犬がいびきをかく原因は?
初めて犬を飼う人や、犬を飼ったことがないという人は驚かれるかもしれませんが、犬も人間と同じようにいびきをかきます。では、なぜ犬はいびきをかくのでしょうか?
通常、鼻から吸い込んだ空気は、ノドを通って肺に送られますが、鼻からノドまでの空気の通り道(上部気道)が、何らかの原因で狭くなると、ノドの粘膜が震動してしまい、その震動がいびきとなって聞こえるのです。
犬も人間も、寝ているときは全身の筋肉がゆるんでいますが、同じようにノドの筋肉も緩んで空気の通り道が狭くなっています。
そのため、どんな犬でもいびきをかくことはありますが、体の構造上もともと空気の通り道が狭い犬や、何らかの異常や病気が原因で空気の通り道が狭くなったような場合は、普通以上にいびきがひどくなる場合があります。
肥満でノドのまわりに脂肪がついている
肥満になると体だけではなく、ノドのまわりにも脂肪がついてしまいます。
その結果、ついた脂肪がノドを圧迫し、空気の通り道を狭くしてしまいいびきをかきやすくなってしまうのです。太っている人が痩せている人よりいびきをかきやすいのはそのためといわれています。
加齢による筋力の衰え
シニア犬になると筋力が衰えてきます。体の筋肉が衰えてくると、同じようにノドの筋肉も衰えますので、衰えた筋肉により空気の通り道が圧迫されて、若い頃よりいびきをかきやすくなります。
また、小型犬は加齢により心臓病を発症することが多いといわれていますが、心臓病による呼吸不全が原因でいびきをかくようになることもあります。
いびきをかきやすい犬種のため
どんな犬でもいびきをかくことはありますが、とくにいびきをかきやすい犬種がいます。
犬は、マズル(口のまわりから鼻先の部分)の長さによって「長頭種」「中頭種」「短頭種」に分けられます。
その中で短頭種に属する犬種は、頭蓋骨が丸く鼻が短い、首が太く短い、などの身体的構造から鼻の内部が圧迫され、ノドの部分が変形して狭くなっているのでいびきをかきやすいといわれています。
病気の可能性を疑う
犬がいびきをかくこと自体は珍しいことではありません。もともといびきをかいており、健康上とくに異常が無い場合はそう心配することはありません。
しかし、今までいびきをかいていなかった犬が突然いびきをかくようになった場合や、もともといびきをかいていた犬が、以前よりひどくなった場合は注意が必要です。
このような場合はノドに何らかの異常が発生していることが考えられます。
たとえば、アレルギーや感染症が原因でノドのまわりが炎症を起こしている場合は、ノドが腫れて空気の通り道が狭くなりますのでいびきをかいたり、鼻水が大量に生じたような場合にも呼吸が困難になりいびきにつながることがあります。
また「短頭種気道症候群」がいびきの原因になっている場合があります。短頭種気道症候群とは、短頭犬種に多くみられる呼吸器系の疾患の総称です。
寝ているときにいびきをかくだけでなく、起きているときにもいびきと似たような呼吸音が出ていたり、少し動いただけで呼吸が苦しくなるなど、日常生活に支障をきたすような症状がある場合は、治療が必要になることもあります。
特にいびきをかきやすい犬種は?
犬の分類方法のひとつに、犬の顔を横から見たときの頭蓋骨とマズルのバランスによる3種類の分類方法があります。
- ダックス、シェパード、イタリアングレイハウンド など:「長頭種」頭蓋骨の幅(目元から耳元にかけて)よりマズルの長さが長い犬
- トイプードル、柴犬、コーギー など:「中頭種」頭蓋骨の幅とマズルの長さが同じくらいの犬
- パグ、シーズー、フレンチブルドッグ など:「短頭種(短吻種」頭蓋骨の幅よりマズルが短い犬
先述しましたが、短頭種に属する犬種はいびきをかきやすい犬種です。
主に「鼻ぺちゃ」と呼ばれる犬種が短頭種に属しますが、チワワやマルチーズ、ポメラニアンなど、一見それとわからない犬種の中にも短頭種の仲間がおり、頭蓋骨とマズルのバランスをよく観察してみると、どの犬種が短頭種に属しているかがわかります。
短頭犬種は、頭蓋骨が丸く鼻が短いため、鼻の内部が圧迫されてノドの部分が変形しています。
その身体的特徴から、軟口蓋(口の中の上側で、ノドに近い柔らかい筋肉部分)がたるみ気道をふさいでしまう “軟口蓋過長症”、鼻の穴とそれにつながった空気の通り道が狭くなる “鼻腔狭窄”、気管が扁平につぶれて呼吸が困難になる “気管虚脱”などの「短頭種気道症候群」が発症しやすいことが、いびきをかきやすい原因となっています。
長頭種や中頭種に属する犬種は、いびきをかくことは少ないようですが、中頭種に属するゴールデンレトリーバーやラブラドールレトリーバーは、先天的に軟口蓋が大きい個体が多く、比較的いびきをかきやすい犬種といわれています。
犬がいびきをかいたときの対処法
犬がいびきをかくのには、いくつかの原因があることがわかりました。
あまり心配する必要がない場合もありますが、いびきの本質的な原因が気道の狭まりであることは共通点で、呼吸が困難な状態であることにも違いはありません。
いずれの場合も、まず楽に呼吸ができるようにしてあげることがいびきをかいたときの対処法となります。
次に、原因別に具体的な対処法を紹介します。
ダイエットをする
肥満が原因でノドに脂肪がついて空気の通り道が狭くなっている場合は、ダイエットなどで体に付いた脂肪とともに、ノドのまわりの脂肪も取り除く必要があります。
肥満はいびきだけでなく、さまざまな病気の原因になる可能性があります。愛犬が理想的な体型で理想的な体重を保てるように、おやつや間食も含めた食生活を見直す、適切な運動をさせるなどの対策が必要です。
犬が呼吸しやすい体勢に変える
犬にとって、一番楽に呼吸ができる体勢は「うつ伏せ」です。逆に、仰向けや横向きの体勢で寝ていると、ノドがつぶれやすくなったり、肺が膨らみにくくなるため、呼吸するのが困難になります。
犬が仰向けや横向きで寝ていたら、うつ伏せの体勢に変えてあげましょう。ただし、寝ている犬を驚かせないようにゆっくりと動かしてあげるように注意することが大切です。
生活環境を見直す
犬も人間と同じように、暑い時期や湿度の高い時期は呼吸しにくいことがあります。温度を下げる、除湿をするなどの配慮がとても重要になります。
特に短頭種の犬は、気道が短く熱中症のリスクも高いので、注意してあげましょう。
また、アレルギーが原因でノドや鼻のトラブルによりいびきをかいている場合は、アレルゲンとなるものを取り除いてあげることが大切です。
犬のアレルゲンとなるものには、ハウスダストや観葉植物、タバコの煙など、さまざまなものが考えられます。愛犬が何に対してアレルギー反応を示しているのか調べてみましょう。
動物病院では、血液検査により犬のアレルゲンを検査してもらうことができます。愛犬が何に対してアレルギー反応を示しているのか、飼い主さんが判断しづらい場合は、動物病院で検査を受けてみるとよいでしょう。
こんないびきはすぐに動物病院を受診する
多くの場合、犬のいびきは家庭で対処することができ、寝返りをうったり、目覚めと同時に止まるのであれば心配することはありません。
しかし、次のような症状が見られる場合は注意が必要です。
- ある日突然いびきをかくようになった
- いびきをかく頻度が増えた
- 以前よりいびきがひどくなった(音が大きくなった)
- とても苦しそうにいびきをかいている
- いびきが急に止まる、また始まる、というパターンを繰り返す
- 起きているときにもいびきのような音がする呼吸が続く
今までいびきをかいていなかったのに、急にいびきをかきだしたような場合は、ノドや鼻に呼吸を妨げる何らかのトラブルが発生した可能性があります。
また、いびきをかく、止まる、のパターンを繰り返す場合は、睡眠時無呼吸症候群が疑われます。さらに、気管虚脱などの疾患が加齢などの原因で重症化してくるとそれに伴っていびきもひどくなることがあります。
いずれの場合も、できるだけ早く動物病院で診察を受けることが大切です。受診の際には、いびきをかいているときや、いびきのような呼吸をしている犬のようすを、動画で撮影したものを持参しておくと診察の役に立ちます。
まとめ
犬も人間と同じようにいびきをかきます。犬がいびきをかく原因はいくつかあり、通常、いびき以外に身体的なトラブルがない場合は、あまり心配する必要はありません。
しかし、中には病気が原因でいびきをかいている場合もあり注意が必要です。愛犬がいびきをかき始めたら、よく観察して原因を探り必要な場合は動物病院で診察を受けましょう。
また、起きているときにいびきと同じような音がする呼吸をしている場合は、病気が原因ですので、できるだけ早い動物病院での受診をおすすめします。