールレトリバーの遺伝性疾患と健康検査
ラブラドールレトリバーには、DNA検査を利用できる遺伝性疾患があります。一方で、股関節や肘関節、眼の健康状態など、DNA検査とは異なる方法で評価するものもあります。
そのため、「遺伝子検査を受けているから、すべての遺伝性疾患や健康問題を確認できる」と考えるのではなく、何を調べる検査なのかを分けて理解することが大切です。
DNA検査で確認できる主な遺伝性疾患
ラブラドールレトリバーでは、EIC(運動誘発性虚脱)、prcd-PRA(進行性網膜萎縮症の一型)、CNM(中心核ミオパチー)などについてDNA検査が利用されています。
DNA検査では、それぞれの疾患に関連する特定の遺伝子変異を持っているかどうかを調べます。ひとつのDNA検査ですべての遺伝性疾患を確認できるわけではありません。
EIC(運動誘発性虚脱)
EICは「Exercise-Induced Collapse」の略で、激しい運動や強い興奮などをきっかけに、足元がふらついたり、後ろ足に力が入りにくくなったりして虚脱することがある遺伝性疾患です。
ラブラドールレトリバーでは原因となる遺伝子変異が特定されており、DNA検査によって関連する遺伝子型を確認できます。
prcd-PRA
prcd-PRAは、進行性網膜萎縮症(PRA)の一型です。網膜にある光を感じ取る細胞が徐々に変性し、進行すると視覚に影響します。
ラブラドールレトリバーではprcd-PRAに関連するDNA検査を利用できます。ただし、PRAには複数のタイプがあり、この検査だけであらゆる遺伝性眼疾患を確認できるわけではありません。
CNM(中心核ミオパチー)
CNMは、筋肉の働きに影響する遺伝性疾患です。筋力の低下や運動時の異常などがみられることがあり、ラブラドールレトリバーでは関連する遺伝子変異を調べるDNA検査があります。
EIC、prcd-PRA、CNMなど、どの遺伝性疾患を検査対象とするかは国や犬種団体、繁殖方針などによって異なります。
子犬を迎える際に親犬の検査結果を確認するときは、「遺伝子検査済み」という言葉だけではなく、何の疾患について検査されているのかを確認するとよいでしょう。
股関節・肘関節・眼はそれぞれに適した検査で評価する
DNA検査で異常が確認されなかったとしても、ラブラドールレトリバーに関係するすべての健康問題を確認できたことにはなりません。病気や体の部位によって、適した検査方法が異なるためです。
股関節形成不全や肘関節形成不全では、関節の形や状態を確認するためにX線画像などによる評価が行われます。EICやprcd-PRAなどのように、特定の遺伝子変異の有無を調べるDNA検査とは目的も方法も異なります。
眼についても、prcd-PRAのDNA検査だけですべての眼疾患を確認できるわけではありません。眼球や網膜などの状態を確認するには、獣医師による眼科検査が必要になる場合があります。
親犬の健康検査について確認するときは、DNA検査の有無だけで判断せず、股関節や肘関節の画像評価、眼科検査など、それぞれの健康問題に合った検査が行われているかを見ることが大切です。
高齢のラブラドールレトリバーで注意したい体調変化
ラブラドールレトリバーが高齢になったら、特定の病気だけを警戒するのではなく、若いころと比べて体調や行動にどのような変化があるかを見ることが大切です。
年齢を重ねると活動量が減るなどの変化はみられますが、加齢によるものに見えても病気が関係している場合があります。「年を取ったから」と決めつけず、以前との違いに目を向けましょう。
歩き方や活動量の変化
散歩の速度が遅くなった、立ち上がるまでに時間がかかる、階段や段差を避ける、以前ほど遊びたがらないといった変化がみられることがあります。
高齢になると筋力や体力も変化しますが、関節や筋肉などの不調によって動きにくくなっている場合もあります。急な変化や、徐々に悪化している様子があれば動物病院へ相談しましょう。
食欲や体重の変化
以前より食欲が落ちた、食べる量は変わらないのに体重が減ってきたといった変化にも注意が必要です。
高齢犬では食事量や活動量が変わることもありますが、食欲低下や体重減少はさまざまな病気でもみられます。変化が続く場合は、加齢だけを理由にせず原因を確認してもらいましょう。
飲水量や排尿の変化
水を飲む量が以前より明らかに増えた、尿の量や回数が変わったといった場合も、体調変化の手がかりになることがあります。
飲水量や排尿の変化にはさまざまな原因が考えられるため、家庭で病名を判断することはできません。普段との違いが続く場合は、その変化を獣医師へ伝えることが大切です。
新しくできたしこり
高齢になると、体を触ったときに以前はなかったしこりに気づくこともあります。しこりには良性のものもありますが、見た目や触った感触だけで性質を判断することはできません。
新しいしこりを見つけた、以前からあるしこりの大きさや形が変わったといった場合は、動物病院で確認してもらいましょう。
高齢期には複数の体調変化が同時にみられることもあります。小さな変化でも、それまでの様子と明らかに違う状態が続く場合は、年齢だけの問題と考えず獣医師へ相談することが大切です。
ラブラドールレトリバーの肥満と健康への影響
ラブラドールレトリバーは、肥満や体重増加に関わる遺伝的な要因について研究されている犬種です。そのため、成犬になってからも体重だけでなく、体型や食事量を継続して確認することが大切です。
食欲や体重には遺伝的な要因も関係する
ラブラドールレトリバーの一部では、POMCという遺伝子の変異が、体重や体脂肪、食べ物への関心の強さなどと関連することが報告されています。
ただし、すべてのラブラドールレトリバーがこの変異を持っているわけではありません。また、体重には食事量や活動量、年齢、避妊・去勢後の変化など、さまざまな要因が関わります。
食欲が強い犬では、欲しがる様子だけを基準に食事やおやつを増やすと、必要以上のエネルギーを摂取しやすくなります。与えているフードやおやつを含め、1日に食べている量全体を把握しておくことが大切です。
肥満は関節などへの負担につながる
体脂肪が増えて体重が重くなると、股関節や膝などの関節にかかる負担も大きくなります。ラブラドールレトリバーでは関節疾患にも注意が必要なため、適正な体型を維持することは健康管理のひとつとして重要です。
また、肥満は体にさまざまな影響を及ぼしますが、特定の病気との関係を単純化しないことも大切です。
たとえば犬の糖尿病には体質や膵臓の病気、ホルモン異常など複数の要因が関わるため、肥満だけを直接の原因と考えることはできません。
体重だけでなく体型も確認する
同じラブラドールレトリバーでも、骨格や筋肉量には個体差があります。そのため、体重の数字だけでは太っているかどうかを判断しにくい場合があります。
体型を確認する方法のひとつが、BCS(ボディコンディションスコア)です。BCSは、肋骨の触れやすさや腰のくびれ、腹部のラインなどから体脂肪のつき方を評価する指標です。
体重が増えてきた、適正な食事量が分からない、現在の体型が適切か判断しにくいといった場合は、動物病院で体重とBCSを確認してもらい、その犬に合った食事量や運動量について相談するとよいでしょう。
早めに動物病院を受診したい症状
ラブラドールレトリバーに限らず、急に現れた症状や短時間で悪化している変化には注意が必要です。病名を家庭で判断しようとせず、緊急性が疑われる場合は速やかに動物病院へ連絡しましょう。
お腹が急に膨らみ、空えずきを繰り返している
お腹が急に膨らむ、吐こうとしているのに何も出ない空えずきを繰り返す、大量のよだれが出る、落ち着かず苦しそうにするといった症状がある場合は、すぐに動物病院へ連絡してください。
このような症状は、胃が大きく膨らんでねじれる胃拡張・胃捻転症候群(GDV)などでもみられます。GDVは大型犬を中心に起こることがある緊急性の高い病気で、ラブラドールレトリバーだけに特有のものではありません。
突然倒れる・立ち上がれない
突然倒れる、立ち上がれない、呼びかけへの反応が著しく悪いといった状態は、さまざまな重い異常で起こる可能性があります。
しばらく休めば治るだろうと様子を見続けず、速やかに動物病院へ連絡しましょう。意識や反応の状態、いつから症状が始まったかなどを伝えると、受診時の手がかりになります。
明らかに呼吸が苦しそう
安静にしているのに呼吸が明らかに苦しそう、呼吸するたびに胸や腹部を大きく動かしている、横になれないほど息苦しそうにしている場合などは、早急な受診が必要です。
呼吸異常には心臓や肺の病気をはじめ、さまざまな原因があります。家庭で原因を確かめようとせず、できるだけ犬を興奮させないようにして動物病院へ連絡してください。
けいれんが長く続く・繰り返している
けいれんが5分を超えて続いている場合や、短時間に何度も発作を繰り返す場合、発作後も意識や反応が十分に戻らない場合は、緊急性の高い状態です。
発作中は無理に口の中へ手を入れず、周囲の危険な物を遠ざけて安全を確保します。可能であれば発作が続いた時間を確認し、速やかに動物病院へ連絡しましょう。
ここで挙げた症状以外でも、急激に状態が変化した、短時間で悪化している、明らかに普段と様子が違うと感じた場合は、受診のタイミングを自己判断せず動物病院へ相談してください。
病気の予防と早期発見のためにできること
ラブラドールレトリバーの健康を守るためには、予防できる病気への対策を行うとともに、普段との小さな違いに早く気づくことが大切です。
ワクチン接種や寄生虫予防などでリスクを減らせる病気がある一方、遺伝的な素因が関係する病気など、日常管理だけでは完全に防ぐことが難しいものもあります。
病気をすべて防ぐことだけを目標にするのではなく、その犬に合った健康管理を続けながら、異変があれば早めに受診につなげましょう。
耳・皮膚・目・歩き方などを日常的にチェックする
日常生活では、耳のにおいや耳垢、皮膚の赤みやかゆみ、目の見え方、立ち上がり方や歩き方などを普段から確認しておきましょう。
毎日細かく記録する必要はありませんが、健康なときの様子を知っていると、「以前より歩く速度が遅い」「耳をよくかくようになった」などの変化に気づきやすくなります。
食欲や飲水量、排泄の様子、元気や活動量なども、体調を知る手がかりになります。ひとつの変化だけで病気を判断するのではなく、いつから、どのように変わったのかを見ることが大切です。
歩き方や発作のような動きなど、診察室では再現されにくい変化は、安全に撮影できる状況であれば動画を残しておくと、獣医師へ様子を伝える際に役立つことがあります。
定期的に健康診断を受ける
症状がない時期から定期的に健康状態を確認しておくことも、病気の早期発見につながります。診察では、体重や体型、皮膚や耳、目、心音、歩き方など、家庭では判断しにくい部分も確認できます。
必要に応じて血液検査や尿検査などを行うことで、外見からは分かりにくい体の変化が見つかることもあります。
健康診断の内容や受診する間隔は、年齢、これまでの病歴、生活環境、現在の健康状態などによって異なります。かかりつけの獣医師と相談しながら、その犬に合った検査内容や受診時期を決めるとよいでしょう。
過去の体重や検査結果を継続して残しておけば、その犬自身の変化も比較しやすくなります。症状が出てから受診するだけでなく、元気なときの状態を把握しておくことも健康管理に役立ちます。
まとめ
ラブラドールレトリバーには、関節や目、耳、皮膚、肝臓など、犬種として注意しておきたい健康問題があります。
ただし、すべての個体が同じ病気を発症するわけではなく、遺伝的な素因や年齢、生活環境などさまざまな要因が関係します。
大切なのは、病名だけを覚えることではなく、普段の歩き方や食欲、体重、耳や皮膚の状態、目の見え方などを把握し、いつもと違う変化に気づくことです。
また、遺伝性疾患のなかにはDNA検査で確認できるものがある一方、画像検査や眼科検査など別の方法で評価する健康問題もあります。必要な検査はその犬によって異なるため、獣医師と相談しながら健康状態を確認していきましょう。
日頃の体調管理と定期的な健康確認を続け、気になる症状があれば早めに受診につなげることが、ラブラドールレトリバーの健康を守るうえで大切です。



