長期治療中にみられる嗅覚が関係する愛犬の変化とは
犬の三大死亡原因といわれる、癌、心臓病、腎不全は長期治療になるケースが多く、病気の進行度合いや治療経過時間によって、愛犬の様子に様々な変化がみられます。特に、【臭い】に関する変化は食欲や精神安定に直接かかわってくるので、愛犬の変化に悩まれる飼い主さんが多くいます。
闘病中の愛犬の嗅覚は、どのように変化していくのでしょうか?
今まで好きだった物を食べなくなる
一番の変化は、食の好みが全く変わってしまうことです。病気になる前には、何でも食べて好き嫌いなんてしたことのない愛犬が、大好物のお肉を食べなくなった。最初は食べてくれていた療法食を食べなくなった、という変化がよくあります。
これは、体内循環が悪くなると口の中が気持ち悪くなり、大好物であっても食欲をそそる匂いではなく感じてしまうことが原因の1つです。
癌の治療などで抗がん剤による長期治療をしていると、この食の好みの変化は目まぐるしいことが多いのです。
- 昨日まで、それしか食べてくれなかった物を今日になったら拒否する
- 昨日まで、何も食べたがらなかったのに、今日は何でも食べたがる
- 食べたことがないものに興味を示す
など。
腎臓病や、心臓病などでは、体内循環が落ちると多臓器への負担も大きくなり、消化吸収にかかわる大事な臓器の血液循環が悪くなります。そのため、食の好みだけでなく食欲不振や尿毒症の症状で、味覚が大きく変わることが多々あります。食欲と味覚、嗅覚は深いつながりがあり、犬は特に嗅覚が味覚よりも勝ることがあります。
健康な犬であっても、クンクンと匂いを嗅いでみて「要らない」と言ったけど、口の中に入れてみたら「美味しいね!」と食べ始める行動が見られます。食感による食べ選びもありますが、まずは臭いで判断して食べるか食べないかを決めるような行動もあります。
シャンプーの臭いや部屋の臭いで落ち着かない
闘病中であっても、体を清潔に保つためにボディケアをしてあげたいという飼い主さんが多くいます。ですが、シャンプーの良い匂いが突然嫌いになる犬もいます。
食後、時間が経っているのに、シャンプーをしたら吐き気がでたり、しきりに体を舐めたり、壁などにこすりつけるなど、今まで見られなかった行動をみせることがあります。
血流が悪くなっていると、シャンプーによって血行促進され、体が温かくなってかゆくなることがありますが、臭いに対して過敏に反応していることもあります。
治療中の犬の嗅覚の変化に気を付けてあげたいこと
様々な変化に、戸惑いや悩みが多い愛犬の治療生活ですが、過敏になったり、感覚の変化で不快な思いをさせたりしないように、飼い主さんが気を付けてあげられることがあります。
①置き餌をしない
食べ残しや、食欲不振の愛犬が寝ている場所に、「好きなときにいつでも食べられるように」と食事を置いてあげる飼い主さんがいますが、何をしても食べないときには、置き餌の臭いが苦痛になっている場合があります。
人間でも、食欲がないときに強い食べ物の臭いを嗅ぎ続けたら、気持ち悪くなります。特に、愛犬をケージやクレートに寝かせている場合は、置き餌の臭いがこもって、さらに不快な空間になってしまいます。
②香水や消臭剤を使わない
まれに人間の香水の匂いが大好き!という犬もいますが、基本的に犬には香水は刺激臭です。シャンプーの臭いも人間の好みに合わせて犬の体臭を隠すものや、虫よけのためにハーブなどが使われて強い匂いがしますが、犬にとっては不必要な匂いです。
元気なときには、慣れて不快感は少ないかもしれませんが、闘病中には匂いの少ないものや無香料、無臭の消臭剤などに変えてあげましょう。
③落ち着く場所の匂いを奪わない
愛犬が寝ている場所に、タオルやベッドを置いてあげている場合は、頻繁に洗いすぎないようにしてあげましょう。
自分の匂いや飼い主さんの匂いで落ち着いて過ごしている場所の匂いが、コロコロ変わったり、なくなったりすると落ち着きません。衛生面を考えれば、毎日でも洗濯してあげたくなりますが、神経質になり過ぎないようにしましょう。布類の殺菌なら、しっかりと抜け毛を取り除き、水洗いして天日干しで十分です。
まとめ
犬の嗅覚の変化による影響は、食欲、睡眠、精神安定、物や場所の認識や記憶などにまで深くかかわっています。特に病気の治療中に、食べ物の好みが変わったり急に食べなくなったりするのは、嗅覚による影響が大きく関係しています。
この変化に戸惑ってしまう飼い主さんが多いのですが、食べてくれるものを手探りで試すときに、好きな匂いや刺激が少ない物を選んであげると、良い食べ物が見つけられるかもしれません。
また、匂いが強いものに刺激されて食欲が増すというのは、健康な犬に対しても確かな根拠がありません。
日頃のケアや、体調不良、突然の食事拒否に直面したときに【嗅覚】について思い出して、愛犬により良い選択をするヒントにしていただければ嬉しいです。