遺伝性疾患という言葉を聞いたことはありますか?遺伝性疾患とは、文字の通り遺伝子により引き起こされる疾患のこと。犬の遺伝性疾患は数が多いため、それらのリスクを秘める個体数もかなり多いと考えられます。
犬種の遺伝子によってリスクを持つ疾患の種類は違ってきますので、ご自身の愛犬の犬種にどういった遺伝性疾患の可能性があるのか、知っておくに越したことはありません。
ここからは犬の遺伝性疾患について、その概要や犬種による遺伝性疾患の病名など詳しくご説明いたします。
遺伝性疾患とは?
犬の遺伝性疾患
犬の遺伝性疾患とは、犬の遺伝子に起こる変異によって発症する病気を指します。遺伝性疾患を引き起こす遺伝子は、親から子へ、子からその子へと、繁殖により引き継がれ、どんどんと変異遺伝子を持つ個体が増えていくこととなります。
また限られた範囲内で、かつ同種で繁殖していく純血の犬は近い関係での繁殖が多く、遺伝子の形質が濃く引き継がれていき、やがてその種全体で発症しやすい遺伝性疾患となります。
悪徳ブリーダーと遺伝性疾患
日本では、一時期から販売用の犬や猫の繁殖が盛んに行われるようになりました。そして知識がなく、適した環境も整えない「悪徳ブリーダー」などという業者も現れます。
こういった悪質なブリーダーは、狭い檻の中で犬たちのことや近親交配の危険性なども考えず、犬や猫の数を増やしました。そんなむやみなブリーダー業の結果、変異遺伝子は引き継がれ蔓延していきます。
こういった背景もあり、遺伝性疾患を患うペットの数が、日本は抜きん出て多いという調査が出ています。
愛情を持ってきちんとした管理とケアの元、ブリーダー業を行っている方も多くいらっしゃいますが、悪徳ブリーダーが存在するのも現実。損害を受けるのは、何の罪もない犬や猫たちなのです。
遺伝性疾患への予防対策は?
遺伝子検査
近年は、犬の遺伝子検査を行う機関が増えています。費用はピンキリですが、1〜2万円で受けることのできるところが多いようです。
その方法は人間の遺伝子検査と同じように、口腔内の粘膜細胞を摂取し提出するだけと簡単。現状や未来の遺伝性疾患リスクやその病名はもちろん、愛犬の血に混ざる犬種や性格特性までわかるものも。
これらを事前に把握しておくと、それに対する予防策を立てることができますね。ただし、信頼できる機関と適したコース選びは慎重に行ってくださいね。
繁殖させない
遺伝性疾患は、その変異遺伝子を持つ犬の交配により、子へと引き継がれます。疾患を持って生まれた、または後に発症する可能性がある子犬たちのことを考えましょう。
引き取り手がなかったり、心ない人間によって捨てられたり、大切にされなかったりするかもしれません。そして変異遺伝子を持つ子犬たちが大人になり、また同じことが繰り返されるのです。
こういったことを防ぐためには、遺伝性疾患が見られる犬に繁殖はさせないということが必要です。
犬種による遺伝性疾患の例
人気犬種数種から、遺伝性疾患の例を挙げます。下記はほんの一例なので、愛犬の遺伝性疾患については各自詳細を調べておきましょう。
トイプードル
- 進行性網膜萎縮症:網膜が萎縮し、視力低下失明の恐れ。
- 膝蓋骨脱臼:膝の皿部分の脱臼、パテラとも呼ばれる。
チワワ
- 水頭症:脳内に髄液が溜まり、脳を圧迫する。完治が難しく、短命とも言われる。
柴犬
- 膝蓋骨脱臼:トイプードルに同じく。
- アレルギー性皮膚炎:皮膚のかゆみや炎症などを引き起こす
ゴールデンレトリバー
- 股関節形成不全:股関節の変形により、歩行に障害が出る。
- X染色体連鎖筋ジストロフィー:筋力が低下していく病。進行性で、呼吸障害や心不全に至る。
できるだけの予防と愛情を
犬の遺伝性疾患について述べて参りました。犬種によっては、複数の遺伝性疾患の可能性を持つものもあります。これらは必ず発症するものではありませんが、事前に知っておくことで食事や環境の点から最大限の予防対策を取ることができます。
また疾患が見つかった犬がいるなら、適切な治療を受けさせ、犬が幸せに生活できるように環境整備を行いましょう。どうか愛情を持って大切に育ててください。どの犬も猫もできるだけ健康に、そして幸せに生活させてあげたいですね。