生理的な原因で出る「よだれ」
例)
食事の消化を促す働き
唾液には食べ物を消化する役割があります。
いい匂いを嗅いだり、食べ物の味や食感を感じると、
食事の消化を促すために動物に備わった生理的な働きです。
体温や水分量の調節
水は蒸発すると、周囲の熱を奪う性質があります。人間はこの性質を利用して、汗をかくことで体温を下げることができるのです。犬は人間のように汗による体温調節はできませんので、かわりに口を開けてハァハァする呼吸(パンティング)によって体内の熱を放出します。パンディングをして鼻や口の中を息が通ることで、唾液を蒸発させ、体温を下げているのです。
リラックスしている
寝ている時や気持ちが落ち着いている時は、サラサラとした唾液が増加します。犬も人間と同様に、交感神経と副交感神経があり、交感神経が働いているときは活発になり、副交感神経が働いているときはリラックスした状態になります。この副交感神経が働いているときに、唾液が増えるのです。
車酔い
車酔いを起こすことでもよだれは増えます。これは、脳内にある吐き気を引き起こす神経と唾液の分泌を促す神経が近くにあるので、吐き気を催すと、唾液分泌を促す神経も一緒に刺激されて唾液が出るのです。犬が車に乗っている時によだれが増えた場合は車酔いの可能性があるので、早めに休憩をとってあげてください。
口内や唇の構造
犬の歯は人のように密に生えていません。そのため口の中で作られた唾液が唇と歯の間に溜まってきます。そのスペースは大型犬の方が小型犬に比べて大きくなるため、大型犬は特に唾液が多く溜まり、よだれとして出てきます。また、大型犬では唇のたるみが大きい犬種も多く(ゴールデンレトリーバー/ラブラドールレトリーバー/ブルドッグ/ボクサー/バーニーズなど)、これらの犬種ではその唇のたるみから唾液が垂れてしまうため、大量によだれが出てきます。
病気が原因で出るよだれ
犬がよだれを垂らす原因となっている病気には、緊急性の高いものがいくつかあります。早急に処置をしなければ、命の危険に陥るケースもあるので、よだれとあわせて以下のような症状が見られるときは注意してください。
- 嘔吐している
- 吐きそうにしているが、吐けないでいる
- 呼びかけに応じない
- ぐったりしている
- よだれに血がまじっている
- 泡のようなよだれを出す
- 口臭がする、よだれが臭い
- 腹部が膨れている
- 発作をおこす
早急な処置が必用なケース
熱中症
からだが高温多湿な環境に適応できず、体温をうまく下げることができないでいると、全身の臓器の働きが鈍くなります。これが熱中症です。暑い場所でお留守番をさせたり、炎天下のお散歩をしたあとに、荒い呼吸が続いたり、よだれをダラダラ垂らすようであれば、熱中症になっている可能性があります。治療が遅れると命を落とす場合もあるので、そのような症状があればすぐに病院へ連れていってあげてください。
胃捻転・胃拡張
胃捻転・胃拡張は、特に大型犬が食後にかかりやすいと言われていて、なにかしらの原因で突如胃にガスがたまり、短時間でパンパンに膨れ上がる病気です。すぐに手術をしなければ、膨張した胃により周囲の臓器や血管が圧迫され、短時間で死に至ります。吐こうとしても吐けない、よだれをダラダラ垂らしている場合は、この胃捻転・胃拡張を発症している可能性がありますので、夜間であれば救急病院を頼りましょう。
異物誤飲
食道になにか異物が詰まっている場合、激しくえづくことがあります。様子を見ているうちに呼吸困難に陥ることもあるので、早急にかかりつけの病院へ連絡をしましょう。
異物誤飲・中毒
犬が食べると危険なものはたくさんあります。たとえばチョコレートや保冷剤などは、犬が間違って食べてしまうと非常に危険。嘔吐やよだれを垂らすなどの中毒症状が見られます。また、ぬいぐるみやボールなどを誤飲したときもよだれを垂らすことがあります。食道に詰まって激しくえづいているような場合は、呼吸困難に陥ることもあるので、早急な治療が必要になります。よだれを垂らしている前に、なにかモグモグしているような気配があったら、すぐに病院へ連れていきましょう。
臓器の異常
腎臓病や肝不全、膵炎などといった臓器の病気は、吐き気を催してよだれが増えることがあります。
てんかん・脳腫瘍・脳炎・水頭症など脳の異常
神経の働きに障害があると唾液分泌の調整が上手くできなくなり、唾液の分泌が急に増えることがあります。また唾液をうまく飲み込めなくなるためよだれが増えてきます。
早めに病院へ連れて行くべきケース
歯周病、口内炎、口腔内異物、口腔腫瘍、顎の骨折など
口の中に刺激や痛みがあることで、唾液の分泌が増加し、出血が混じったよだれが垂れることもあります。口の中を見ることで診断が可能なことが多いですが、口の奥の方にある異物(トゲや針が刺さっている場合)や腫瘍は、麻酔をかけて観察しないとわからない場合もあります。また、歯周病の悪化などによって顎の骨が弱っている子は、骨折することもあります。顎を骨折すると、口がうまく閉じられないために、よだれが垂れ流しになってしまいます。
生理的な要因でも、病気的な要因でもよだれは増えます。大切なのは飼い主さんが愛犬の様子を日々きちんと観察して、些細な異変にも気付けることです。ちょっとした異変が重大な病気のサインなこともあるので、不安に思ったらすぐにかかりつけの獣医さんに相談してみてくださいね。