「分離不安」とは?
分離不安とは、愛着のある人や物、場所などから離れることで不安を感じてしまう症状を指す用語です。人間の場合には生後6歳~3歳頃までの幼い子供に見られることが多くあります。犬にもこの分離不安症が発症することもあり、最近では犬の分離不安について認識が広がってきています。
犬が分離不安になる原因
1.寂しい思いをしたことがある
- 子犬の頃に長時間ひとりぼっちで留守番をした
- 捨てられてしまった経験がある
- 保護施設で複数の人に世話をされていた
このように、その子が過去に寂しい思いをした経験が「ひとりになること」に対して極度の不安を感じてしまう原因となることがあります。
2.留守番時に強いストレスを感じた経験
ひとりで留守番をしている時に
- 雷や地震などの自然現象
- 大きな物音や知らない人の声
- 真っ暗な部屋
- 暑すぎる&寒すぎる
- 何日も飼い主さんが帰宅しなかった
などによって、極度の恐怖や空腹などのストレスを感じたことがトラウマとなっている恐れもあります。
3.環境の変化
- 引っ越し
- 家族の増減
- ペットホテルに預けた
など、生活環境に変化があると不安に感じる子も多くいます。
4.病気や加齢によるもの
病気によって身体に痛みや不調があると心細くなってしまうこともあります。そして、歳をとって身体が衰えたことが原因で分離不安を発症することもあります。目が見えなくなったり耳が遠くなるなど、身体の変化に心細くなってしまうことが原因です。また、認知症が原因であることもあります。
5.間違った犬への接し方
飼い主さんの接し方によっても、わんちゃんを分離不安にしやすくなる恐れがあります。極度に甘やかしたり子犬の頃から常に一緒にいるようにしたりするなど、犬との心の距離が近すぎる接し方をしてしまうと飼い主さんに依存してしまいやすくなります。
また、飼い主さんとの信頼関係がうまく築けていない場合、犬は自信を持てず不安を感じやすくなります。
犬の分離不安の症状
飼い主さんが在宅中に
- 後追いをしてくっついてくる
- 飼い主さんがトイレやお風呂に入るとパニックになる
飼い主さんが出かける前に
- ソワソワと落ち着きをなくす
- 大きな声で吠える
飼い主さんが留守中に
- 下痢や嘔吐
- 食欲低下
- 物を破壊する
- トイレの粗相をする
- 身体を噛む自傷行為
- 吠え続ける
飼い主さんが帰宅した後には
- 嬉ション
- 極度な興奮
以上のような様子が見られる場合には、分離不安の症状である恐れがあります。それが甘えん坊な性格なのか分離不安なのかの線引きが難しいのですが、愛犬が「ひとりでも落ち着いていられるかどうか」で見極めてみましょう。
犬と飼い主の心の距離
アメリカの研究では、犬の問題行動のうち20~40%が分離不安が原因であるという研究結果があるほどに、犬の問題行動と分離不安症はとても関係があるものです。
犬の世界は私たちより狭い
犬は不安を感じた時に、私たちのように言葉で気持ちを伝えることはできませんし、「気晴らしに出かけよう」「本を読もう」などと他のことで気を紛らわすこともできません。犬の生きる世界は家の中だけで、飼い主さんと接することが唯一の楽しみであることが、飼い主さんへの依存心に繋がってしまうこともあります。
犬と飼い主の心の距離も近くなった
ひと昔前の犬と飼い主との関係は「飼い主」と「番犬」、「人間」と「動物」というような、一線を引いた関係でした。しかし現代では、犬も家族の一員であるという感覚で接することが多くなりました。そのような犬と飼い主の「心の距離の近さ」が、犬の分離不安症を引き起こしやすくなっているという意見もあります。
分離不安の改善方法
1.短時間から留守番に慣れる
飼い主さんの留守中にパニックを起こしてしまうのは「飼い主さんがいなくなった」「もう帰ってこない」という絶望感や危機感を感じてしまっているためです。
まずは数分という短時間から、飼い主さんの不在に慣れていくトレーニングが必要となります。「絶対に帰って来るんだ」という信頼を持ってもらうこと、そしてひとりで居る時間に慣れることが大切です。
2.安心できる環境づくり
わんちゃんがひとりでも安心して居られる環境を整えてあげることも大切です。犬は自分の身体に毛布やクッションが接触していると安心を感じやすいため、愛犬がお昼寝できるスペースを設置してあげると効果的です。マテなどのしつけも大切です。
そして、室温を快適に保ち、できれば外から大きな音が聞こえないようにしてあげましょう。帰宅が遅くなる場合には、部屋の電気はつけっぱなしにしてあげると不安が軽減するでしょう。お水や置きごはん、トイレなどの環境も快適に保ってあげる工夫が必要です。
3.適切な距離感で接する
人間に対して「無視をすること」は失礼な行為ですが、犬のしつけにおいては無視をすることも必要です。飼い主さんが在宅中でも、愛犬をかまわない時間を設けてみましょう。
そして、犬が後追いをしてきたり執拗にアピールをしてきた場合にも無視をすることが効果的です。愛犬の自立心を育むことも、犬のしつけにおいて重要なことです。
まとめ
今回は「犬の分離不安」について、原因や症状および改善方法などを解説いたしました。
もともと甘えん坊な性格の子は、その行動が「甘え」なのか「依存」なのか判断が難しいかもしれません。「うちの子は甘えん坊だから」と思っていたけれど、実は分離不安を発症していたということや、長年続いている破壊行為や自傷行為の原因が実は分離不安によるものだった、ということもあります。
犬は飼い主さんのことが大好きで、パートナーとしてそばにいようとする習性のある動物です。しかし、犬にもちゃんと自立心があり、ひとりでいることもできます。分離不安の状態は高ストレスが続くということなので、わんちゃんにとっても辛い状態です。
わんちゃんがちょっとベタベタし過ぎかな?と感じた際には、分離不安に進行していないか注意深く観察してあげてください。