犬の鞭虫症とは
犬の鞭虫症は、体の腸内に寄生し吸血されることで様々な症状が現れます。寄生数が少ない場合、盲腸に寄生しているので検便で発見できないことがあります。そして、盲腸内に寄生しているうちは症状が現れないことが多いのです。
ですが寄生虫が産み落とした卵が孵化し、更に寄生数が増えると、大腸へ寄生が広がり不調が現れてきます。犬の鞭虫は吸血性の寄生虫のため、重篤になると貧血や低たんぱく血症がみられるますが、すぐに命にかかわるような感染症ではありません。寄生期間が長ければ長いほど犬の体をどんどん弱めてしまいます。
そして一度感染して駆虫をしても、犬はまた鞭虫症の感染を繰り返す、とても厄介な寄生虫で、生命力や感染力が高いので、一度でも感染したことがある犬や、通年駆虫を勧められる地域に住んでいる場合は、完治してもその後、定期的な予防駆虫が必要になります。
犬の鞭虫症の症状
犬が鞭虫症になってしまうとどのような症状が出るのでしょうか?寄生虫感染による症状だけでは、どの寄生虫によるものなのかを特定することはできません。犬の鞭虫症は症状が酷似しているためです。ですが、一つでも寄生虫感染症状を知っておくと、いざという時に適切な対応ができ、早期発見につながりしますので参考にしてみてください。
鞭虫症の初期症状
犬の鞭虫症の初期症状は、大腸性下痢を引き起こし、犬の排泄時に「しぶり」が見られることもあります。犬の便の色は黒っぽくなります。血の混じった下痢や粘膜便になり、何度も何度も排便のアクションをおこしますが、少量しか排便できずスッキリしない様子です。
鞭虫症の中期症状
犬の鞭虫症の中期症状は、原因不明の脱水や体重減少がおこります。いくら食べても、黒っぽい下痢が続いて、犬に明らかな体のやせ細りが分かるようになってきます。
鞭虫症の重篤症状
犬の鞭虫症の重篤症状は血便、腸内炎症、貧血、低蛋白血症、脱水症状、栄養失調がおこります。
鞭虫症の症状が出ない
犬の鞭虫症の症状が出ない場合は、犬に寄生する鞭虫の数がごく少量の時です。無症状の場合もあります。また、ごく少量の寄生の場合、軽い症状が出る、治まる、を繰り返すこともあるので発見が難しくなります。
犬の鞭虫症の原因
犬の鞭虫症の原因は、名前のとおり「鞭虫」の寄生虫卵が体の中に入り込むことが原因です。
犬の鞭虫症の感染経路
鞭虫症に感染した犬は便とともに鞭虫の虫卵を排便します。この虫卵は、体外に排出されたあとも非常に高い生命力で、寄生対象が現れるのを1年以上も待ちながら生き延びることができます。
- 感染犬の便を舐めた
- 感染犬の便を踏んだ肢を舐めた
- 農作物に感染便から虫卵が付着しそれを食べてしまった
- 虫卵が入り込んだ、水たまりや土を飲んだり舐めたりした など
鞭虫の卵は主に、排泄物や汚染水、汚染土壌、汚染物を犬が舐めたり食べてしまうと「経口感染」します。
犬の鞭虫症の感染しやすい場所
都市部では鞭虫に感染することは、あまりないといわれていますが、農地が広がる自然豊かな場所や不特定多数の犬が集まる場所では感染率はとても高くなります。特定の地域だけで発見される寄生虫ではありませんが、感染事例が多い地域では通年月1度の駆虫をすすめられることもあります。
犬の体内に入り込んだ鞭虫の卵はどこへいくか
鞭虫症を経口感染し、鞭虫の卵は犬の腸内で成熟し孵化します。そして腸壁を吸血し成長して卵を産みます。その卵は便と一緒に体外へ排泄され、新たな寄生場所を探すのです。
鞭虫卵が犬の体内に入り込んでから1か月~3か月で孵化しますので、鞭虫症の症状が出るころには感染の可能性や行動があったことを忘れてしまい、感染症とは思わない飼い主さんが多いのです。
犬の鞭虫症の治療
犬の鞭虫症には適切な治療法があります。防げる感染症でもあり、治療もできる感染症でもあります。
犬の鞭虫症に有効な治療方法
犬の鞭虫症の治療は、動物病院で処方してもらえるその他の寄生虫にも有効な駆虫薬で退治することができます。
皆さんはフィラリア症の予防として、月に1度駆虫薬を飲ませていますか?犬の鞭虫症の治療には、フィラリア予防薬(ミルベマイシン)として知られる駆虫薬も使うことができます。鞭虫の駆虫だけを行いたい場合は、ドロンタールプラス錠の投与を行います。ドロンタールプラス錠は他に「犬回虫・犬鉤虫・瓜実条虫」の駆虫も可能です。
- ミルベマイシン
- ドロンタールプラス錠 など
市販で売られている犬の虫下しは鞭虫には効果がないものもあります。犬の鞭虫症は自己診断せずに必ず獣医師からの処方薬で駆虫しましょう。
鞭虫症の症状と同時に駆虫を行う
犬の鞭虫症の体内寄生は、検便でなかなか発見されづらいことから、感染しやすい環境や行動があり、対症療法で症状が治まらない時には、鞭虫が発見されなくても駆虫を行うことを勧められます。便の中に寄生虫卵がある場合は特徴的な卵なので発見しやすいです。
鞭虫症の重篤な症状が出ている時には、駆虫と同時に脱水症状の回復や腸内環境を改善していく治療も必要になります。
犬の鞭虫症の予防法
犬を鞭虫症から守るために正しい予防と対処方法を知っておきましょう。
- 農地、用水路や草むらなどには様々な寄生虫がいるかもしれないと知っておく
- 鞭虫症に効果がある駆虫薬、予防薬を定期的に飲ませる
- 不特定多数の犬が出入りする場所に行く時は必ず予防薬を飲ませる
- 犬の散歩時、帰宅時には自分の足を舐めさせない
- 飼育環境を清潔に保ち、体に寄生虫の卵を付着させたまま家に入れない
- 他の犬の便に近づかせない
- 予防、駆虫をしていない犬との接触は控える
鞭虫は聞きなれない飼い主さんもいるかもしれません。都心部では少ないと考えられる鞭虫症ですが、旅行先で犬が感染する可能性はけっして低くありません。どこで、どのタイミングで感染してもおかしくないのです。
犬の鞭虫症は人間に感染はするか
犬の鞭虫症が人間に感染はする可能性は0%ではありません。
感染した犬の便から何らかの形で鞭虫卵が、人間の口を通って体内に入り込んでしまったら、同じように腸内で育ってしまう危険性はあります。小さな子供などと犬が同じ環境で生活していると、犬に口を舐められたり、子供が犬を舐めたりと感染するきっかけはいくらでもあります。
犬の鞭虫症が人間へ感染する事例は極まれなことではありますが、人と犬が健全に共生していくには、全ての人畜共通感染症に注意が必要です。
まとめ
犬の鞭虫症を初めて知ったという方もいると思います。寄生虫による感染症は多くの場合、予防が可能です。犬の鞭虫症は鞭虫に効果のあるフィラリア予防薬を飲ませればフィラリア症予防と同時にできます。定期的に駆虫薬を投与して、定期駆虫を行うことも可能です。
犬の鞭虫症は、血液の混じった下痢を起こしますので、動物病院で検便をしてもらうと鞭虫卵が見つかれば比較的早く発見することができ、治療可能です。下痢をした場合は寄生虫の有無の確認のためにも検便をしてもらいましょう。
犬の鞭虫症では、いつもと違う場所に出かけてきた、知らない他の犬の糞を舐めてしまった、そのような出来事があった時には、その後の体調の変化に十分注意し、異変がある時にはすぐに獣医師による診察、治療を受けさせてあげましょう。