犬のワクチンの種類
犬のワクチンには、法律で接種が義務づけられているものと、病気を予防するために任意で接種するものの2種類があります。狂犬病ワクチンは単体で接種されますが、その他のワクチンは「混合ワクチン」という形で接種され複数の感染症が予防できるようになっています。
コアワクチン
コアワクチンとは全ての犬種に対し、接種が推奨されているワクチンのことです。感染症は世界中で発生が確認されており、コアワクチンの接種で重大な感染症を予防することができます。
- 犬ジステンパーウイルス
- 犬アデノウイルス(犬伝染性肝炎)
- 犬パルボウイルス
- 狂犬病
伝染力の強さや致死率の高さなどから、世界でも3種のワクチンがコアワクチンとして指定されており、日本では「狂犬病」もコアワクチンに含まれます。3種のワクチンに関しては、世界小動物獣医師会(WASAVA)が、1歳までの時期に適切なワクチン接種を行った犬であれば、「再接種を行わなくても強固な免疫を何年も維持する」というガイドラインを発表しています。
ノンコアワクチン
ノンコアワクチンは、生活環境や住んでる地域の感染リスクが高い時期などに応じて、接種が推奨されているワクチンのことです。ノンコアワクチンで予防できる感染症には次のものが挙げられます。
- 犬レプトスピラ感染症
- 犬パラインフルエンザウイルス
- ボルデテラブロンキセプチカ感染症
犬レプトスピラ感染症は、暖かい地域で飼われている犬や、湖沼に入ることのある犬などが発症しやすい病気です。犬パラインフルエンザウイルスは、多頭飼いされている場合に気をつけなければいけない感染症の一つだとされています。犬の飼育環境に合わせてコアワクチン以外のワクチンの接種も検討するとよいケースでしょう。
犬のワクチンの時期
子犬のワクチンの時期
生後2ヶ月頃までの子犬は、ワクチン接種をしなくても母親からの移行抗体により様々な病原体から守られています。そのため、この時期にワクチン接種をしても子犬自身の抗体が作られず、免疫はつかないとされています。一方で、移行抗体が完全に消えるのを待ってからでは感染症にかかるリスクも高まるので注意が必要です。
世界小動物獣医師会(WASAVA)の示す、子犬のワクチン接種法「コアワクチンプログラム」は、多くの国で推奨されています。ワクチンプログラムでは、最も早く移行抗体が切れる時期を想定し1回目のワクチン接種を行います。
- 1回目のワクチン・・6~8週齢
- 2回目~3回目のワクチン・・前回の3~4週後
- 3回目~4回目のワクチン・・前回の3~4週後
- ブースターワクチン・・26~52週齢のいずれかの時点
1回目の予防接種で子犬の体内に抗体が十分に作られなかったとしても、何回かワクチン接種を行うことで感染症にかかるリスクを最小限に抑えることが可能です。ほとんどの子犬がしっかりと抗体を作りだせると言われている16週齢以降には、最後のワクチン接種を行うことが推奨されています。
血液検査で防御免疫がしっかりとついていればブースターワクチン(追加接種)は必要はなく、これで子犬のワクチンプログラムは完了となります。狂犬病予防接種に関しては、90日齢以上の犬に初回接種させるよう定められています。
成犬のワクチンの時期
成犬の接種時期は、混合ワクチンに含まれる伝染病のワクチン効果を持続させるため1年に1回ずつとなります。毎年接種する必要があるのかなど様々な意見がありますが、ガイドラインでは子犬の時期にしっかりとワクチン接種を行っていることを前提とし、コアワクチンは3年ごと、ノンコアワクチンは1年ごとに追加接種することが推奨されています。
しかしワクチンは飼育環境や年齢などによっても、接種の種類や時期が異なるため、あくまでも参考の一つとしましょう。また病院によっても追加接種の考えが異なるため、個々の犬の健康状態に合ったワクチンスケジュールを、かかりつけの獣医師に相談してから決めることをおすすめします。
犬のワクチンはいつまで?
小型犬や中型犬は10歳、大型犬は7~8歳、超大型犬は5~6歳ころになると、犬は老齢期と言われる時期を迎えます。老犬がワクチン接種をすると、体にかかる負担が大きいので避けたほうがよいとされています。しかし高齢犬でも伝染病にかかる可能性はあるため、健康状態に問題がなければ、1年ごとに追加接種することが推奨されています。
狂犬病のワクチン接種においては、体調不良や病気などの健康問題がある場合に「狂犬病予防注射実施猶予証明書」を届け出ることで、ワクチン接種を猶予することも可能です。
犬にワクチンを打ち忘れたら?
犬に混合ワクチンを接種する時期は、予定より多少早まったり遅れたりしても問題ありません。それよりも犬の様子を確認し、体調が万全なときに行うことが大切です。ただしトリミングサロンやドッグランでは、狂犬病予防接種の証明書と1年以内の混合ワクチン接種証明書が確認できないと、利用できないところもあるようなので注意しましょう。
ワクチン歴を忘れないためにも、ワクチンの種類や接種時期などを記録する手帳を持つことをおすすめします。そういった手帳の中には、狂犬病やワクチン接種の記録だけでなく、フィラリア予防薬の記録などを一緒に書き込めるようなタイプもあります。記録に残しておくことで、病院が変わったときにも役立ちます。
犬のワクチンの費用
混合ワクチン
犬のワクチン費用の目安は、混合ワクチンで5,000~9,000円ほどになることが多いようです。混合ワクチンには2~8種など様々な種類があり、混合する数により費用も異なります。また接種時期やどこで接種するのかによっても、多少費用が変動することもあるので事前に確認しておきましょう。
狂犬病
犬が狂犬病ワクチンを接種すると、3,000~4,000円ほどの費用がかかります。法律で接種が義務づけられているものですので、接種の時期をしっかりと確認し、打ち忘れたということがないように気をつけましょう。
まとめ
犬のワクチン接種を適切な時期に行うことで、かかりやすい感染症を予防することができます。犬種や生活環境などによっても接種スケジュールは変わってくるので、かかりつけの医師に相談しながら決めていきましょう。
またワクチン接種をした日は「シャンプーを数日控える」「短時間の散歩にする」など医師の指示に従い、犬に体調不良が認められた場合には、早急に動物病院を受診することが重要です。
犬と猫のワクチネーションガイドラインでは以下のように記載されています。
ワクチンは不必要に接種すべきではない。コア ワクチンは、子犬および子猫の初年度接種が完了 し、6 ヵ月または 12 ヵ月齢で追加接種(ブースタ ー)を終えたら、3 年毎よりも短い間隔で接種すべ きではない。なぜなら、免疫持続期間(duration of immunity, DOI)は何年にもわたり、最長では 終生持続することもあるためである。
ノンコ アワクチンのDOIは一般的には1年であるため、 年に 1 回の健康診断時に年に 1 回投与すべき特定 のノンコアワクチンの接種を行うとよい。
と記載されています。コアワクチンは免疫がある程度の期間持続するので3年ごとよりも短い期間で接種すべきではないとされています。しかし、この持続期間は個人差がありますので、抗体価の測定は毎年行ったほうが良いでしょう。
また、ノンコアワクチンは1年しか抗体価が持続しませんので、ノンコアワクチンについては毎年接種することが推奨されています。