12歳以上の犬の40%に認知機能障害
医学の発達のおかげで犬の平均寿命が伸びるに連れ、犬の認知機能障害いわゆる認知症も多く聞かれるようになりました。12歳以上の犬の40%に認知機能障害の症状が見られるという報告もあります。
また、カリフォルニア大学デイビス校の行動治療のクリニックの研究では、11〜12歳の犬の28%、15〜16歳の犬では68%が、1つまたは複数の認知機能障害の兆候を示していることが報告されています。
散歩に行った際に道順を忘れているように見える、トイレの失敗が増える、意味もなく吠えたり怖がったりする、などは犬の認知症が疑われる症状の一部です。
症状が進むと家族の認識ができなくなったり、睡眠サイクルが変化して昼夜逆転が起きたりするなど、家族にとっても辛いものです。
今までのところ、人間同様に犬の認知症にも決定的な治療薬はないと言われていました。
しかし、2018年の秋に韓国のGNTファーマ社が、認知機能障害の犬を対象にしたパイロット臨床試験で、素晴らしい有効性を示した治療薬を発表しました。
犬の認知機能障害の治療薬Ropesalazine(ロペサラジン)
治療薬の名前はRopesalazine(ロペサラジン)。
臨床試験は、犬の認知機能障害の評価スケールによって重度と判断された10歳以上の6匹の家庭犬を対象に行われました。ロペサラジンを毎日経口投与してから8週間以内に、6匹の犬全てが正常範囲の認知機能を取り戻し、認知症が発症する前のような生活に戻りました。
ロペサラジンの主任研究員は「臨床試験の前には6匹の犬は飼い主の認識ができなくなっていました。治療開始8周以内に犬たちが尻尾を振って飼い主に寄り添う様子には非常に驚きました。認知機能障害は治癒したように見えました。」と述べています。
GNTファーマ社はロペサラジンの認可を取るために、次の臨床試験に進む予定とのことです。
同社は2019年にはロペサラジンをコンパニオンアニマルのための認知機能障害治療薬として発売したいと考えているそうです。
治療薬以外にできること
認知症の有効な治療薬の開発はとても嬉しいニュースですが、日本でも認可されて発売されるまでにはまだ少し時間がかかりそうです。
初期の認知機能障害の症状は、他の病気と見分けるのがとても難しいものです。シニア犬は脳の他にも様々な病気が出てきても不思議ではありません。散歩に行って歩きたがらないのは関節炎かもしれないし、トイレの失敗は腎臓疾患の兆候かもしれません。吠えたり怖がったりするのも体のどこかに痛みがある可能性もあります。
ですから、何かしらいつもと違うことがあれば必ず獣医師に相談してください。
認知機能障害と診断されても、脳の健康をサポートするサプリメントを処方してくださる場合もあります。
そしてふだんから適度な運動で血行を促進し脳に酸素と栄養を届けること、毎日違うルートを散歩して脳に刺激を与えること、年を取ってもトレーニングを続けること、これらは脳の老化を遅らせ、認知症を予防するためにとても大切なことです。
まとめ
韓国の製薬会社GNTファーマが、犬の認知機能障害の治療薬が臨床試験で素晴らしい有効性を示したというニュースをご紹介しました。
認可までにはまだ少し時間がかかりますが、重度の認知症とされた犬たちが正常範囲の認知機能を取り戻したという効果は、多くの飼い主さんにとって大きな希望となりそうです。
この薬は人間のアルツハイマー病の治療薬としても期待されているとのことです。
愛犬が年を取って衰えを見せるのは切ないものですが、楽しい散歩や刺激的なトレーニングや遊びなど、楽しみながらできることを続けて、質の良い時間を持ちたいものです。
そして絶望することなく、医学の発達にも夢と希望を持っていたいと思います。