狂犬病の致死率
狂犬病は感染して発症すると、ほぼすべての人や犬が死亡する致死率100%の病気です。なぜ、致死率が高いのかというと、有効な治療法が未だに確立されていないからです。
高い致死率で知られているエボラ出血熱でさえ、致死率は約80%と言われています。エボラ出血熱の致死率と比べてみると、より狂犬病の恐ろしさが分かるのではないでしょうか。また、毎年数万人の人が狂犬病で死亡しており、その多くがアフリカとアジアで占められています。
日本でも江戸時代以来多くの流行が記録されており、一昔前までは、多くの人が狂犬病に感染し死亡していました。このような状況の中で、狂犬病予防法が施行され、致死率100%の狂犬病は日本国内から撲滅されることになります。
日本では狂犬病予防法によりワクチン接種が義務
日本では、致死率の高い狂犬病の脅威から人の命を守るために、1950年に狂犬病予防法が施行され、犬へのワクチン接種の義務化や野犬の捕獲により、狂犬病の駆逐に成功しました。
狂犬病予防法の第5条には、「犬の所有者(所有者以外の者が管理する場合には、その者。以下同じ。)は、その犬について、厚生労働省令の定めるところにより、狂犬病の予防注射を毎年一回受けさせなければならない。」と記されています。
また、狂犬病の予防注射を受けていない犬は、捕獲や抑留の対象となり、その飼い主さんには20万円以下の罰金を支払わなければなりません。狂犬病予防法の施行により、わずか7年という期間で、狂犬病を撲滅することができました。
狂犬病は哺乳類全てに感染しますが、アジアなど狂犬病の流行国での、主な狂犬病ウイルスの蔓延源は犬です。これから、万が一日本に狂犬病ウイルスが侵入してきた時にも、狂犬病の予防接種の義務化によって、犬を介した狂犬病の蔓延を予防し、人への被害を防ぐことができるでしょう。
人が致死率の高い狂犬病に感染したら出る症状
初期症状
人が狂犬病に感染した後、症状が出るまでの潜伏期間は、一般的に1ヶ月から3ヶ月と言われています。しかし狂犬病ウイルスの潜伏期間にはばらつきが大きく、1週間程度で発症する場合もあれば、1年近く症状が出ないこともあるようです。
潜伏期間は、咬まれた部位や傷口の程度、衣服の上から咬まれたのか、傷口をすぐに洗浄したかどうかなどによって異なります。
致死率の高い狂犬病ウイルスが骨髄に達した時期を、先駆期と言います。先駆期に見られる狂犬病の初期症状は、痛みを伴う発熱や頭痛、筋肉痛、悪寒などです。風邪やインフルエンザの症状とよく似ており、通常この症状は、数日から1週間程度続きます。
また咬まれ部分の局所症状として、傷口が治癒しているのにも関わらず、痛みやしびれ、感覚麻痺、火傷した時のようなピリピリした感覚異常などがあるようです。
末期症状
先駆期を経て、致死率の高い狂犬病ウイルスが中枢神経に侵入し急性期に入ると、末期に入り2つの形態の症状が見られるようになります。
狂犬病になるとよく見られる狂躁型と言われる症状には、活動亢進や興奮状態の他に、水に恐怖心を持つ恐水症、隙間風や新鮮な空気に恐怖感を持つ恐風症などがあります。その後、数日で全身の痙攣や臓器の障害を起こし死に至るようです。
また狂犬病を発症する人の約30%に見られるのが、麻痺型の症状です。麻痺型の狂犬病の場合は、恐躁型と比べて劇的な症状が出ることはなく、咬傷の部位から筋肉が徐々に麻痺していき、長い経過をたどりながら最終的に死に至ります。
犬が狂犬病に感染したら出る症状
初期症状
犬が致死率の高い狂犬病に感染した場合、2週間から2ヶ月程度の潜伏期間を経て発症すると言われれています。犬の場合も人が感染した時と同じように、症状が出るまでの期間に差があり、早くて3日、遅いもので150日ほど経ってから発症した例もあるようです。
初期症状には、地面を意味もなく堀り続けたり、むやみに歩き回ったりするなどの異常行動がみられます。また、狼のような特徴的な遠吠えを続けたり、普段では考えられないような量のヨダレを垂らしたりする症状も出てくるようです。
末期症状
狂犬病にかかった犬も人の場合と同じく、一般的に狂躁型と麻痺型、いずれかの末期症状がみられます。
狂躁型の症状は、物事に極めて過敏になり、目の前にあるもの全てに噛みつくなどの凶暴な行動をするようになります。そのため、歯が折れたり、口や舌に怪我をしたりして、口から血が混ざった唾液や泡を出すこともあるようです。
その後、末端から麻痺が始まり、次第に全身麻痺が起こり、最終的は昏睡状態になって死亡します。麻痺型の狂犬病の場合は、咽喉の痙攣により餌が食べられなくなったり、体が動かなくなったりする症状が、発病後から見られ終始麻痺状態になり、全身麻痺が3日から6日ほど続いた後、死に至ります。
狂犬病に感染する動物
狂犬病は人間を含むすべての哺乳類に感染する、致死率の高いウイルスです。狂犬病にかかっている動物に咬まれた部分に、ウイルスが侵入することで感染が確立します。
狂犬病ウイルスを保有する動物は、犬だけではありません。アジアやアフリカでは野犬に多く見られますが、ヨーロッパではキツネなどが感染源となっています。また、北米や中南米では、キツネの他にコウモリやアライグマ、スカンクなど多くの動物から狂犬病ウイルスが検出されています。
なお、人から人に感染することはなく、感染した人から感染が拡大することはありませんが、これまでに角膜移植による感染の報告例もあるようです。
狂犬病に感染した人が助かった奇跡的な例
狂犬病は致死率100%の病気と言われていますが、2004年10月以前までの記録に残されている狂犬病患者の中で、感染した後に回復した生存者が5名いたことが分かっています。この5名はいずれも発症する前に、ワクチン接種や免疫血清による予防処置を受けていました。
2004年10月には、アメリカの15歳の少女が狂犬病を発症した後に回復し、狂犬病のワクチン接種なしで回復した最初の生存例となっています。
その時に行われたのが、ミルウォーキー・プロトコルと呼ばれる治療法です。この治療法により、これまでに数人が狂犬病から回復しましたが、回復せずに死亡した事例がほとんどで、生存した場合も麻痺などの後遺症をもたらすこともあるため、今もなお研究が進められています。
まとめ
狂犬病予防法により、現在の日本において狂犬病はなくなりましたが、一昔前までは日本でもよくみられた、致死率の高い恐ろしい病気です。哺乳類すべてに感染するため、侵入を許すと再び流行する危険性がないとは言い切れません。
日本で狂犬病が発生していないのは、これまで飼い主さんたちが犬にしっかりと狂犬病の予防接種を受けさせてきたからです。犬を飼っている方は、今回の記事を参考にして、狂犬病の怖さを理解し、狂犬病の予防接種の大切さを再度確認してもらえたらと思います。
ユーザーのコメント
30代 女性 ソフィー
ですが、毎年受けていないわんちゃんも残念ながらいるようで、私はこのような責任感のない飼い主がいるということを非常に残念に思います。
20代 女性 やなさん
30代 女性 あゆか
今の時代は仕事でもプライベートでも渡航する機会が多いので、自国での常識が全て通用するとは限らないのは犬の事情も同じことです。特に狂犬病のように怖い病気の存在には、いたずらに恐怖心を持つのではなく、正常な警戒心を持っておくべきだと改めて思いました。
30代 女性 あんママ
日本でも、法律で決められているので予防接種しなくてはならないんですが、田舎の方に行くと病院が近くにない、面倒くさい等の飼い主側の一方的な理由で受けていない犬がいたりします。高齢犬やアナフィキラシーがある犬以外は、毎年受けて自分の犬と他の犬の命を守る事をお願いしたいです。
20代 女性 うーるぅ
40代 女性 ベル
確かに周りのわんちゃんの中にも、ワクチンを受けた直後に、数日間、後ろ足が麻痺して歩けなくなってしまった子や、皮膚に異常が出てしまった子がいましたので、予防接種のために愛犬が命をおとす危険があると聞いて、とても悩みました。
結局、他の方に迷惑をかけてもいけませんし、愛犬の体調がとても不安でしたが、今も強肩病の予防接種を受けています。こんなに恐ろしい病気でしたら、義務ではありますが、やはり受けなければいけませんね。
30代 女性 匿名
30代 男性 あうん
40代 女性 わんわん
女性 匿名
今日で3日目でいつもより食欲が無く少ししんどそうですが、ぐったりしてるわけではありません。
50代以上 男性 匿名
ぜひ全飼い主が愛犬に狂犬病の予防接種をさせましょう。