【獣医師監修】パグがかかりやすい病気は?症状・受診の目安や予防法まで解説

【獣医師監修】パグがかかりやすい病気は?症状・受診の目安や予防法まで解説

パグがかかりやすい病気について、短頭種気道症候群や角膜潰瘍、皺襞性皮膚炎、外耳炎、壊死性髄膜脳炎、半椎などを紹介します。あわせて、すぐに動物病院へ相談したい症状や早めに受診したいサイン、適正体重の維持や暑さ対策、日常チェックなど健康管理のポイントもわかりやすく解説します。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

パグは特定の病気に注意が必要

見上げるパグ

パグは、すべての個体が病弱というわけではありませんが、短い鼻をもつ短頭種特有の骨格や、大きく前方に出た目、深い顔のしわなどの身体的特徴から、特定の健康上の問題が起こりやすい傾向があります。

また、身体の構造だけでなく、遺伝的な背景との関連が知られている病気もあります。
そのため、パグと暮らすうえでは「どのような病気に注意が必要なのか」をあらかじめ知り、普段の様子との違いに気づけるようにしておくことが大切です。

ただし、こうした特徴があるからといって、すべてのパグが将来病気になるわけではありません。必要以上に心配するのではなく、パグにみられやすい健康上の特徴を理解し、日頃から体調の変化を確認していきましょう。

パグがかかりやすい病気

しょんぼりしているパグ

パグでは、短い鼻や大きな目、顔のしわといった身体的特徴に関連する病気のほか、遺伝的な背景との関連が知られている病気にも注意が必要です。

ここでは、パグで特に知っておきたい代表的な病気について、それぞれの特徴を紹介します。

短頭種気道症候群

短頭種気道症候群(BOAS)は、パグやフレンチ・ブルドッグなど、鼻先が短い短頭種にみられる呼吸器の病気です。短頭種特有の上部気道の構造によって空気の通り道が狭くなり、呼吸に負担がかかります。

代表的な異常には、鼻の穴が狭い「鼻孔狭窄(外鼻孔狭窄)」や、喉の奥にある軟口蓋が長い「軟口蓋過長」などがあります。複数の異常が組み合わさっていることもあり、重症度には個体差があります。

パグでは、いびきやブーブーという呼吸音が聞かれることがありますが、「短頭種だから普通」と一律に考えることはできません。呼吸の状態は日頃から確認しておくことが大切です。

角膜潰瘍・乾性角結膜炎などの目の病気

パグは大きな目が前方に出ているため、角膜が外部からの刺激を受けやすく、目のトラブルに注意が必要です。

角膜潰瘍は、目の表面を覆う角膜に傷がつき、その一部が欠損した状態です。家具や植物などとの接触だけでなく、自分の毛やまつ毛などが刺激となって角膜を傷つけることもあります。

また、涙の量や質が十分でなくなり、目の表面が乾燥する乾性角結膜炎(KCS)も、パグでみられる眼疾患のひとつです。

角膜潰瘍や乾性角結膜炎は放置すると角膜へのダメージが進むことがあるため、目の状態を普段から観察しておきましょう。

皺襞性皮膚炎などの皮膚病

パグの顔にある深いしわは、皮膚同士が擦れやすいうえ、湿気や皮脂、涙などがたまりやすい場所です。そのため、しわの内側では皮膚炎が起こることがあります。

こうした皮膚のひだに生じる炎症は「皺襞性(しゅうへきせい)皮膚炎」と呼ばれます。皮膚の摩擦や蒸れ、分泌物の蓄積などによって皮膚のバリア機能が乱れ、細菌や酵母が増殖して炎症が悪化することもあります。

ただし、パグに起こる皮膚トラブルの原因は皺襞性皮膚炎だけではありません。アレルギー性皮膚疾患や感染症などが関係することもあります。

外耳炎

外耳炎は、耳の入り口から鼓膜までの外耳道に炎症が起こる病気です。犬では比較的よくみられる病気ですが、パグでも注意が必要です。

外耳炎には、耳道の形状や湿気のこもりやすさ、アレルギー性皮膚疾患など、さまざまな要因が関係します。炎症が長引くと耳道が狭くなり、再発を繰り返しやすくなることもあります。

耳の状態は外から見ただけでは分かりにくいため、耳垢やにおいなど普段との違いに気づけるようにしておくことが大切です。

壊死性髄膜脳炎(パグ脳炎)

壊死性髄膜脳炎(NME)は、脳や脳を覆う髄膜に炎症が起こり、脳組織の一部が壊死する進行性の神経疾患です。パグでの発症がよく知られていることから、「パグ脳炎」と呼ばれることもあります。

発症には遺伝的な感受性が関係すると考えられていますが、ひとつの遺伝子だけで発症が決まる単純な遺伝病ではありません。

遺伝子検査によって発症しやすさの参考情報を得られる場合がありますが、検査だけで将来の発症を断定したり、NMEを確定診断したりすることはできません。

また、けいれんなどの神経症状はNME以外のさまざまな病気でもみられるため、症状だけで病名を判断することはできません。

半椎などの脊椎疾患

パグでは、背骨を構成する椎骨の形が正常とは異なる「半椎」などの先天的な椎体形成異常がみられることがあります。こうした異常は、らせん状の尾をもつ犬種で比較的多く確認されています。

ただし、画像検査で半椎が見つかったからといって、必ず神経症状が現れるわけではありません。脊髄への影響がなく、生涯にわたって症状がみられない個体もいます。

一方で、椎体の変形によって脊髄が圧迫されると、歩行や後肢の動きなどに影響が出ることがあります。脊椎の形成異常の有無だけでなく、実際に神経へどの程度影響しているかを確認することが重要です。

パグで注意したい症状と受診の目安

獣医師に抱っこされたパグ

パグは呼吸器や目、皮膚、神経などに関わる病気に注意が必要ですが、家庭で症状だけを見て病名を特定することはできません。大切なのは、普段と違う変化に気づき、症状の強さや現れ方に応じて受診することです。

特に、呼吸が苦しそう、意識や歩き方に異常がある、強い目の痛みが疑われるといった場合は、様子を見続けず早めに動物病院へ相談しましょう。

すぐに動物病院へ相談したい症状

次のような症状がみられる場合は、急速に状態が悪化する可能性があります。診療時間外であっても、かかりつけの動物病院や救急対応の動物病院へ速やかに連絡してください。

  • 息を吸うのが明らかに苦しそう、激しく呼吸している
  • 舌や歯ぐきが青紫色になっている
  • ぐったりして立てない、突然倒れた
  • 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応がおかしい
  • けいれん発作が続いている、短時間に繰り返している
  • 突然ふらつく、立てない、後ろ足をうまく動かせない
  • 目を強く痛がり、開けられない状態が続いている

舌や歯ぐきが青紫色になる状態は「チアノーゼ」と呼ばれ、体内に十分な酸素を取り込めていない可能性を示す重要なサインです。

また、急な歩行異常や意識の変化は、脳や脊髄などの神経系に異常が生じている可能性があります。症状が軽く見えても、突然現れた場合や悪化している場合は早急な評価が必要です。

早めに受診したい症状

緊急性が高くないように見えても、次のような変化が続く場合は放置せず、早めに動物病院を受診しましょう。

  • 以前よりいびきや呼吸音が大きくなった
  • 少し動いただけで息が上がる、散歩を極端に嫌がる
  • 咳や嘔吐を繰り返している
  • 目やにや涙が増えた、目が赤い、目を細めている
  • 顔のしわが赤い、湿っている、強いにおいがする
  • 耳を頻繁に掻く、頭を振る、耳垢やにおいが増えた
  • 歩き方に違和感がある、段差を嫌がるようになった

症状の程度が軽くても、数日続く、繰り返す、徐々に悪化するといった場合は、病気が進行している可能性があります。また、目や呼吸に関する異常は短時間で悪化することもあるため、「いつものこと」と決めつけないことが大切です。

受診時には、症状が始まった時期や頻度、どのような状況で悪化するのかを伝えられると診察の参考になります。呼吸音や歩き方、発作などは、安全に撮影できる状況であれば動画を残しておくのも役立ちます。

パグの病気の予防・早期発見につなげる健康管理

パグと触れ合う人

パグにみられる病気のなかには、遺伝的な背景や生まれつきの身体構造が関係し、日常生活だけでは完全に防げないものもあります。

一方で、体型や生活環境を整え、日頃から体調の変化を確認することで、身体への負担を減らしたり、異変の早期発見につなげたりすることはできます。

特に、適正体重の維持、暑さへの対策、日常的な健康チェックは、パグと暮らすうえで意識しておきたい基本的な健康管理です。

適正体重を維持する

パグは食欲旺盛な個体も多いため、食事量やおやつの与えすぎによる体重増加には注意が必要です。肥満になると身体を動かす際の負担が大きくなるだけでなく、呼吸への負担が増す可能性もあります。

体重の数字だけで判断するのではなく、体型を確認することも大切です。
犬の体型評価には「BCS(ボディ・コンディション・スコア)」という指標があり、肋骨への触れやすさや腰のくびれなどから脂肪のつき方を確認します。

  • 肋骨に軽く触れたとき、適度に骨を感じられる
  • 上から見たときに腰のくびれが確認できる
  • 横から見たときにお腹が適度に引き締まっている

適正な食事量は年齢や活動量、体格、避妊・去勢の有無などによって異なります。体重が増え続けている場合や適正体型が分からない場合は、獣医師に相談しながら食事量を調整しましょう。

暑さと運動量を適切に管理する

パグのような短頭種は、鼻先の長い犬と比べて呼吸による体温調節が得意ではありません。そのため、気温や湿度が高い環境では身体に熱がこもりやすく、暑い時期の運動には特に注意が必要です。

夏場は日中の暑い時間帯を避け、比較的涼しい早朝や夜に散歩するなど、気候に合わせて運動する時間を調整しましょう。室内でもエアコンなどを活用し、暑さや湿気がこもらない環境を整えることが大切です。

散歩や遊びの量は、年齢や体力、その日の体調に合わせて調整します。気温だけで安全性を判断せず、呼吸が普段より荒くなっていないか、歩く速度が落ちていないかなどを確認しながら無理のない範囲で運動させましょう。

日常の健康チェックと定期健診を続ける

毎日のスキンシップやお手入れの時間を利用して、目や耳、顔のしわ、皮膚、歩き方などを確認する習慣をつけておくと、小さな変化に気づきやすくなります。

  • 目の赤みや目やに、涙の量に変化がないか
  • 耳垢や耳のにおいに変化がないか
  • 顔のしわに赤みや湿り気、においがないか
  • 皮膚に赤みや脱毛がないか
  • 呼吸音や運動時の様子に変化がないか
  • 歩き方や立ち上がり方に違和感がないか

顔のしわは汚れや湿気が残らないように、必要に応じて柔らかい布などで優しく拭き、清潔で乾いた状態を保ちましょう。強くこすったり、皮膚に刺激の強いものを使ったりするのは避けます。

また、見た目だけでは分からない体調の変化を確認するためにも、定期的に健康診断を受けることが大切です。

年齢やこれまでの病歴、普段の様子に応じて、必要な検査について獣医師と相談しながら健康管理を続けていきましょう。

まとめ

体温計をさしたパグ

パグは愛嬌のある見た目で親しまれている一方、短頭種ならではの身体構造や遺伝的な背景から、健康管理で注意したいポイントがいくつかあります。

ただし、すべてのパグが必ず病気になるわけではなく、必要以上に不安になる必要はありません。

大切なのは、愛犬の普段の呼吸や目、皮膚、耳、歩き方などを把握し、小さな変化に早く気づけるようにすることです。

日頃から体調や体型を確認し、無理のない生活環境を整えながら、気になる変化があれば自己判断で長く様子を見ず、獣医師に相談しましょう。

パグの身体的な特徴を理解したうえで、日々の観察と定期的な健康確認を続けることが、長く健やかに暮らすための大切な支えになります。

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