犬がしっぽを追いかける理由は?考えられる病気や対処法を解説

犬がしっぽを追いかける理由は?考えられる病気や対処法を解説

犬が自分のしっぽを追いかけるのには、必ず何か理由があります。この記事では、その理由やそこから考えられる病気や対処法について解説します。

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記事の監修

犬の気持ちは行動に現れる。知っていますか?犬が顔を左に向けた時にはストレスを受けている可能性があることを。犬は様々な方法で人に気持ちや考えを伝えているのです。それを受け止めてアドバイスとして活かすことを仕事としております。様々な専門の知識と20,000時間以上の教育実績があなたとその愛犬の生活を助けて豊かに導きます。

犬がしっぽを追いかける理由 

しっぽを追いかける犬

「犬が自分のしっぽを追いかけてくるくると回っている」、犬好きでなくともそんな犬の姿を見ると、誰でも顔がほころんでしまいますよね。

私たちを楽しませてくれるこの行動は、「テイルチェイシング」とも呼ばれており珍しいことではありません。では、犬はどのような理由で自分のしっぽを追いかけているのでしょうか?

しっぽを追いかけるのはストレスが原因

犬が自分のしっぽを追いかけるのには幾つか理由がありますが、主な原因はストレスであるといわれています。

しっぽを追う行動でも、自分のしっぽをたまに追いかけていたり、「お散歩」「おやつ」など犬が好きなことばを聞くと止まってしまうような場合は、とくに問題はありません。

しかし、1日に何度も繰り返してしっぽを追っていたり、長い間ぐるぐると回っているような場合は、何らかのストレスによりしっぽを追う行動をしていると考えられます。

犬は感受性が豊かな動物ですので、人間と同じようにストレスを感じています。犬のストレスには、生活環境や飼い主さんとのスキンシップの不足、また、多頭飼いであれば犬同士の相性などさまざまな原因が考えられます。

また、犬のストレスの原因として、運動不足が挙げられることも多いですが、お散歩が嫌いな犬にとってはお散歩することが逆にストレスとなっていることもあります。

これ以外にも、犬の性格やおかれている状況などによりさまざまなことがストレスとなって、犬が自分のしっぽを追う行動をしていることが考えられます。

このように、犬のしっぽ追いの行動がストレスが原因であると考えられる場合は、愛犬をよく観察してストレスの原因を取り除いてあげることが大切です。

子犬であれば問題ないことが多い

自分のしっぽを追いかけるのは、子犬の時期によく見られる行動です。

幼い子犬は、自分のしっぽが自分のものであるということをまだ理解できていません。そのため、視界に入った自分のしっぽが動いているのが面白くておもちゃのように感じて、好奇心から追いかけて遊んでいるのです。

また、飼い主さんがかまってくれなかったり、退屈だと感じているときに自分のしっぽを追いかけ回して一人遊びをしていることもあります。

しかし、成長するにつれてしっぽに対する興味も徐々に薄れ、成犬になる頃にはしっぽを追いかけることもほとんどなくなってくるのが普通です。よって、子犬の時期のしっぽ追いの行動は、遊びの中のひとつですので、とくに心配する必要はありません。

とはいえ、夢中になってしっぽを追いかけ回していると、周囲にあるものにぶつかるなどのトラブルが起こることもありますので、その点はよく注意しておく必要があります。

飼い主の注目を集めるためにしっぽを追いかける

犬は、私たち人間のことをとてもよく見ています。

過去に、自分がしっぽを追いかけているのを見た飼い主さんが過剰な反応を示したことを覚えていて、飼い主さんの気を引くためや、褒められたい、構ってほしい、といった理由でしっぽ追いの行動を繰り返していることがあります。

飼い主さんの気を引こうと懸命になっている姿は、健気で愛らしいものです。しかし、飼い主さんが制御することができない犬の行動は、思わぬケガや事故に繋がることもありとても危険です。

犬がしっぽを追いかけだしても過剰な反応は控え、癖になってしまわないように注意しましょう。

犬がしっぽを追いかけることで考えられる病気

しっぽ

しっぽ追いの多くは、子犬の時期によく見られる行動ですが、成犬になってからも続くようであれば注意が必要です。

子犬のしっぽ追いは遊びの延長と考えられますが、成犬の場合は、何らかの疾患が原因の場合もあります。一度よく愛犬を観察してみましょう。

自分のしっぽを追いかけるだけでなく、唸り声をあげたり、しっぽに噛み付こうとしているといった場合は、身体的なトラブルが原因の可能性が高いので要注意です。

成犬のしっぽ追いの原因となる疾患には、次のようなものが考えられます。

  • てんかんなどの脳の病気
  • 皮膚病
  • しっぽ、お尻周りの異常
  • ノミやダニ(マダニ)

てんかんなど脳の病気では、しっぽを自分のものだと認識できないまま、目に入るものが自分を追いかけてくる外敵だと誤認識してしまうことにより、噛んだり吠えたりして攻撃してしまいます。

また、皮膚にトラブルがある場合は、痒み、痛み、違和感などを解消するために、噛んだり舐めたりすることがあります。

さらに、ノミは顔から遠く掻くことが難しい場所に潜んでいることもあります。背中、腰回り、しっぽに黒く小さな粒が1粒でも見つかった場合はノミの糞の可能性が高く、犬の被毛や部屋の中にノミが潜んでいることが考えられます。

犬がしっぽを追いかける時の対処法 

散歩する犬

犬がしっぽを追う行動は愛らしいものですが、人間が制御できない行動ですので、事故やケガを避けるためにもやめさせる必要があります。

そのためには、まず犬がしっぽを追う原因を突き止め、それぞれの原因に合った方法で対処することが大切です。

犬がしっぽを追い始めたらよく観察し、おやつやおもちゃで犬の気を引きながら、原因を探ってみましょう。次に、それぞれの原因に即した対処法を見ていきましょう。

適切な散歩やスキンシップでストレスを解消する

ストレスが原因でしっぽを追いかけている場合は、それ以外にもあくびやしっぽを振る、体を搔くなど、「カーミングシグナル」と呼ばれるかまってほしいという犬からのサインが同時に見られることが多いようです。

ストレスが原因だと考えられる場合は、その原因を取り除くのはもちろん、犬とのスキンシップの時間を多く取るように心がけましょう。

犬は言葉を発することができません。スキンシップによって、人間と意思疎通を測ろうとします。スキンシップの不足は犬との会話がないのと同じ状態だといえます。

声をかけてあげるだけでも軽いストレスは解消することができます。スキンシップとともに、できるだけ話しかけてあげることが大切です。

犬がストレスを抱える原因は、生活環境の変化、家族の不仲、スキンシップ不足、多頭飼いによる犬同士の相性、不適切な運動量、強制的散歩など、実にさまざまなものが考えられます。

ストレスの原因を判断できるのは、一番近くにいる飼い主さんだけです。しっかりと犬を見て判断し、対処してあげましょう。

監修ドッグトレーナーによる補足

日ごろからお座りや伏せが出来るなら、それらを取り入れるのも方法の一つです。

しっぽを追いかけそうな時、あるいは追いかけている時にコマンドを出し、上手にできたら たくさん褒めてあげましょう。ごほうびとしておやつを使う場合は、与えすぎに注意しましょう。

しっぽを追いかける愛犬を構いすぎない

私たちが考える以上に犬は人間のことをとてもよく見ています。

以前しっぽを追いかけていたときに、その姿を見た人間の反応もよく覚えていて、気を引きたいときやかまってほしいときに「また同じ行動をすればよい」ということもわかっているのです。

しかし、それが癖になってしまうと時と場合も考えずにしっぽを追いかけることになりかねません。事故やケガにつながることもありますので、犬の癖にならないように過剰に反応せず、無視することを心がけましょう。

飼い主さんが無視することで、しっぽを追いかけても飼い主さんの気を引くことができないのを犬が理解し、やがてしっぽを追わなくなります。

こんな症状の時は動物病院へ 

診察される犬

犬がしっぽを追う行動も、遊びの延長であれば他の遊びに興味が移ることでしっぽを追わなくなります。また、ストレスなど心的な要因であれば飼い主さんが対処することでほとんどの場合、改善することができます。

しかし、原因が身体的なトラブルや精神的なトラブルの場合は、家庭での対処は難しくなりますので、動物病院で診察を受けることが必要になってきます。

監修ドッグトレーナーによる補足

実際にしっぽを切断したケースもあります。

残酷に聞こえるかもしれませんが、それが命を救うケースにもなるのです。

てんかん発作を起こしている場合

次のような場合は、てんかん発作の可能性があるため注意が必要です。

  • しっぽを噛み血が出ている
  • ケガをしてもやめようとしない
  • 毎日のように長時間しっぽを追いかける
  • 唸りながらしっぽを攻撃するように追いかける

犬が唸りながらしっぽを攻撃するような行動をとるのは、てんかん発作により、しっぽに追いかけられているような錯覚を起こしているからだといわれています。

てんかんには、幾つかの種類があります。「症候性てんかん」は、幻覚が見える、体がムズムズするなどの症状からしっぽを追う行動につながることがあります。

「突発性てんかん」は、脳に異常はないが発作を繰り返すのが特徴で、1~5歳までの犬に多く見られるようです。

いずれの場合も抗てんかん薬などによる治療が必要ですので、できるだけ早く動物病院で診察を受けることが重要です。

てんかんには、しっぽを追うほかに、意識の喪失や痙攣などの症状もあります。しっぽを追う以外の症状がある場合は、その旨を獣医師に伝えることを忘れてはいけません。

できれば、犬の症状をスマートフォンなどに記録しておくと正確な診断に役立ちます。

常同障害が原因の場合

最初は何らかの理由で始まったしっぽ追いの行動も、繰り返すうちに常にしっぽを追っていないと落ち着かない「常同障害」になってしまっている場合があり注意が必要です。

「常同障害」とは、一見意味の無いような行動や動作を何度も繰り返してしまうことです。

皮膚が荒れているのに前足を舐めている、同じ場所をずっと行ったり来たりしているなどが挙げられ、「尻尾を追いかける」という行動もその中に含まれています。

常同障害は、人間の強迫性障害にあたるもので、「癖」ではなく「心の病気」です。病気ですので、医療的処置や投薬が必要になる場合もあり、しつけやトレーニングで治すことはできません。原因は、主にストレスだといわれており、神経質な犬によく見られるようです。

しっぽ追いの「癖」が「常同障害」となってしまう前に、犬のストレスの原因を解明し、犬が快適に過ごせるようにストレスや不安感を取り除くように対処することが理想です。

しかし、困難だと感じた場合は無理をせずに獣医師やトレーナーなど、専門家の力を借りることをおすすめします。

皮膚炎や寄生虫の場合

しっぽを追う原因が、皮膚のトラブルである場合も、動物病院での診察が必要です。

犬の皮膚はとても敏感ですので、シャンプー剤が十分にすすぎきれていないなどの理由から、炎症を起こしてしまう場合があります。そして、少し気にしている程度だったものがあっという間に悪化してしまうというケースも少なくありません。

人間と違って、犬の皮膚は被毛に覆われていますので、皮膚トラブルの処置を家庭で行なうのはそう簡単なことではありません。獣医師にお任せする方が安全で安心です。

それ以外にも、ノミやダニにより、皮膚にトラブルが起こる場合もあります。ダニは、皮膚の奥深くに噛みつきますので、見つけたときは無理にひっぱろうとせず、病院で処置をお願いしましょう。

これらの皮膚トラブルによる痒みや痛み、違和感がしっぽ追いの原因となる場合もありますので、適切なお手入れで、皮膚や被毛を常に清潔に保つように心がけましょう。

まとめ 

しっぽを咥える犬

子犬の時期のしっぽを追う行動は、遊びの延長である場合が多く、あまり心配する必要はありません。

しかし、成犬になっても続いているようであれば、身体的、精神的なトラブルが原因となっているかもしれませんので、愛犬を一度よく観察してみましょう。

犬がしっぽを追う原因がはっきりとしたら、それぞれの原因に応じた方法で対処することが大切です。

ときには、重大な病気が原因でしっぽを追っていることも。犬が何度もしっぽを追い始めたら、軽く考えずにしっかりと確認しておきましょう。

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