犬が胃液を吐くのはなぜ?
犬が胃液を吐くのには様々な理由がありますが、そもそも犬の場合は胃が横向きに位置しているため比較的吐きやすい動物でもあり、個体によっては至って健康な状態であっても一過性の問題で胃液を吐くことがあります。しかし、なかには重篤な病気が隠れているケースもあるため、犬が吐く場合は嘔吐物に何が含まれているのかをしっかりと確認することが大切です。
まず、胃液とは無色透明の液体であり嘔吐直後は白っぽく泡立っていることもあります。胃液に混じっていることが多い刺激臭のある黄色っぽい液体は「胆汁(たんじゅう)」と呼ばれる消化液であり、他にも原因によって吐いた胃液に茶色っぽい血液や鮮血、未消化のフード、異物などが混じることがあります。
上記のような嘔吐物の内容や嘔吐後の様子をしっかりと観察することでおおよその原因を特定することができますので、安易に捉えすぎず異変を感じた場合はすぐに動物病院を受診しましょう。愛犬が吐いてしまった時、冷静に対処できるよう「犬が胃液を吐く」ことについて改めて確認していきましょう。
犬が胃液を吐く7つの原因
犬が胃液を吐く時に考えられる原因には以下のようなものがあります。
空腹
犬が胃液を吐く時の原因として最も多いのが空腹です。空腹の時間が長くなることで胆汁が胃液へと逆流し、その刺激によって嘔吐が引き起こされます。このような症状を「胆汁嘔吐症候群」と呼び、空腹時にのみ嘔吐することと、嘔吐前後も元気にしているのが特徴です。
食べ過ぎ
犬が胃液を吐く時、食べ過ぎによる消化不良によって吐いている場合もあります。犬が過食によって胃液を吐く場合は胃液と胆汁、更に未消化のフードが嘔吐物に混じっています。この場合も胃液を吐く前後は元気に過ごすことが殆どです。
食事があっていない
犬が胃液を吐く時、その頻度によってはフードそのものが愛犬の体に合っていない可能性もあります。一言にドッグフードと言ってもその粒の大きさや原材料などは様々で、なかには食べ物アレルギーの症状として嘔吐が引き起こされている場合も。この場合も嘔吐物は胃液と胆汁、未消化のフードであるため、嘔吐のタイミングや回数をしっかりと観察して原因を解明しましょう。
ストレス
犬が胃液を吐く時、ストレスが原因となっている可能性もあります。留守番の時間が長くなったり、引っ越しなどで生活環境が変わったりした時に繰り返し胃液を吐く場合は、症状が悪化しないように生活環境の見直しや精神的なサポートを心がけましょう。
異物誤飲、中毒
犬が胃液を吐く時、異物誤飲、誤食によって異物が喉に詰まっていたり、中毒症状を引き起こしていたりする可能性もあります。これらを原因とする場合、嘔吐物に胃液や胆汁の他に血液や異物が混じることもあり、激しい嘔吐の他に食欲不振や元気消沈、下痢、大量のよだれ、呼吸困難など様々な症状が現れます。明らかに嘔吐の回数が多く、元気がない場合などは様子見せずに早急に動物病院を受診しましょう。
副作用
ワクチン接種やノミダニ駆除薬など何らかの薬剤を投与した後に犬が胃液を吐く場合は副作用の症状である可能性があります。症状の程度によっては自宅で様子見することも可能ですが念の為、薬剤を投与した動物病院に連絡して指示を仰ぎましょう。
病気
犬が胃液を吐く時、その頻度やその他の症状によっては何らかの病気が隠れている可能性があります。ご飯を食べない状態が続く、吐くような仕草だけを繰り返す空嘔吐の症状がある、吐いた胃液がネバネバしている、胃液を吐く時に体が震えるなどの症状がある場合は早急に動物病院を受診してください。特に老犬や子犬などの場合、嘔吐や下痢を繰り返すことで激しく体力を奪われ、みるみるうちに衰弱してしまうこともあります。
犬が胃液を吐く原因は一過性の問題から生命に関わる病気まで多岐にわたります。そのため、胃液を吐いたタイミングやその内容物、その他の症状をしっかりと観察することが重要となります。とは言え、私達飼い主がその症状だけで原因を断定することは困難であるため、基本的に「1日2回以上」胃液を吐いた時や下痢や元気消沈などその他の症状がある場合は動物病院を受診するのが懸命です。
犬が胃液を吐く病気
犬が胃液を吐く時に考えられる病気には以下のようなものがあります。
- ウイルスや細菌、寄生虫による感染症
- 食道や胃腸の病気
- 中毒症
- がん(腫瘍)
- 腎臓病
- 心臓病
- 肝臓病
ウイルスや細菌、寄生虫による感染症
犬が胃液を吐く時、何らかのウイルスや細菌、寄生虫による感染症が原因となっている場合があります。この場合、感染している病気によっても異なりますが、主に激しい嘔吐の他に下痢や発熱、食欲不振、元気消沈などの症状が現れます。
食道や胃腸の病気
犬が胃液を吐く時、胃炎や腸炎、胃捻転(いねんてん)、腸閉塞(ちょうへいそく)、膵炎などの病気が原因となっている場合があります。それぞれ症状は異なりますが主に嘔吐や腹痛、下痢、血便、げっぷやよだれが増える、腹部の膨張、空嘔吐などの症状が現れます。特に胃に生じる疾患では嘔吐物に赤や茶色の血液が混じっていることも少なくありません。
がん(腫瘍)
犬のがん(腫瘍)にも様々な種類のものがありますが、なかには嘔吐や下痢などの症状を引き起こすものもあります。この場合、激しい嘔吐や下痢、胃液に血液が混じる、体重減少などの症状が現れることがあります。
内臓疾患
犬が胃液を吐く時、腎臓病や肝臓病などの内臓疾患が原因となっている場合があります。特に犬に多い腎不全では胃液を吐く症状と同時に食欲不振や下痢、体重減少、多飲多尿などの症状が現れることがあります。
心疾患
犬が胃液を吐く時、内臓疾患同様に心疾患を原因とした機能不全による症状である場合もあります。この場合苦しそうな呼吸や空嘔吐、咳などの症状が伴うことが多いようです。
犬が胃液を吐く、嘔吐をするという症状は様々な病気で見られるため、動物病院で適正な検査を行うことでその原因を確定診断することが重要となります。
基本的に犬が白い泡、つまり胃液のみをたまに吐く程度であれば病原性がないことが殆どですが、その他の症状がある場合は上記のような病気が隠れている可能性があり、早期治療が要となるものも多いため早急に動物病院を受診しましょう。
犬が胃液を吐く時の対処
犬が胃液を吐く時、動物病院で検査をしても何の問題もなく原因がはっきりと分からないという場合も少なくありません。胃液を吐く以外には症状がなく、元気な場合は以下のような対処法を試してみましょう。
食事の回数を増やす
犬が胃液を吐く原因が空腹と考えられる場合は、1日の食事回数を増やしてみましょう。もちろん無理に1日の食事量そのものを増やす必要はなく、現在と同じ量を小分けにして与えるようにしてください。例えば朝夕1日2回の食事から、朝昼夕寝る前などの1日3回~4回に増やすなど、空腹の時間を減らせるように調節します。
また、愛犬の年齢が成長期にあたる場合は単純に食事量が足りなくなっている可能性もあります。1日のエネルギー消費量や必要となる食事量は生活環境や個体によっても差がありますので、特に肥満気味ではなく1日の運動量が多い場合などでは食事量を増やすのも良いかもしれません。
ドッグフードの販売元が表記している1日の給餌量はあくまでも目安です。必ずしも愛犬に適した食事量であるとは限りませんので愛犬にあった食事量を再確認してみましょう。
食事の内容を変更する
犬が胃液を吐く時、未消化のフードが含まれている場合は消化不良を引き起こしている可能性があるため思い切って食事内容を変更してみるのも一つの手です。特に小型犬や老犬の場合はフードの粒が大きすぎたり、固すぎたりすると消化不良に陥りやすいため小さい粒や半生タイプの柔らかい粒のドッグフードに切り替えるのがおすすめです。
主食のドッグフードの切り替えに抵抗がある場合は、フードを少しふやかしてから与えるのも良いでしょう。また、胃液や未消化のフードを吐く時に食べ物アレルギーが疑われる場合は動物病院でのアレルギー検査でアレルゲンを特定することが大切です。
早食いを防止する
犬が胃液や未消化のフードを食後に吐く場合は、早食い癖がないかどうかを観察してください。一気に早食いして勢いよく吐く…というわんちゃんは意外に少なくありません。しかし、その状態が続くと正しく栄養が補給できない可能性もありますので早食い防止ボウルを利用したり、食事回数を増やしたりと早食い防止の工夫をしましょう。
犬が胃液を吐く時に病原性がない場合は、食事の工夫が重要になります。人にとってはたった1年でも犬にとっては数年の月日が流れている計算になるため、飼い主さんが気づかないうちに体質に変化が生じることさえあります。常にその様子をしっかり観察し、愛犬が胃液を吐くおおよその原因を推測した上で上記のような方法で対処してみてくださいね。
まとめ
犬が胃液を吐く原因や対処法についてご紹介しました。空腹時に白い泡のような胃液を吐くわんちゃんは多く、人間同様に食べ過ぎや食後の激しい運動などによって突発的に吐いてしまうこともあります。基本的に「胃液を吐くだけ」の場合は様子見で大丈夫と言われることが多いですが、そのタイミングや嘔吐物の内容、その他の症状を見逃さないように十分に注意しましょう。
また、一言に犬が吐くといっても一度胃に入った内容物が食道を経て口から吐き出されることを「嘔吐」、胃に到達することなく吐き出されることを「吐出(としゅつ)」と区別して呼びます。まずはこの「嘔吐」か「吐出」かを判断する必要があるため、胃液を吐いた時の状況についてメモしておくと獣医師への説明の際に役立ちます。愛犬が胃液を吐くことが多い場合は、日頃から食事時間と胃液を吐いた時間をメモしておくことをおすすめします。