犬の耳垢には役割がある!
犬の耳垢、きれいなものではないし、健康で清潔に保つために、いつもスッキリと掃除しておいた方が良いというイメージを持っている方も多いと思います。けれど耳垢には、れっきとした役割があるんです!
耳垢は耳の中にある腺から分泌され、入ってきた汚れや耳の中の古い剥がれた皮膚細胞、微生物、花粉などを包み込む機能を持っています。不要なものを包み込んだ耳垢は、本来は自然と押し出されてくるので、耳垢は生き物が本来持っている耳のクリーニング機能でもあります。
ですから、犬が健康で感染症の兆候などが見られない場合は、耳の見えるところまで出てきた汚れを、耳用ウェットティッシュや綿棒などで、そっと拭き取るだけで十分です。耳の奥に綿棒などを入れて掃除することは、耳の中を傷つけたり、耳垢を奥まで押し込んでしまったりすることにつながるので、避けましょう。
また、感染症などがないのに殺菌作用のある洗浄液を使うことも、耳の中のpHバランスを崩してしまうので、かえって感染症に罹りやすい状態になるので気をつけてください。
どんな状態なら耳垢が多すぎ?
では、犬の耳がどんな状態なら、耳垢が正常な量ではないと言えるのでしょうか?
通常は、月に一度くらい目に見えるところを拭く程度できれいに保てるのですが、拭いてもすぐに汚れるなど、「おかしいかな?」と思ったら、早めに病院で診察を受けることが一番です。
また、アレルギーで外耳道が腫れている場合、耳垢の分泌量そのものは正常でも、自然と外に押し出すことができないため、耳垢が溜まりがちになります。足指などにアレルギーの症状が出ているときには、病院で耳のチェックもしてもらいましょう。
海やプールで水泳をした後には、一時的に耳垢が増える場合があります。水が入ることで、溜まっていたものが流れてくるためですが、慢性的に耳垢が増えた感じがするときには病院で受診しましょう。
耳垢の溜まりやすい犬種
病気や異常ではないのですが、その身体的な特徴から耳垢が溜まりやすい犬種があります。
例えば、バセットハウンドは耳道がたいへん長いため、耳垢が溜まりやすい傾向があります。またイングリッシュブルドッグは、耳以外の部位のしわや皮膚のひだが、耳道の形にも影響を与えて、耳垢が溜まりやすくなります。また耳の感染症も起こしやすい傾向があります。
プードルやシーズーなど、耳の中にも毛が多く生える犬種は、耳垢と毛が絡み合うため、耳が塞がりやすくなります。それを防ぐために、耳の中の毛を抜く処理をしますが、毛を抜くか切るかは近年賛否両論で、結論が出ていない状態です。獣医師やトリマーとよく相談して、愛犬に最適な方法を見つけてください。
身体の形状から来る理由ではないのですが、コッカースパニエルは耳の中の腺からの分泌が過剰になる遺伝的な問題があり、耳垢が過剰になる個体が多い犬種です。
アレルギーなどによるものでも、犬種の特徴から来るものでも、耳垢が溜まりすぎた状態を放置すると痛みを伴う感染症や、聴力の低下につながります。愛犬が耳垢のリスクが高いタイプだと思ったら、かかりつけの獣医さんと相談して、定期的な耳掃除を検討してみましょう。
耳垢と間違いやすい症状
上の画像は酵母様真菌類(マラセチア)の感染症に罹った犬の耳です。ある種の感染症では、このように黒い汚れが出て、耳垢と勘違いしてしまうことがあります。ミミヒゼンダニ感染や、マラセチア感染ではこのように黒い耳垢がたくさん出ることもあります。
このような状態は、感染症の種類などを特定するために早急に獣医師の診察を受ける必要があります。耳の感染症は繰り返し罹る場合が多く、免疫力が落ちたときに再発しやすくなるので、普段から健康管理と念入りな観察が大切です。
まとめ
犬の耳垢について、知っておきたいポイントをご紹介しました。
- 耳垢は自浄作用の一つなので、健康な犬なら基本的には外に出てきた汚れを拭く程度でOK
- 自然な量としては多すぎるのでは?と思ったら、早めに受診
- 耳垢が溜まりやすい犬種は特に注意。場合によっては病院で定期チェックを
- 異常に多い耳垢や臭いの強い耳垢は、耳への感染症がこじれている可能性があるので、極端な汚れは病院で受診
夏の暑さで体力が落ちたり、水遊びの機会が増えたりで、夏は耳のトラブルも増えやすい時期です。
愛犬の耳をしっかりと観察して、トラブルを回避してあげたいですね。
《参考》
https://www.petmd.com/dog/care/what-normal-earwax-pets