犬が耳を痒がるときの原因は?赤いときや臭いときは?応急処置の方法

犬が耳を痒がるときの原因は?赤いときや臭いときは?応急処置の方法

愛犬が頭を振る、足で耳や首のあたりを掻く、顔を地面に擦りつけるといった痒がる仕草を見かけたら、まずは1度耳を覗いてみましょう。実はその痒がり方、飼い主さんが気づかないうちに愛犬の耳に異常が起きている可能性があります!そんな時には痒がる原因を探って、一刻も早く耳の治療を開始してあげましょう。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

犬が耳を痒がる理由

子犬が耳を痒がる写真

犬が耳を痒がる様子を見せる時、その理由は様々です。まずはどんな理由があるのかを探ってみましょう。

ダニ、ノミなどの外部寄生虫

寄生虫予防を行っていない犬の場合、ダニやノミといった寄生虫により痒がる・気にする仕草を見せていることがあります。特にマダニでは顔周りの皮膚の薄い部分から吸血するため、耳に黒い豆粒のようなものが見えたら要注意です。

また、密集した環境からやってきた子犬に多い耳ダニでは、耳の中に炎症を引き起こして激しい痒みを与えます。

耳の病気

耳の病気で多いのは、外耳炎・中耳炎・内耳炎といった耳の各部分で起きる炎症です。炎症が激しければ激しいほど、痒みの程度は酷くなり、外耳炎から中耳炎・内耳炎へと進行していく場合が多くなります。

耳に異物が付着

散歩中に草むらに顔を突っ込んだ時によくあるのが、顔周辺や耳にくっつき虫(ひっつき虫)と呼ばれる植物が付着してしまうこと。耳にちくちくと刺激を与え続けるので、それが痒くて耳を掻いたり頭を振ったりして、何とか取ろうとする仕草を見せることがあります。

耳の中の毛が刺激になっている

耳毛がよく生える犬種であったり、耳の内側の毛が長くて耳の穴をくすぐっている場合、それが刺激となって愛犬が耳を痒がっていることがあります。毛を排除しない限り耳を気にしてしまうので、耳毛の処理を行うまで痒みが止まりません。

犬が耳を痒がる病気

獣医師が犬の耳をのぞいている

私たちの愛犬にとって、耳は周囲の状況を読み取り、把握するための大事な体の一部です。犬が耳を激しく痒がる時には、その耳の中で様々な異常が発生していることがほとんど。

耳の異常や病気は、放置するほど症状が治まるまでに時間がかかり、愛犬の生活の質を落としてしまいかねません。まずは愛犬の耳に起こりうる病気とはどんなものかを知って、気になる仕草が見られたらいち早く対応してあげましょう!

外耳炎

犬が耳を痒がる理由で最も多い病気が「外耳炎」です。犬の耳で外耳と呼ばれる部分はL字型の構造になっていて、鼓膜までの道を作っています。外耳炎とはその名の通り、その外耳に炎症が起きている状態のため、「耳が赤い」「激しく痒がる」「痛みが強く触られるのを嫌がる」「耳の中が腫れている」といった症状が傍目から見てもわかりやすく出る病気。

外耳炎を引き起こす要素はたくさんあり、

  • 耳ダニ
  • 細菌
  • マラセチア(酵母菌)
  • 食物アレルギーやアトピー性皮膚炎(アレルギー疾患)

など、耳の中にダメージを受けたり皮膚のバリア機能が弱い犬では、耳垢が増えて炎症が起きるきっかけになっていきます。

中耳炎

外耳炎が悪化して鼓膜の奥まで到達してしまうと、「中耳炎」と呼ばれる病気になります。中耳は音の振動を伝える部分で、主に「感染」と「アレルギー」を元にしてそこに炎症が起きてしまいます。その多くは外耳炎からの延長でなってしまうことが多く、時には鼻から耳管と呼ばれる道を通して感染を起こすこともあります。

症状は外耳炎と似ていて、鼓膜が破れることで耳の奥から膿や分泌物が漏れ出るため、中耳炎と気づかれない場合も。

  • 耳の根元を痛がり元気がなくなる
  • 頭を傾ける
  • 耳だれが出る
  • 顔面神経麻痺
  • 難聴

といった症状が出ることがあるため、外耳炎を引き起こしやすい犬は注意が必要です。飼い主さんが鼓膜周辺まで愛犬の耳をのぞくことは難しいため、動物病院で奥までしっかりと確認してもらいましょう。

内耳炎

中耳よりさらに奥に当たる内耳では、前庭・半規管・蝸牛と呼ばれる部分からなり、体の平衡感覚や聴覚を司る神経とつながっています。

そのため、外耳・中耳と炎症が進行して内耳にまで及ぶと、

  • 斜頸(自分の意志では戻らない頭の傾き)
  • ぐるぐると1方向に回る旋回
  • 平衡感覚が保てないことによる歩行困難
  • 眼が揺れている(眼振)

といった日常的な歩く・立つ・座るといった行動にまで支障が出てしまいます。

炎症がここまで奥に悪化していかないよう、外耳炎の耳を痒がる・気にするという段階で治療して、進行を食い止めることが大切です。

犬が耳を痒がる外耳炎の原因

犬の耳の中が汚れている

愛犬が耳を痒がる理由で最も多いのは外耳炎です。中耳炎や内耳炎を防ぐためにも、まずは外耳炎の段階で見つけることが重要になります。外耳に炎症が起きる原因は、ただ1つだけではなく、いくつかの要因が重なって起きていることもあります。外耳炎の原因になるものを知って、耳に炎症が起きることを日常生活から防いでいきましょう。

耳垢の通る道がない

人と同じように犬の耳でも生理的な範囲で「耳垢」が発生します。作られた耳垢は外へと自然に追いやられるものですが、愛犬の耳の状況によっては、耳垢が出ていくことができずに溜まる一方になってしまうことがあります。

  • 耳の中に大量の毛が生えて外耳道を埋めてしまっている
  • 繰り返す外耳炎で耳の皮膚が硬くなり、外耳道が狭まっている
  • 耳に腫瘍ができて外耳道が塞がっている

特に耳毛は、日本で人気のトイ・プードルやミニチュア・シュナウザー、シー・ズーといった犬種に多く生える傾向があります。耳毛が多いと耳垢も絡みついて留まることになるため、垂れ耳の耳をめくると「臭い!」と飼い主さんが顔をゆがめてため息をつくことになる原因にも!

トリミングサロンや動物病院で、耳毛が生えるタイミングに合わせて、月に1回など定期的に耳毛抜きを行いましょう。

細菌や酵母菌が繁殖しやすい環境になっている

外耳炎の大きな原因になる、細菌やマラセチア(酵母菌)がたくさん繁殖するのにぴったりな環境は、「ほどよく暖かくて湿気があり、栄養源(脂分や耳垢)がたくさんあること」です。

  • 耳毛が密集して生える
  • 垂れ耳である
  • 脂漏体質
  • シャンプーや水遊びで耳の中に水分が残る
  • 夏場の湿気の多い季節を過ごす
  • 冬にこたつに潜り込むことで耳の中の温度が上がる

耳がこういった環境に長くさらされると、耳の中が蒸れて細菌やマラセチアにとっては快適な場所になりがちです。

お家の中で愛犬が過ごす場所は、気温だけでなく湿度にも気を配り、冬の寒さ対策もこたつ以外の方法を取るようにしましょう!また、自宅でシャンプーをしたり、アウトドアで川や海に行った後は、愛犬の耳の中に水分が残っている可能性があります。コットンなどでしっかり拭いて、水気を取るようにしてあげてくださいね。

アレルギー疾患を持っている

アレルギーは接触したもの・食べたものなどに対して体の免疫システムが過剰に反応してしまう病気です。特にアトピー性皮膚炎では、目に見えないカビやダニ、花粉やほこりなども痒みを引き起こす原因になります。

耳や全身の皮膚に赤みや湿疹などがなくても、痒くて体を掻いてしまうことで傷ができたり皮膚のバリア機能が壊れ、細菌感染などを簡単に引き起こすきっかけを作ってしまいます。

外耳炎が長く続いている犬で、頻繁に耳の痒みに苦しんでいる場合、実はアレルギー疾患が元になっていることも。片耳だけでなく、両耳に何度も外耳炎を繰り返すようなら要注意です。

間違った耳掃除

愛犬が耳を痒がる原因を、実は飼い主さんが作り出してしまっていることもあります。その最たるものは「間違った方法」で行われる耳掃除。

  • 綿棒を使って耳垢を奥まで押し込んでしまっている
  • 耳毛抜きの時にピンセットなどの器具で耳を傷つけている
  • 耳を拭く時に力が入りすぎて耳を傷つけている
  • 汚れが少ないのに耳掃除の回数が多すぎる

外耳道がしっかりと確保されていれば、耳垢は自然に外へ出てきます。ところが、綿棒を使って掻きだそうとすると、逆に耳垢を鼓膜付近まで押し込んで固めてしまい、細菌やマラセチアの繁殖場所となることも。また、耳道に傷がつけば感染もしやすくなり、それが細菌をつけいらせる隙になってしまいます。

お家で行う耳掃除では、出てきた耳垢をイヤークリーナーなどを湿らせたコットンで拭き取るだけでも十分です。愛犬の耳をめくった時に「汚れがあるな」と思ったら、多くても週に1回程度の耳掃除を優しく行ってあげましょう。

犬が耳を痒がる外耳炎の治療法

獣医師が犬の耳を治療中

外耳炎の治療法でまず頭に置いておかなければならないことは、「炎症を鎮めて痒みや痛みをなくしてあげること」です。

動物病院に愛犬を連れてきた飼い主さんの中には、
「夜も眠れず耳を痒がる」
「触られるのも嫌がって咬まれるほど」
と言う人もいて、体の一部分である耳と言えども、愛犬との生活に大きなダメージを受けることになります。

そして、外耳炎の原因となっているものがあるならば、その治療も同時に行って再発を防いであげましょう。

耳洗浄

外耳炎の治療法でまず大切なのは、耳の中の環境を整えることです。耳垢が大量にある環境では、どんな点耳薬も、内服薬も期待するほどの効果を発揮できません。専用の耳洗浄液を使い、外からは見えない鼓膜周囲まできちんと汚れを落とすことが必要です。耳毛が多くて耳垢の出口を塞いでいる時には、耳毛の処理も同時に行います。

耳垢検査

耳の中に発生した耳垢を顕微鏡で見ることで、細菌・マラセチア・耳ダニといったどんなものが原因で外耳炎を引き起こしているのかを診断することができます。外耳炎の原因によっては効果が出る薬が異なるため、きちんと原因を探ることが大切です。

点耳薬

耳の中をきれいにそうじし、外耳炎の原因を突き止めたら、耳の状況に合わせて抗菌剤や抗炎症薬(ステロイドなど)などを含んだ点耳薬を耳に入れます。耳に直接薬液が吸収されるので、軽度の外耳炎の場合は洗浄と点耳薬だけで症状が治まることもあります。

点耳薬の中には、1週間効果が持続する薬品もあるため、「耳を触られるのが苦手」「自宅で点耳ができない」という犬の場合、獣医師に相談してみましょう。

内服薬

重度の外耳炎であったり、アレルギー疾患や皮膚病が元になっている時には、内服薬の投与が必要になることもあります。

  • 体の中の過剰な免疫システムを抑える免疫抑制剤
  • 炎症を鎮めるステロイドや非ステロイド性消炎剤(NSAIDs)
  • 細菌感染に対する抗生剤
  • カビの繁殖に対する抗真菌薬
  • 痒みのサイクルを遮断する痒み止めJAK阻害薬

抗生剤の選択では、一般的な薬品が効かない場合、耳垢を培養してどんな薬品がより効くかを調べる培養検査の上で選ぶこともあります。また、飼い主さんはむやみに投薬するのではなく、なぜその薬が必要なのかしっかりと獣医師に確認してから愛犬への投薬を始めましょう。

外科手術

繰り返す外耳炎によって皮膚が分厚くなっている場合には耳道を切開したり、腫瘍が耳道を塞いでいる場合には腫瘍を切除する手術が必要になることがあります。外耳道が塞がっていると、耳洗浄や点耳ができず、耳垢を外に排出することができません。外耳炎の程度や状況によっては、手術が必要になるほどの病気でもあるということを知っておきましょう。

犬が耳を痒がる時の対処法

犬の耳の中を拭き取っている

愛犬が耳を痒がる仕草を見せた時には、飼い主さんが対処法を知っておくことで愛犬の耳を守ることにつながります。お家で外耳炎を進行させないために、いざという時のケア方法を知っておきましょう!

耳垢を拭き取る

耳をめくってみて耳垢が見られたら、自宅にあるコットンやガーゼにイヤークリーナーをしみこませて見える範囲で拭き取ってみましょう。これで痒がる様子がなくなれば、一時的な痒みとして判断でき、定期的に拭き取ってあげれば外耳炎になるのも防ぐことができます。

しかし、

  • 耳をめくったら臭い
  • 耳垢が奥まで続いているようで量が多い
  • 耳の中が赤い、腫れている
  • 2~3日で耳垢が溜まる

と言った場合にはすでに外耳炎になっている可能性が高いため、悪化する前に診察を受けましょう。

引っかき傷を防止

耳の炎症が急激に起きた時には、愛犬が急に痒がる仕草を見せる時があります。耳をひっきりなしに掻く場合、愛犬自身の爪で耳を傷つけて出血しまうことも。すぐに動物病院へ行くことができれば良いのですが、それが難しいこともありますよね。

そんな時には、お家にエリザベスカラーと呼ばれる首に巻き傷を保護するものがあれば、それを装着して引っかき傷を防ぐという方法があります。ただし、つけっぱなしは耳が蒸れる原因になるため、翌日には動物病院へ行くという前提での応急処置的な装着にしておきましょう。

薬は使うべきか

「以前もらった点耳薬が残っている」
「市販の薬で対処できるかな」
愛犬が耳を痒がる時には、やはり早く痒みを鎮めてあげたいと思うのが「飼い主さん心」ですよね。また、薬を使えば痒みが治まったとなれば、診察を受けずともそれで良しとしたくなるものです。

しかし、

  • 外耳炎の原因によっては薬が効かない
  • 状況によっては薬が悪化を招く
  • 薬の効果を見ている期間治療が遅れる
  • 見えない耳の奥で炎症が静かに進行している

といったように、「外耳炎の進行を食い止められていない」「悪化させている」ということにもなり得ます。

愛犬のためには、まずは獣医師の判断・診断を確かめて薬を使うようにしてあげましょう。

まとめ

片耳を立てている犬

外耳炎と一口に言っても、その原因は様々で、すぐに治ることもあれば治療が長期間に渡ることもあります。外耳炎が進行することで、愛犬が耳を痒がるだけでなく、中耳・内耳と奥へ奥へと進行して、日常生活を送るのに支障が出ることもある油断できない病気と言えます。

「何だか耳が赤いな」「掻いているな」と思ったら、できるだけ早く治療を始めましょう。その1歩の早さが、愛犬の耳を健康に保ち続ける不可欠な要素になります。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    20代 女性 匿名

    ノミマダニ駆除薬、シンパリカは耳ダニ対策ができますよ。
    ノミマダニ駆除薬、ネクスガーやネクスガードスペクトラには耳ダニ駆除効果は無いので注意。
    匿名の投稿画像
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