犬の蛋白漏出性腸症の症状
犬の蛋白漏出性腸炎症の症状は様々ありますが、主に慢性的な下痢が多くみられます。その他に嘔吐や、タンパク質を栄養として吸収できないために起きる栄養不良・体重減少・脱水などが起こります。これらは犬の「毛艶が悪くなる」「痩せてくる」「皮膚に張りがなくなる」といった見た目の変化で現れてきます。
犬の血液中のタンパク質が少なくなってしまうと、血液中に水分を保持することができなくなります。このため犬の身体は浸透圧が保てなくなり、血液から水分が血管外へ漏れ出て、腹水・胸水・皮下浮腫といった症状を引き起こす場合もあります。
腹水が溜まると、お腹が張って膨らんできたようにみえます。胸水が溜まってきた場合には、犬の呼吸が苦しそうになり動きたがらなくなるなどの、行動の変化が現れます。皮下浮腫とは「むくみ」のことをいいます。
犬の蛋白漏出性腸症の原因
犬の蛋白漏出性腸症は、タンパク質が腸管から漏れ出してしまうことで、血液中のタンパク質が少なくなる低蛋白血症を引き起こす病気です。
タンパク質は生き物にとって大切なエネルギー源であると同時に、体中の様々な組織を作るための重要な栄養素でもあります。犬の蛋白漏出性腸症の主な原因には、何らかの腸疾患が考えられます。下記、主に5つの疾患が原因でタンパク質が腸管から漏れ出る病態を蛋白漏出性腸症といいます。
- 犬のリンパ管拡張症
- 犬の腸管型リンパ腫
- 犬の炎症性腸疾患(IBD)
- 犬の胃腸にできた潰瘍
- 重度の犬の感染症
犬のリンパ管拡張症
リンパ管拡張症とは、犬の慢性腸炎やリンパ腫などにより、リンパ液の流れが滞り、リンパ液中のタンパク質が腸管へ漏れ出ている状態です。
犬の腸管型リンパ腫
血液の白血球の1つであるリンパ球が癌化する、腸管型リンパ腫とは犬の血液の癌です。
犬の炎症性腸疾患(IBD)
炎症性腸疾患(IBD)は犬の免疫調節の異常や、腸のバリア機能の低下が原因と考えられていますが、はっきりとは分かっていません。
犬の胃腸にできた潰瘍
胃腸炎や腫瘍、腎疾患・肝疾患などが原因で起こります。寄生虫感染や薬剤の刺激などでも起きることがあります。
重度の犬の感染症
重度の感染症は腸管に強い炎症が起き、潰瘍ができる原因となります。
犬の蛋白漏出性腸症の治療と予防法
犬の蛋白漏出性腸症そのものに対する予防法はありません。それぞれの原因となる疾患に応じた治療を行います。犬が蛋白漏出性腸症と判断された場合、まずは原因となる疾患を特定するための検査を行います。
上述の原因となる疾患は様々ですが、多くの場合は犬の消化器症状がみられるため、下痢や嘔吐・脱水への対症療法を併せて行います。
また、食事療法で犬が蛋白漏出性腸症の改善がみられる場合もあります。犬の蛋白漏出性腸症の原因を踏まえた上で獣医師と相談し、食事の変更を検討してみてもいいでしょう。
下記は疾患が原因で犬の蛋白漏出性腸症ともに治療する方法を記載します。
- 犬の腸リンパ管拡張症
- 犬の消化管型リンパ腫
- 犬の炎症性腸疾患(IBD)
- 犬の胃腸にできた潰瘍
- 犬の重度の感染症
犬の腸リンパ管拡張症
犬に免疫抑制剤の投与や、低脂肪食による食事療法を行います。
犬の消化管型リンパ腫
犬に抗癌剤の投与を行います。使用する抗癌剤は、副作用や病気の進行度によるため、獣医師とよく相談して決定しましょう。予防することは難しい病気ですが、治療には早期発見が大切です。
犬の炎症性腸疾患(IBD)
軽症の場合、犬に食事療法でコントロールできる場合もあります。ですが蛋白漏出性腸症を起こすほど重症の場合は、併せて抗生剤や消炎剤・免疫抑制剤などを投与します。
犬の胃腸にできた潰瘍
犬に吐き気止めや粘膜保護剤の投与を行います。
犬の重度の感染症
感染症に対して犬に抗生剤の投与を行います。寄生虫感染がある場合には、駆虫薬の投与を行います。
まとめ
犬の蛋白漏出性腸症の原因と治療法について解説いたしました。原因として考えられる疾患が数多くあり、その原因が特定されるまでは、もどかしく感じてしまうかもしれません。犬自身も下痢を繰り返し、栄養不良などで消耗してしまいます。一緒に暮らすご家族にとっても辛い病気です。
犬の蛋白漏出性腸症は、治療のためには原因の特定と、それに対しての適切な治療が大切です。治療を始めても効果が出ていないと感じたら、獣医師に経過を正しく伝え治療方針を相談しましょう。時にはセカンドオピニオンも大切です。