狂犬病とは
狂犬病ウイルス
狂犬病とはラブドウイルス科のリッサウイルス属のひとつである狂犬病ウイルスに感染すると発症する病気です。このウイルスはほぼ全世界に分布しています。またこのウイルスを保持(感染していても発症していない状態)している動物の種類も様々です。体温が気温によって左右されない恒温動物すべてに感染の可能性があります。恒温動物とは哺乳類、鳥類です。特にコウモリについてはウイルスに感染していても発症しない「不顕性感染」となる場合も多く接する際には注意が必要です。
感染経路
主に感染した動物の唾液を経由して、噛まれるなどした傷口から感染します。ウイルスに感染した動物を捕食した場合にも同様です。また、まれに狂犬病患者からの臓器移植によって感染することもあります。
潜伏期間は一カ月から三ヶ月と言われていますが、手指や足など末端部から感染した場合はこれより長くなります。ウイルスは末梢神経から脳神経へと到達することで狂犬病を発症させます。発症した場合の致死率はほぼ100%です。
症状
感染から発症まで、潜伏期間は前述のとおり一カ月から三ヶ月ほどです。発症した場合、発熱、頭痛、倦怠感、筋肉・関節痛、疲労感など、風邪やインフルエンザのような症状がでてきます。続いて食欲不振や嘔吐、咽頭痛、咳があるので本格的な風邪かと勘違いしてしまいます。
しかしこの後、咬傷部分の疼痛や触るとびりびりするなどの知覚異常、筋肉の異常な痙攣などが起こります。次第にうろうろ落ち着きがなくなったり、興奮状態、錯乱状態に陥り、幻覚を見たり咽頭部の痛みにより恐水発作を起こしたりします。最終的には筋肉の過剰な痙攣、こん睡状態、呼吸停止で死に至る恐ろしい病気です。
対策
一番の対策はワクチンの予防接種です。これは感染を予防するものではなく発症を防ぐものになります。また人間に対しては「曝露前ワクチン」や「曝露後ワクチン」といったものの接種で発症を防ぎます。
日本では狂犬病予防法、家畜には家畜伝染病予防法によって、万が一狂犬病が発生した際には自治体に届け出ることが義務付けられています。動物が咬傷事件を起こした場合は捕獲後に2週間の隔離、観察も義務付けられており、その期間中に狂犬病の発症がないことを確認するのです。
海外で万が一動物に噛まれたり引っかかれたりした場合、傷口をよく石鹸で洗い流して医療機関を受診してください。狂犬病は発症してしまうと有効な治療方法がありません。そのため少しでも早く、曝露後ワクチンなどを接種する必要があるのです。
国内における狂犬病ワクチンの接種状況について
日本では狂犬病予防法に基づいて、飼い主に次のことを義務付けています
- 自治体(市町村)に飼い犬の登録を行うこと
- 毎年犬に予防接種を受けさせること
- 飼い犬に登録した鑑札と注射済票をつけること
犬を飼っている方のところへ毎年春になると、市町村の保健所から狂犬病予防接種のお知らせが届くかと思います。毎年のことですのでちょっと億劫に思っている方もいるかもしれませんね。けれどこの注射が狂犬病の予防には最も効果的なのです。
WHOのガイドラインによるとワクチン接種率70%が、狂犬病ウイルス蔓延を防ぐ最低基準とのことです。
平成28年の厚生労働省のデータによると、狂犬病ワクチンの接種率は全国で約71%となっています。一見するとWHOの基準はクリアしているように感じますが、待ってください。これは「全国平均」です。全国の都道府県で約半分が70%に達していないのです。
東北や新潟、長野、静岡、岐阜、愛知、島根、神奈川などは76%以上の接種率となっていますが、県によっては60%を切っているところもあります。
また、厚生労働省のデータではなくペットフード工業会調べによる犬の飼育頭数から推定される予防接種率は、全国平均でも約40%というデータもあるようです。(日本獣医師会)
これでは万が一、国内で狂犬病が発生した場合はその感染を止めることが難しくなってしまいます。
まとめ
日本では何十年も狂犬病の発症例がないから大丈夫!そう思っている方もいらっしゃるでしょう。しかし狂犬病ウイルスはすべての動物が感染する危険があります。日本は渡り鳥も飛来しますし、外国籍の船で不法上陸する犬もいて新潟、北海道などで問題になっています。
島国で検疫による水際対策が取られているから大丈夫、とは言えない状況なのです。恐ろしい病気から愛犬を守るためにも、また身近な人を守るためにも予防接種は必ず行ってくださいね。