犬にとって必要な薬「イベルメクチン」とは
イベルメクチンは元々ノーベル医学賞、物理学賞も受賞した大村智氏らによって1979年に発見された新種の放射菌から考案された薬です。この新種発見された放射菌が出す成分には寄生虫(線虫、糸状虫など)などの神経を麻痺させたり発育を抑制する効果がありました。その成分を改良し、より効果を高めた薬がイベルメクチンなのです。
イベルメクチンは犬などの動物に感染する寄生虫だけではなく、人に対して害をもたらす寄生虫に対しても効果を発揮することで知られています。この大村教授の発見が元で生み出されたイベルメクチンはアフリカで寄生虫によって失明する危機にある人々を今でも救っています。
イベルメクチンの犬に対する効果としては耳ダニ、シラミ、心糸状虫など多くの寄生虫の感染予防の他、身近ながら非常に怖い犬フィラリアの予防に効果的であることが知られています。
犬フィラリア症とは
犬の寄生虫感染による病気の代表的なものとして犬フィラリアがあります。犬フィラリアは蚊を媒介として感染する寄生虫病です。犬だけでなく猫もかかりますが、猫の場合、寄生虫を見つけにくく有効な治療法が確立されておらず、できるのは予防のみです。
犬の場合も発見が遅れて治療が遅れると死に至ることもある恐ろしい病気です。この予防にイベルメクチンが使用されるのです。
犬フィラリアの感染の仕方としては、犬フィラリアにかかっている犬の血液を蚊が吸うときに、非常に極小のフィラリア寄生虫の幼虫も一緒に吸い込んでしまい次に刺した犬などに二次感染するというものです。
フィラリア寄生虫は犬の心臓や肺動脈に寄生し、血液の流れを悪くするなど様々な悪影響を及ぼします。犬の心臓に寄生した成虫が臓器の中で死に血管が詰まることで死に至ることもあります。
犬フィラリアの症状としては元気がない、食欲がない、咳、やせる、呼吸が苦しそうにする、もっと悪化するとおなかが膨らむ、赤い尿などの症状が見られます。
犬フィラリア症の予防に使用されるイベルメクチン
犬フィラリアは感染すると時には心臓の手術が必要になったりと危険性の高い病気です。そのためにはかからないように事前予防をすることが必要になってきます。
ひと月に一回、少量のイベルメクチンを犬に投与することでフィラリア寄生虫を駆虫することができ心臓への寄生をほぼ防げるとされ、とても有効な予防方法とされています。
イベルメクチンを犬に投与することに対しての安全性についても気になるところだと思います。量に関して言えば、通常犬フィラリアに関しては濃度6~7μg/kgの薬が投与されるとされていますが、イベルメクチンの副作用は50μg以上で症状があらわれるとされているので、かなり少ない量で効果も期待できるということになります。
イベルメクチンを犬へ投与する際の注意点
犬に少量投与することで高い効果が期待されるイベルメクチンですが、やはり薬ですから注意すべき点や副作用などがあります。
第一にイベルメクチンは獣医のみが犬に投与、処方できる薬です。投薬は必ず専門医の指導の元で行うようにしましょう。また、イベルメクチンは効果的な薬ですがMDR-1遺伝子を持たない犬種、コリー種、コリー種の混ざった犬などには副作用が出やすいということが言われています。
さらに、犬がイベルメクチンに過敏であったり、アレルギー反応を起こす可能性もあります。イベルメクチンによる犬の副作用症状としては食欲不振、元気消失、嘔吐、下痢、歩様異常、痙攣、流涎などになります。イベルメクチンは副作用も出にくく非常に安全性も高いとされますが、これらのことについても知っておいた方が安心でしょう。
まとめ
寄生虫は体内に寄生して知らずに身体をむしばんでいく恐ろしいものです。犬などの場合、症状が出たときには既に重篤化していることも多いのでまずかからないように予防することが大切です。イベルメクチンは犬フィラリア症などに有効に働くので処方された際はしっかりと利用するようにしましょう。