大きな音が怖い犬たち
雷や花火の音、工事現場の大きな音、日常生活の中に犬を怖がらせる音はたくさんありますね。犬によっては、大きな音によってパニックになってしまったり、体調を崩したりするほどのストレスになる子もいます。飼い主としても、愛犬のそんな姿を見るのは辛いものですし、何とかしてあげたいと思うのが人情です。
サンダーシャツや犬のための音楽などで、効果を得られる場合は良いのですが、恐怖の度合いが非常に重度である場合には、一時的に薬に頼るという選択肢も「有り」かもしれません。
アメリカの食品医薬品局が、音に対する恐怖症がある犬のための新しい薬を承認しました。どんな薬なのでしょうか。
大きな音恐怖症のための薬『PEXIN』
新しく承認された薬の名は「ペクシン」と言います。この薬の効果についての評価は、花火の音に対して回避行動を示したことのある家庭犬への試験投与によって行われました。
ニューイヤーズ・イブの花火が打ち上げられる2日前から1日2回、1つのグループにはペクシンを投与、もう1つのグループにはプラセボの偽薬が投与されました。
飼い主はあらかじめ決められた時間の間隔で、犬の花火に対する反応を規定のスコアに沿って評価しました。結果、ペクシンを投与された犬の恐怖の度合いが、偽薬のグループよりも低いものでした。
またペクシンを投与された犬の飼い主の66%が、治療効果について「優れている」「良い」と評価しました。
気になる副作用は?
どんな薬もそうであるように、ペクシンにも副作用が見られる場合があります。最も一般的なものでは、立位および歩行時のふらつき、食欲増加、眠気、嘔吐でした。
また試験投与を受けた90匹のうち3匹の犬の飼い主が、犬が一時的に攻撃的になったと報告しました。これは恐怖によって自己制御されていた行動が、薬で恐怖が取り除かれたために制御されなくなった結果である可能性が指摘されています。このため、ペクシンの使用上の注意書きには、飼い主が犬を慎重に観察するように勧告されます。
副作用を挙げると怖い印象が強くなってしまいますが、深刻な恐怖症の犬にとっては大きな音にパニックになって家を飛び出してしまったり、家具や壁を噛んだり引っ掻いたりすることで怪我や誤飲につながる場合もあります。
これらは命に関わることもあるため、獣医師とよく相談した上で適切に薬でコントロールができるなら、選択肢として考慮する価値があると言えるでしょう。
またペクシンを使用することが適切かどうかを判断するのは獣医師であるため、この薬は獣医師による処方でのみ利用が可能となります。
まとめ
アメリカの食品医薬品局によって、大きな音を怖がる犬の恐怖を取り除く新薬『ペクシン』が承認されたという話題をご紹介しました。
日本でも認可されるかどうかはまだわかりませんし、犬に抗不安薬を使うということに抵抗を感じる人も少なくないかもしれません。
けれど薬を投与するかどうかは別として、恐怖に対処する薬の話題が、犬が大きい音に対して感じる恐怖は、人間が想像する以上に辛いのかもしれないと考えるきっかけになればいいなと思います。
《参考》
https://www.fda.gov/AnimalVeterinary/NewsEvents/CVMUpdates/ucm626582.htm
https://bmcvetres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12917-017-1098-0
この薬は、GABA受容体に拮抗的に結合し神経活動を抑制する薬です。抗不安薬の1種です、副作用が現れる場合もあります。投与に際しては必ず獣医師の指示に従ってください。日本では承認されていません。