犬のワクチン接種の必要性
ワクチンは、犬を感染症から守るために必要です。ワクチンを打つと、該当する感染症の病原体に対する免疫が誘導され、病原体が侵入したとしても身体が病原体を排除してくれます。犬の感染症の中には命を脅かす恐ろしい病気もいくつか存在しており、そういった感染症から犬の命を守るためにもワクチンは打っておくべきです。
まれにワクチンは必要かという質問を受けますが、コアワクチンに関しては必ず打っておいた方が良いでしょう。コアワクチンには、パルボウイルス感染症や犬ジステンパーウイルス感染症など、感染すると命を落とす可能性が高い病気が含まれているからです。
また、狂犬病ワクチンに関しては、法律で接種することが義務付けられています。狂犬病ワクチンを接種した証明書がないと、ペットホテルやドッグランなどの施設に入れないこともあるので注意してください。
犬のワクチンの接種時期と回数
ワクチンは、たった1回の接種で完了するものではありません。基本的なワクチンプログラムにおいては、1歳までに3回接種することが推奨され、1歳以降も定期的なワクチン接種を行うべきであるとされています。1歳以降において、どのくらいの頻度、間隔で接種すべきかについては、議論されているところです。
今までは毎年1回接種するべきと言われていましたが、感染症の種類によっては毎年やる必要はないと言われ始めており、3年に1回程度でも良いとも言われています。毎年ワクチン接種を行うことで、ワクチンの効果をしっかりと発揮することが期待できますが、一方で費用がかかってしまうことや副作用が発生する可能性もあるため、間隔を伸ばして定期的にワクチン接種を行っている例もあります。
犬のワクチンの種類
一般的に、ワクチン接種といえば、狂犬病ワクチンと混合ワクチンがあります。狂犬病ワクチンは、狂犬病に対するワクチンですが、混合ワクチンは複数の感染症に対するワクチンがまとまったものです。
混合ワクチンについては、4種、5種、6種、8種、9、11種など様々あります。いずれもコアワクチンに含まれる犬ジステンパー、犬パルボウイルス感染症、犬伝染性肝炎、犬伝染性喉頭気管炎の4種が共通しており、数字が大きくなるにつれて対象となる感染症が追加されていく形になります。
具体的には、パラインフルエンザウイルス感染症、コロナウイルス感染症、レプトスピラ感染症(数種類)があります。レプトスピラに関しては、いくつか細菌の種類があるため、レプトスピラ感染症に対するワクチンだけで数種類存在します。
接種するワクチンの種類の選び方
何種類接種すべきかについては、住んでいる地域に該当する感染症が流行っているかどうかを考慮して、決定すると良いと思います。その地域で蔓延している感染症を含む混合ワクチンを選ぶと良いでしょう。よく分からなければ、近くの動物病院に相談してみると良いと思います。
犬のワクチン接種の費用の目安
狂犬病ワクチンの費用についてですが、ワクチン接種代に登録料や証明証の発行代が加わるのが一般的です。ワクチン接種自体は、1,500円~3,000円が相場で、それに登録料や証明証の発行代を加えると4,000~6,000円程度になると思います。
混合ワクチンに関しては、種類の数が増えれば値段が上がっていきます。大体5,000~10,000円くらいが相場でしょう。
なお、上記の値段はあくまで参考程度のものです。獣医療は、人医療に該当する国民保険はなく、自由診療が一般的になっております。実際には病院間、地域間での差が大きく、費用について一概に言うことは難しいため、お近くの動物病院にお尋ねください。
犬のワクチン接種後の注意点
ワクチン接種後に副作用がみられるケースがあります。副作用が発生する確率は低いですが、副作用が発生する例は一定の確率であります。そのため、ワクチン接種後には副作用が発生しないかどうかをチェックしなければなりません。
ワクチン接種後の副作用については、軽度のものから重度のものがありますが、特に注意しなければならないのは、アナフィラキシーショックです。アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応の一つですが、ワクチンに対して過剰に免疫が反応してしまう状態です。
アナフィラキシーショックの危険性
ワクチン接種後に、震えたり、嘔吐したり、ぐったりしたりする場合には、アナフィラキシーショックの可能性があるため、早急に対応しなければなりません。発生は稀ではありますが、アナフィラキシーショックは命を落とす恐れもある怖い副作用です。
その他の副作用
また、その他の副作用として、ワクチン接種部位の痛み、痒み、腫れ、発赤などが起こる場合があります。そのほか、体温の上昇、元気がなくなる、興奮する、顔面が腫れる、よだれが出るといったこともあります。ワクチン接種をした日は、愛犬を放置することなく、身体に異変がないかどうかを観察してあげるようにしてください。
軽度であれば、経過を観察する程度で良いと思いますが、明らかに異常が出るようであれば、動物病院に行くようにしてください。
ワクチン抗体価検査とは?
狂犬病ワクチンは毎年の接種が法律で義務付けられていますが、混合ワクチンは必ずしも毎年しなければならないわけではありません。ワクチンは、命を脅かす感染症から犬を守るためにも接種すべきものですが、副作用の可能性があることから、ワクチン接種回数を減らした方が無難であるといえます。
ワクチン接種回数を減らすために行う抗体価検査について解説します。
ワクチンを接種すると、抗体という病原体をやっつけるために役立つものが、体内に生成されます。この抗体が十分に体内にあれば、病原体が侵入したとしても、身体の免疫がしっかりと働きます。逆に抗体が十分に体内にない場合には、免疫がしっかり働かない可能性があり、感染症に感染して重篤な臨床徴候を示してしまう可能性があります。
抗体価検査を受けるメリットと費用
抗体価検査は、体内の抗体濃度を調べる検査になります。抗体価検査は、少量の血液のみで検査が可能なため、犬への負担も少ない検査です。抗体価検査によって、体内の抗体濃度が十分にあると判断されれば、ワクチン接種を延期することができます。抗体濃度が不足している場合には、該当する感染症のワクチンを接種することになります。
抗体価検査は、感染症に対する予防という意味でも、副作用の確率の軽減という意味でもメリットが大きい検査であるといえるでしょう。
ひと昔前は、抗体価検査にかかる費用は、ワクチン接種の費用よりも高かったのですが、近年はワクチン接種と同じくらいの値段で受けることができるようになりました。大体、現在の相場としては5,000~10,000円ですが、これから抗体価検査が普及するにつれて少しずつ費用は下がっていくのではないかと思います。
まとめ
今回は、ワクチンの意義、接種時期や回数、ワクチンの種類、ワクチンの値段、ワクチンの副作用、抗体価検査など、盛り沢山の内容を解説しました。
ワクチンを接種していない犬が、パルボウイルス感染症やジステンパーウイルス感染症に感染して、死亡してしまった例を未だに耳にすることがあります。子犬を迎え入れた後のワクチン接種は飼い主の義
務であるといっても過言ではありません。
一方、ワクチン接種は必ずしも安全なものではありません。ワクチン接種後に副作用が発生しないかどうかをしっかりと観察してあげることや、ワクチン接種の頻度を減らすための抗体価検査という検査があることを頭に入れておいてくださいね。
ユーザーのコメント
女性 匿名
最近、狂犬病ワクチンの接種率が低下しいつ狂犬病が流行りだすかわからないという話を聞いてゾッとしましました。
個人的には、狂犬病ワクチンは犬だけでなく猫も義務化したら良いのにと思います。