犬の心不全の症状
犬の心不全は、病気の診断名ではなく、犬の心臓のポンプが弱ってきて全身に十分な血液が送れなくなる病態のことです。
犬の心不全の症状で、大きく飼い主さまが気づく最初の症状としては咳や散歩に行きたがらないなどです。
「なんか最近、うちの子寝ている時間が多いな」や、「朝晩などに何かが詰まっているような空咳をする事があるな」と、犬のいつもと違った状態が見受けられることもあります!
犬の咳にはその他の疾患、例えば「気管虚脱」や「気管支炎」などでも見られる症状ですが、心不全には運動不耐性などが同時に見られるなら注意が必要です。犬の心不全の症状が重度になってくると、少しの運動でチアノーゼが見られたり、呼吸回数が増えたりと、目に見える症状が増えてくるのです。
犬の心不全で、私が経験した中では、トリミング後に犬の呼吸がおかしいといった症状で来院され、犬に心不全が見つかった方もいました。
犬の心不全の原因
犬の心不全にはいくつかの原因があります。
- ①犬の弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症や三尖弁閉鎖不全症)
- ②犬の心筋症(犬の場合拡張型心筋症)
- ③犬の先天性疾患
今回は①の犬の弁膜症についてお話ししていきます。
犬の心不全の原因の一つ、犬の弁膜症で有名なのは、僧帽弁閉鎖不全症や三尖弁閉鎖不全症といった疾患ですね。
僧帽弁閉鎖不全症はあらゆる犬で発生しますが、大体が高齢の小型犬~中型犬で見られます。弁膜症は、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの好発疾病ですが、こちらの犬種の場合は若齢でも発生します。
これは左心房と左心室の間にある僧帽弁という弁で異常が起き、血流が乱れてしまい、犬の心臓のポンプ機能がうまく働かなくなってしまうものです。「ん?1番はじめに犬の咳に注意って言ってたけど、犬の心臓と咳って関係あるの?」って思ってる方がいらっしゃるかと思いますので説明しますね。
そもそも、犬も左心房と左心室血流の流れがうまくいかなくなると全身循環が悪くなってきます。そうすると更に心臓のポンプ機能を動かして全身に血流を届けようとします。
その結果、左房や左室が肥大してきて心臓の形が変わってきてしまいます。 左房の上には気管があるため、左房が拡大すると気管が押し上げられて、犬は咳が出て、心不全を発症してしまうのです!
犬の心不全の治療法
心不全は完治する事がない病気です。犬の心不全の治療では犬の弁膜症が原因で弁置換術などの外科的処置を実施している病院もありますが、それもかなり限られてきます。
犬の心不全の治療には、犬の心不全の重症度によって変わってきますが、内服薬として以下3つの薬を使用して維持していく形になります。
ACE阻害薬
ACE阻害薬は、血管拡張をし、心臓の負荷を減らしたり、犬の腎臓などを保護したりする効果もあります。犬の心不全の治療としては、結構、初期から使用されています。
利尿剤
犬の心不全の治療としては利尿剤は、犬の尿として余分な水分を排泄し、心臓の負荷を減らしますが、利尿剤を使いすぎると犬の腎臓を痛めてしまうため注意が必要です。
ちなみにこの薬は、心不全治療の他、肺水腫という病態に犬がなった時に非常に有効な薬剤です。肺水腫とは肺の毛細血管圧が高くなり血液中の液体成分が血管から肺の方に漏れ出てしまうことから肺全体がむくんできてしまい、呼吸がうまくできない状態になってしまいます。
これにより命を落とす子も少なくはありません。この病態になったら 利尿剤によって肺の浮腫みを取り除いてあげる事が先決です。
強心剤
犬の心不全治療として強心剤は、「ピモベンダン(息切れ・息苦しさの症状改善)」という薬が使われる事が多くなっています。高齢犬になると心臓のポンプ機能が落ちてきて、全身に血液を送り届ける事ができなくなってしまいます。なので、強心剤により、犬の弱った心臓の収縮力を高めていきます。
犬の心不全の予防について
①体重のコントロール
犬の肥満は心不全にとって最大の敵です。体が重ければ気道などを塞ぎがちですし、呼吸も苦しくなってしまいます。すると、心臓への負荷も増してきます。
②涼しい環境の維持
犬の心不全の予防には、犬の体重コントロールと同じように、呼吸回数の増加によりその他の疾患も併発します。暑い日など呼吸回数の増えるためため、涼しい環境の維持が必要です。
その他、犬の心不全の予防には、塩分制限や過度な運動の制限などがありますが、日頃から愛犬の様子に注意をすることが大切です。
まとめ
犬の心不全はいろいろな病態があり、心不全の薬剤に関しても様々なものや使用法があります。また、犬が救急疾患として搬送されてくるケースも多く、一刻を争う状況になることもあります。
犬に少しの違和感や気になる事があれば、すぐにホームドクターや獣医師に相談してくださいね。犬の心不全は早期発見、早期解決が大切ですからね。