ワクチン
ワクチンとは、あるウイルスを弱毒化や無毒化したものを体内に入れて体内に免疫を作る為に打つ注射の事です。
通常、犬のワクチンは狂犬病、犬ジステンパー、犬伝染肝炎、ケンネルコフ、犬コロナウイルス感染症、犬レプトスピラ感染症を予防する為に打ちますが、全ての病気に対して注射するわけではなく、いくつかに分けて注射する事もあります。
ワクチンのメリット
ワクチンを打つ事で抗体を作り、病気を完全に予防できるわけではありませんが、病気になりにくくなります。
更に他の犬などからの感染もある程度は防ぐ事になるので飼い主や家族としてはワクチンで防ぐことができる感染症にかかってしまった際の治療費などの経済的負担を軽減できます。
ワクチンを打つ費用と病気になった場合の治療費は比較にならないほど治療費の方が高いので、ワクチンを打つ価値はあります。それ以上に、感染症で苦しむ愛犬の姿を見ることは辛いうえに、最悪の場合亡くなることもあるので予防できるものは予防してあげましょう。
ワクチンのデメリット
完全に副作用が出ないワクチンは存在しません。勿論、副作用が出る確率は低いので副作用が出る事がワクチンを打たない理由にはなりにくいですね。
また、ワクチンには費用が必ずかかるのでワクチンを打つデメリットと言えるかもしれません。
ワクチンで予防できる病気
狂犬病
狂犬病は人にも感染する人獣共通感染症です。法律で打つ事が義務化されている感染症で、発症すると100%死亡してしまう病気です。
感染している動物から咬まれたり、引っ掻かれたりする事で感染しますが、日本では1957年を最後に発症は確認されていません。
世界中で未だに猛威を振るっている感染症ですが、日本の他に感染を確認されていない国としてはイギリスやオーストラリア、台湾、ハワイなどで、その全てが島国です。
症状としては発熱、頭痛、倦怠感、筋痛、疲労感、食欲不振、悪心、嘔吐、空咳などから始まり、噛まれた部分の痛みやその周辺の知覚異常や筋の痙縮を伴います。
脳症の症状としては運動過多や興奮、不安狂騒から始まり、錯乱、幻覚、攻撃性の上昇、水を恐れるなどを呈し、最終的には昏睡状態から呼吸停止で死亡します。
犬ジステンパー
ニホンオオカミの絶滅の原因となった病気として有名ですが、18世紀になるまでは確認されていなかった病気で、南アメリカからスペインに持ち込まれて、ヨーロッパ全土に感染が拡大して現在では日本を含めた全ての国で感染が確認されるようになりました。
犬のウイルス性の病気としては最も多く、発病率は25~75%と高く、致死率も狂犬病に次ぐ90%と高確率で死亡してしまいます。
ワクチンを打っていれば、殆どが無症状か軽い呼吸器症状だけで済みます。
犬ジステンパーは初期の段階で発熱を起こし、比較的短期間で収束しますが、数日後に再び発熱が起こり、約1週間継続する発熱を起こすのが特徴です。
その他にも結膜炎、鼻水、激しい咳、血便を伴う下痢が続けて発症します。末期にはウイルスが神経系に達して、痙攣や麻痺などの神経症状を示し、死亡します。
犬伝染性肝炎
犬アデノウイルス1型が感染する事で発症する感染症で、かかっている犬の排泄物や唾液を介して感染が成立します。
仔犬の場合には高確率で死亡しますが、成犬の場合には症状が出ない不顕性感染を示す事が多い傾向にあります。
感染すると肝臓に炎症が起こり、嘔吐、発熱、下痢、腹痛などの症状が現れます。
重症化すると、肝臓の機能不全による肝性脳症や低血糖からくる無気力、虚脱、昏迷、痙攣発作等の神経症状やが認められ、時には脳炎が起こる事もあります。
ケンネルコフ
伝染性気管気管支炎ともいわれる病気で、空咳や発熱などの風邪のような症状が続くので犬風邪とも呼ばれる事があります。
ケンネルコフは感染したウイルスや細菌等の数によって1つの感染である単独感染と2つ以上の感染がある混合感染があります。
単独感染の場合は、軽い症状で1週間~10日間ほどで回復します。
混合感染の場合は、食欲低下、元気消失、高熱、膿上の鼻水が症状として現れ、時には肺炎を起こして死亡する事もあります。
犬コロナウイルス感染症
病原性は弱く、成犬が感染するとその多くは症状が現れない不顕性感染であり、症状が現れたとしても軽い下痢、食欲不振、嘔吐が認められます。
仔犬が感染した場合は症状が強く現れる事があり、下痢が長引く事で脱水症状を起こす事もあります。
犬パルボウイルス
1976年以前に感染の報告はありませんでしたが、数年後に世界中で爆発的に感染が拡大しました。
通常、2~12日間の潜伏期間を経て発症し、食欲不振、元気消沈、激しい下痢、嘔吐、発熱、重い脱水などの症状が現れ、下痢は独特の生臭いにおいのする血便で、ケチャップに例えられることもあります。
下痢や脱水の症状が悪化すると、ショック状態になり、急死してしまう事もあります。
犬レプトスピラ感染症
病原性レプトスピラの感染による人にも感染する人獣共通感染症で、発熱、食欲不振、結膜の充血、嘔吐、血便などを示して脱水や尿毒症を起こして効率で死亡します。
数時間から数日で死亡する事もあります。
ワクチンの副作用
ワクチンの副作用には軽度の場合や中度の場合、重度の場合の副作用に分類されます。
中度や重度の副作用が出た場合、特に重度の副作用は命の危険性もある為に症状が合わられた場合には動物病院に連れて行き、治療を受けるようにしましょう。
軽度~中度の副作用
呼吸が速い、心拍速迫、落ち着きがない、無気力、CRTの低下などが起こります。
CRTは毛細血管再充填時間の事で、歯茎などの粘膜を1秒ほど押して、離して粘膜の色が元に戻るまでの時間で呼吸器系の異常がないかどうかの判断基準となる指標です。
戻るまでに2秒ほどかかる場合は異常です。
その他にも発熱、元気消失、食欲不振などの症状が現れ、ワクチンを打った後1~2日で現れます。
これらの軽度の副作用では治療をしなくても問題なく終わりますが、悪化することもありますので様子は見ないほうがよいでしょう。
中度の副作用
中度の副作用としては、蕁麻疹があります。
蕁麻疹は激痛、腫れ、赤くなるなどの症状が現れ、唇や目の周り、首の周りによく現れます。
重度の副作用
ワクチンの副作用で最も危険度が高い症状はアナフィラキシーショックです。
ワクチンに対して過剰に反応を起こす事で、呼吸困難などを起こして死亡する事もあります。
その他にも、呼吸が浅い、不整脈、反応が無い、意識が無い、CRTが更に悪化、低体温などがあります。
CRTが4秒ほどかかった場合や犬の体温は人よりも高く、38~39度ほどなので体温が37.5℃より低くなる場合は危険です。
ワクチンの副作用が現れる確率
ワクチンの副作用が現れる確率は15000分の1といわれます。
ワクチンの副作用は避妊去勢手術を行っていない小型犬でリスクがあるといわれている為に、避妊去勢手術を行っていない場合は注意が必要です。
ワクチンの副作用が出ないようにする為の対策
花粉などの季節性のアレルギーがあるアレルギー性皮膚炎の犬の場合は、ワクチンアレルギーが悪化するので打つ際には時期をずらすなどの獣医師と相談して打つようにしましょう。
ワクチンを打った後の30~40分ほどは副作用が出る可能性がある為に元気や食欲の有無などが現れないように注意して観察を行います。
一度副作用が現れると、次からは副作用が出る確率が上がる為に副作用が出た場合は次回からのワクチンは注意が必要です。
まとめ
ワクチンの副作用は現れる確率は低いですが、決して症状が現れないわけではありません。
ワクチンの副作用がどういったものがあるのかを理解していれば、万が一現れたとしても対処がしやすくなります。
狂犬病以外のワクチンは飼い主や家族の判断に任せられているので、ワクチンを打たない場合もありますが、その病気の危険性などを考慮して決定するといいでしょう。