狂犬病の予防接種 その必要性とリスクについて

狂犬病の予防接種 その必要性とリスクについて

なんとなく接種している人も多いと思う狂犬病の予防接種。義務だから…罰則があるから…こんな理由で接種するのも間違いではないですが、どんな病気で犬にとってどんなメリット・デメリットがあるのか。接種しなかった場合どんな恐ろしい事になるのか。改めて考えてみたいと思います。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

狂犬病ってどんな病気?

口をあけた犬

狂犬病とは、狂犬病ウイルスの感染によって起こる病気です。

ウイルスに感染しうる動物は全ての哺乳類および一部の鳥類で、発症した動物に咬まれる事で人間も感染します。

犬の場合、狂犬病に感染すると2週間から2か月程度で発症します。早いもので3日、遅いもので150日かかって発症した例もあります。

人の場合は、潜伏期間は7日から数年で通常は2週間から80日程度です。発病するかは咬まれた傷口の大きさや体内に入ったウイルス量などで変わります。

世界保健機構(WHO)の推計によると、世界では年間に約5万5千人の人が狂犬病で亡くなっているそうです。そのうち3万人以上はアジア地域での死亡者と言われています。

狂犬病は一旦発症すると効果的な治療法はなく、ほぼ100%の方が亡くなります。
犬が発症した場合も有効な治療法はありません。

発症した場合の主症状(イヌ)

  • 前駆期…性格の変化と異常行動
  • 狂躁期…興奮状態(無目的な徘徊、目に入るものを頻繁に咬む)、光や音に対する過敏な反応
  • 麻痺期…全身の麻痺症状による歩行不能、咀嚼筋の麻痺による嚥下困難、舌を口外に垂らしながらヨダレを流す、昏睡状態になり死亡

発症した場合の主症状(ヒト)

  • 前駆期…発熱、食欲不振、咬まれた部分の痛みや痒み
  • 急性神経症状期…不安感、水や風を恐れる、麻痺、幻覚、精神錯乱
  • 昏睡期…昏睡(呼吸障害によりほぼ100%死亡)

狂犬病を撲滅させる為、日本では「狂犬病予防法」という法律を制定し、飼い犬の登録と年一回の予防接種、放し飼いの禁止、野犬の捕獲、輸出入動物の検疫と国をあげて防疫体制をとっており、1957年以降発症はありません。

予防接種の必要性

注射

日本では60年近く発症していない狂犬病。

なのになぜ狂犬病ワクチンを接種しなければならないのでしょうか?

先ほど触れた通り、日本の近隣諸国・世界の大多数の国ではたくさんの方が狂犬病で亡くなっている現状があります。日本は安全と思っていても、狂犬病はいつどこから入ってくるかわからないのです。
更に、日本の検疫はまだまだ甘いところがあります。特に犬以外の動物には緩い部分があるようです。

海外の事例ですが、2003年にボリビアで狂犬病に感染した状態で輸入されたハムスターが飼い主を咬むという事故が発生しています。

日本にもたくさんのハムスターが輸入されていますから他人事ではありません。

ハムスターだけでなく、ペットショップなどで珍しい動物を見かける事もありますが、どこまで検疫でチェックできているか定かではありません。

オーストラリアでは狂犬病予防接種が禁止されていますが、自国の動物を守る為、家畜以外の動物は一切輸入禁止なんだそうです。

もし予防接種を受けていない犬に感染したらどうなるのでしょう?

その犬に人間が咬まれたら?

都市部では瞬く間に感染が拡がるかもしれません。

残念ながら日本での予防接種率は登録頭数の70%程です。高い接種率と思われるかもしれませんが、これはあくまで“登録頭数の接種率”です。

登録されてない全体の頭数でみると40%程の接種率になると言われています。

以前は犬の登録が毎年必要だったので、登録と狂犬病予防接種を一緒に済ませる飼い主さんが多かったようですが1995年に狂犬病予防法が改正され、登録が毎年から生涯一回に変わったため接種率が低下したのではないかと考えられています。

「犬がかわいそう」「高いから」「面倒だから」

注射が好きなワンちゃんなんていないと思うし、接種させない人の考えも分かりますが、ワクチンひとつでたくさんの命が救えるんだという想いで毎年接種してほしいです。

また、毎年接種しなければならない理由ですが、現在の日本では一年間有効のワクチンしか認可されていないからだそうです。

世界では、三年間有効のワクチンを接種している国もあるのだとか・・・羨ましいですね。

予防接種はいつどこで、いくらで受けられるの?

狂犬病予防法では、犬の登録は、『犬を取得した日(生後90日以内の犬を取得した場合は生後90日を経過した日)から30日以内に、その犬の所在地を管轄する市町村に登録の申請をし鑑札の交付を受けなければならない』と定められており、狂犬病の予防接種についても、『生後91日以上の犬を所有する者は毎年1回、4月から6月までに狂犬病予防注射を受け注射済票の交付を受けなければならない』と定められています。

一度注射をすると毎年春に市町村からお知らせのハガキが届きます。集団接種の場所や時間が書いてあります。

集団接種の料金は市町村によって多少異なりますが、狂犬病ワクチンの注射済票交付の登録料と合わせて3000円ちょっとのところが多いようです。

集団接種に行けない場合は近くの動物病院で接種することもできます。集団接種は平日の場合が多いので初めから病院で接種される方も多いかもしれませんね。

この場合の料金は病院側が自由に設定できるので集団接種と同じくらいの病院もあれば、高くなってしまう場合もあります。

接種する前に一度病院に確認するのもいいかと思います。この時期の病院は狂犬病予防接種のワンちゃんで混み合いますので、早めに接種するのがいいですね。

予防接種のリスクについても知っておく

子犬

リスクと聞いて一番に思いつくのは副作用ではないでしょうか。私も愛犬に初めての狂犬病ワクチンを接種する前に「副作用がでたらどうしよう」とドキドキしたのを覚えています。

死亡する事もあると聞いた事があったからです。まだ小さい子犬でしたので、とても心配でした。

副作用が出やすい犬としては、

  • 生後一歳未満
  • 小型犬
  • 体重が軽い犬
  • 老犬(10~12歳が危険)と言われています。

また、副作用には軽度なものから重度のものまであります。

軽度の副作用

  • 発熱
  • 食欲低下
  • 元気がない
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 赤み
  • 腫れ
  • かゆみ
  • ムーンフェイス(目や口のまわりが腫れる)

この中でムーンフェイスが最も特徴的な症状です。

重度の副作用

  • 呼吸困難
  • 嘔吐
  • 虚脱
  • 粘膜が青白くなる
  • 血圧低下
  • 脱糞
  • 痙攣
  • 昏睡

重度の場合は早急な治療が必要です。

軽度の副作用が現れるには接種後4時間~3日が多く、重度の場合、接種後1時間未満が多いようです。

私の愛犬が接種した病院では接種後30分程度は病院に留まり、再度先生に診察してもらい異常がないのを確認して帰りました。

ただし、その場で異常がなくても副作用が出ないとは限らないので、接種した日は愛犬の様子をよく観察するようにしています。

異常があった場合すぐに病院に連れて行けるように、午前中に接種するのが望ましいと思います。夕方に接種して夜に副作用が現れたら。。。病院も閉まってるしパニックですね。

愛犬に持病があり狂犬病予防接種が命に係わる可能性もあります。そんな場合は病院に相談してみてください。免除される場合もあるそうです。

まとめ

私が小さい頃は「野良犬に咬まれると狂犬病になるよ!」なんて言われていましたが、最近では狂犬病という言葉をあまり聞かなくなったように思います。

『予防接種はするけど決められた事だし、接種しないとドッグランもペットホテルも利用できないもんね』私もそんな考えでした。

しかし、まだまだ狂犬病は身近にあります。先日テレビでやっていましたが、ペットで飼われていたアライグマが捨てられた後、野生化して大繁殖しているそうです。

専門家の方が「狂犬病を持っているかもしれないから気を付けて」とおっしゃっていました。狂犬病のウイルスを保有している野生動物に飼い犬が咬まれたら大変な事です。

日本では野良犬や野生動物の狂犬病ウイルス保有状況調査が全くといっていいほど出来ていません。
犬以外のペットへの予防接種の義務もありません。

今後の課題として考えていかなければならない事だと思います。いつの日か、狂犬病ワクチンを接種しなくていい日がくればいいですね。

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