混合ワクチン概要
混合ワクチンて一体どんなものなのでしょうか?
未知の病原体や強い病原体に対して毒性をなくしたり、弱めたりした病原体を健康な体内に注入することによって抗体(病原体を攻撃する防御システム)を作っておき、万が一感染症にかかってしまっても症状を軽く済ませるのがワクチンです。ワクチンには『生ワクチン』と『不活化ワクチン』があります。生ワクチンには弱毒化した微生物を用いてますが発病するほどの毒力はありません。不活化ワクチンは微生物や核酸を変性させ感染性を消したものです。狂犬病ワクチン以外は他のワクチンと混ぜられている混合となります。ワクチンはあるもの全てを接種するわけではなくその個体に合った種類を選びます。
全ての個体に用いるワクチンを『コアワクチン』、それ以外を『ノンコアワクチン』と言います。
●いったい何が混合なの?
ワクチンを打つことで予防できる病気、致死率・感染性の高い病気、ワクチンの副作用が比較的軽いものを組み合わせています。
5種混合や8種混合などいくつかの感染症を一度の接種で予防できるのが混合ワクチンです。
接種するワクチンについては住んでいる生活環境や、健康状態、犬種などで獣医師が判断します。
犬にワクチン混合ワクチンが必要な理由
ワクチンのメリット
混合ワクチンのメリットは1度の接種で数種類の感染症を予防できるということです。
誤解してはいけなのは、ワクチン接種を行えば100%感染症にかかりませんということではないということです。ワクチンを接種しておくことによってかかりにくくなったり、万が一感染症にかかってしまっても重症化することを防いで軽い症状でおさまるということです。
ワクチンのリスク
副作用の症状が出ることがあります。アレルギーやアナフィラキシーショック、自己免疫疾患などの病気になることが稀にあります。抵抗力の弱い子犬や老犬などは副作用を起こす確率も高くなります。接種当日は激しい運動やシャンプーなどは避けるようにしましょう。
●アナフィラキシーショックとは
即日型アレルギー反応。反応がとても重度で体内に抗原が取り込まれてから数十分以内に蕁麻疹や呼吸困難、チアノーゼ、嘔吐、下痢、血圧低下などの症状が見られる。ショック状態に陥ることも。
犬用混合ワクチンの種類
ここでは犬用のワクチンにはどんなものがあるのか見ていきましょう。
混合ワクチン
一般的に混合ワクチンと呼ばれているものはどんな感染症を予防してくれるのかまとめてみました。
●ジステンパーウイルス感染症
特に1歳未満の子犬(生後3カ月~6カ月)がかかりやすく、高熱を出して高い致死率ある。感染初期は高熱や下痢、肺炎などの消化器系や呼吸器系の症状が出る。次第に神経症状をおこすこともあり。
●パルボウイルス感染症
離乳期以降の子犬(生後2~9週)にみられる嘔吐と下痢を起こす病気。血便を排泄する消化器系症状(腸炎型)と白血球減少が特徴。心不全を起こす心筋型もあり。
●伝染性気管、気管支炎(ケンネルコフ)
アデノウイルス2型、犬パラインフルエンザウイルス、ボルデテラ・ブロンキセプティカが主な病原体。これらが混合感染すると症状が重くなる。乾いた頑固な咳と微熱を出す。初期症状なら数日でおさまるが、細菌の二次感染が起きると高熱や膿のような鼻汁を出し死亡することも。子犬や高齢犬では重症化しやすい。
●伝染性肝炎
離乳直後から1歳未満の子犬で高い死亡率がある。感染後、数時間以内に嘔吐、腹痛、下痢、高熱を出し扁桃腺の腫れや口腔粘膜の充血、点状出血がみられる。重症になると虚脱状態となり12~24時間で死亡することもある。
●レプトスピラ感染症
日本ではワクチン接種や衛生面での改善により発症は減少しています。汚染された川などに入りケガなどをしないように注意する。
●コロナウイルス感染症
下痢や嘔吐を起こすウイルス性腸炎。突然、下痢と嘔吐を起こすため脱水症状になることがある。
狂犬病ウイルスワクチン
●狂犬病
すべての哺乳類に感染し発症すると致死率100%。神経症状を示し、次第に噛みつくようになって凶暴化する(狂そう型)。これをすぎると麻痺状態になり衰弱して死亡する。まれに沈うつ型(麻痺型)があり、感染後すぐに麻痺状態になって数日で死亡する。
狂犬病ワクチンは、狂犬病予防法により生後91日以上の全ての犬に接種させることが義務付けられている。
一般的に狂犬病以外は混合ワクチンという形で接種します。9種混合ワクチンまであります。
ワクチン接種のタイミングと時期
犬に混合ワクチンを接種するタイミングや時期についていつごろがイチバン良いのか正直わからなく迷っている飼い主さんもいると思います。
ここではタイミングや時期についてお話したいと思います。
家にやってきたらすぐワクチン接種したほうがいいの?
混合ワクチンなどの接種については子犬が家にやってきてすぐは避けるべきです。
移動や環境の変化によりストレスのかかった子犬は免疫力が低下している可能性があるからです。この時期は他にも子犬にとってストレスがかかるようなことは避ける必要があります。
新しい環境に馴染んでもらうことを最優先に考え、一週間前後は様子をみたほうが良いでしょう。
ワクチンはどの時期に何回ぐらい接種させるべき?
通常、子犬は母親の初乳を飲むことで抗体を受け取ります。これを移行抗体と言います。
初乳は分娩後、数日間分泌される母乳のことで免疫物質、成長因子、たんぱく質、脂肪がたくさん含まれている乳糖含有量の少ない黄色っぽい母乳です。6日ぐらいすると乳白色の普通の母乳になります。
子犬はこの初乳を飲むことにより様々な病気などから体を守る免疫力がつきます。
犬の場合は90%が初乳からの免疫となるほど重要なものです。
しかし、この母親から受け取った免疫は長くても約1~2カ月ほどの持続で生後42日以降、徐々に消失すると言われています。その時期については個体差があり明確にいつごろまで持続していつ完全消失するのかは断定できません。
ですが母乳からの免疫量が多いとワクチンを打っても効力を発揮るすることができません。
そこで生まれて初年度の混合ワクチンは生後6週以降、3~4週間間隔で生後14~15週までに安定した免疫をつけるため3回にわたって接種を行います。
最近では早期に接種が可能で、ある程度、移行抗体(母親から受け取った免疫)が残っていても効果を発揮しやすいハイタイターワクチンが主流になっています。他のものでもしっかりと3回接種できていれば抗体はつくと思いますが詳しいことは獣医師に相談してみてください。
2年目以降は年に1度接種していきます。
まとめ
犬にも人と同じくらいの種類の数の病気があると言われています。
ここで主にご紹介したのは混合ワクチン接種とそれで予防できる病気ですが、法律で決められている狂犬病の予防接種以外は飼い主さんの自己判断での接種となります。
最近では、狂犬病の予防接種率も低下気味にあるようですが、怖い伝染病から愛犬を守ってあげられるかどうかは飼い主さん次第でありそれは命を預かる者としての最低限の義務です。
法律のあるなしにとらわれず混合ワクチンなどの予防接種で愛犬を怖い病気から守り長く健康で過ごせる環境を作っていきましょう。