意識を失うメカニズム
脳が正常に働くには、エネルギーとなるブドウ糖や酸素などが必要です。何らかの異常により脳に酸素やブドウ糖などの栄養素が行き届かなくなってしまうと、意識を失い急に倒れてしまうことがあります。また、脳は多くの神経で構成されていますが、神経の働きに異常を起こしてしまうことも倒れてしまう原因になりますがこの場合は痙攣を伴います。
犬が失神する原因
犬が意識を失う主な原因を5つ挙げてみます。
1.心臓性失神
心肥大や不整脈など、心臓病が原因で起こる失神のことです。心臓をドクンと動かすことで体に送られる血液量が低下してしまうことが原因です。
2.呼吸器の異常
低酸素血症疾患や発咳失神など、呼吸器の異常が原因となり意識を失うことがあります。
3.血液性の失神
低血糖や貧血、電解質不均衡など、血液中の栄養素の不足が原因で意識を失ってしまうことがあります。
4.神経調節性失神
検査をしても臓器等に異常がなく、原因の特定が難しいのが神経が原因の失神です。
内臓の感覚と運動をコントロールする「迷走神経」という神経が、何らかの原因で刺激されることにより失神を引き起こしてしまうことがあります。
- 咳
- 嘔吐
- 排便
- 排尿
など、日常の生理現象の時に失神してしまうこともあります。
5.リードを強く引っ張った時
中型犬や大型犬などの体の大きな犬の場合、ハーネスなしで首輪に直接リードを装着していることも多いかと思います。この場合、散歩時にグッと強い力でリードを引っ張ると、その衝撃で首の頸動脈が一時的に圧迫されます。圧迫され締まった血管は血圧が上昇し、脳に血圧を下げる指令が出てしまって脳に送られる血液量が減ることで失神してしまうことがあります。
「てんかん」との違い
犬にも「てんかん」を発症する子が多くいます。てんかんは脳の信号機能が正常に働かなくなることで起こり、恐怖や興奮など極度の感情の動きで発作が起こりやすくなります。てんかんの発作は失神と似ており、手足を硬直させて急に倒れたり、失禁や嘔吐などが見られることもあります。失神とてんかんの大きな違いは「けいれんが見られるかどうか」です。
愛犬が失神した時の対処法
愛犬が突然倒れてしまったら飼い主さんもビックリしますし、どうしていいのか分からなくて不安ですよね。愛犬が失神してしまった時にはできるだけ落ち着いて以下の対処を行いましょう。
動かさない
まずは安静が第一です。一時的な失神の場合、じっとしていることで脳に血液や酸素が戻ることが多くあります。
脈・呼吸の有無を確認する
落ち着いて愛犬の脈や呼吸の有無を確認しましょう。愛犬の鼻に鏡を当てると、呼吸がある場合には鏡が曇りますので確認しやすいです。
脈がない場合は心臓マッサージをしながら動物病院へ電話
脈がない場合は大至急で病院に連れて行く必要がありますが、まずは動物病院に電話をして獣医師の指示を受けましょう。可能であれば、片手で電話をしながらもう片手で心臓マッサージを行いましょう。
嘔吐がある時は窒息しないように注意
吐しゃ物が気道に詰まっていないか確認してあげましょう。その後動物病院に連れて行く時に吐しゃ物も持参して検査してもらうと安心です。
すぐに回復しても必ず動物病院へ行く
ほんの数十秒失神して、すぐにケロッと立ち直ってしまう子が多くいます。この場合も見過ごさず、できるだけ早く動物病院で検査を受けましょう。もしかしたら、飼い主さんが留守中や見ていない時に失神を繰り返している可能性があります。
獣医師に伝えたいこと
- 失神する直前に何をしていたのか
- 失神していた時間はどのくらいか
- 最近運動を嫌がることやぐったりしていることは無かったか
上記のことを獣医師に伝えると検査がスムーズにいくかと思います。失神直前にしていたことに原因がある場合もありますし、最近運動を嫌がる様子が見られる場合は心臓病にかかっている可能性もあります。獣医師の目の前で発作が起きるわけではなく確認することが難しいので、些細な事でも獣医師に伝えると安心です。
まとめ
大切な愛犬が突然意識を失って倒れてしまったらとても不安で、どうしていいのか分からなくなってしまいますよね。犬は何らかの原因で失神してしまうことが猫よりも多くありますので、もしも愛犬が失神してしまった時のために対処法を知っておくことで冷静でいることができます。失神してもすぐにケロッとしてしまうことも多くありますが、大きな病気が原因の場合もありますのですぐに動物病院で検査してもらってくださいね。