犬の脳炎を解説!症状や原因、治療法・予防法まで

犬の脳炎を解説!症状や原因、治療法・予防法まで

犬の脳炎は、人気犬種のチワワやヨークシャテリア、マルチーズなど、小型犬に発生しやすいと言われています。今回は脳炎について、どんな症状なのか、何が原因で、その治療法は何なのか、犬の脳炎に予防法はあるのか、を簡単にまとめてみました。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

犬の脳炎とは

犬の脳炎とは、脳の組織に炎症が起こる病気です。中枢神経である脳と脊髄を覆っている髄膜にも炎症が見られる場合は、髄膜脳炎と呼ばれます。脳炎によって異常が出るのは生命を維持するうえで大きな役割を担っている中枢神経なので、脳炎は発症すると命を落とすリスクも高い危険な病気です。

脳炎には様々な種類があり、種類ごとに原因や発症しやすい犬種が異なります。治療の難しい疾患ではありますが、可能な限り余命を伸ばすためにも闘病中の生活の質を向上させるためにも、動物病院で適切な治療を受けることが大切です。

早期発見のために、愛犬に脳炎を疑われる症状が見られたらすぐに動物病院で診察を受けましょう。

犬の脳炎の症状

ぐったりトイプードル

犬の脳が壊死や炎症を起こすことで、てんかん発作や視力障害、前庭障害(首が傾く、うまく歩けなくなるなど)が起き、重篤化すると意識障害を起こします。

脳炎は比較的若い犬で発症します。気づかないまま放置すると、症状が進行し命を落としてしまうこともあります。

犬の脳炎の余命

若い犬でも発症するリスクがある脳炎ですが、治療の予後が良くないため残念ながら余命は長くはありません。

たとえば脳炎の一種である肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)の場合、炎症が起こっているのが一部分なら2年ほど余命があるケースもありますが、中枢神経の至るところに炎症が及んでいると1週間程度で亡くなってしまうケースも多いようです。

根本的な治療が難しい犬の脳炎は、治療の効果を得られずに重篤化して犬が亡くなってしまうことが少なくありません。たとえ余命がわずかだとしても、残された日々を生きる愛犬の負担を少しでも軽くするために、痛みやてんかんの発作を抑える対症療法を行いつつ、飼い主さんは最期まで優しく寄り添いましょう。

辛い決断にはなるものの、治療で改善する可能性がなく愛犬が激しい苦痛に耐えるだけだという場合には、安楽死という選択肢も用意されています。

犬の脳炎の種類や原因

たおれたままのチワワ

犬の脳炎の原因には大きく2つに分けられます。ウイルスや細菌に感染して発生する感染性のものか、非感染性のものです。犬の脳炎の発生が多いのは非感染性のものです。

小型犬に発生する脳炎も非感染性のものがほとんどです。非感染性のものは、自己免疫疾患だと考えられており、正確な原因がわかっていません。

犬の脳炎の非感染性脳炎は、病態によって以下の3つに分類されます。

  • 肉芽腫性髄膜脳炎(GME)
  • 壊死性髄膜脳炎(NME)
  • 壊死性白質脳炎(NLE)

肉芽腫性髄膜脳炎(GME)

肉芽腫性髄膜脳炎(GME)とは、犬の脳の中に肉芽腫ができて、肉芽腫ができる場所によって症状が異なります。好発犬種はなく、広い範囲の犬種で発生します。その中で、大型犬での発生は少なく、小型犬~中型犬の発生は多いです。

壊死性髄膜脳炎(NME)

壊死性髄膜脳炎(NME)とはパグで多く発生していたため、別名パグ脳炎とも言われています。もちろんパグだけではなく、シーズー、マルチーズ、ポメラニアン、チワワといった犬種でも発症します。犬の大脳皮質が炎症を起こして、脳が壊死していきます。

壊死性白質脳炎(NLE)

壊死性白質脳炎(NLE)は、犬の脳の白質に壊死病巣を形成します。好発犬種は、ヨークシャテリアやチワワが当てはまります。

これら犬の脳炎を鑑別するためには、MRI検査と脳脊髄液検査(CSF検査)が必要です。いずれの検査も犬には全身麻酔が必要となります。

ステロイド反応性髄膜炎・動脈炎(SRMA)

ステロイド反応性髄膜炎・動脈炎(SRMA)になると髄膜で炎症が起きており、頸部の痛みや発熱などの症状が出ます。ステロイド剤による治療が効果的で、再発防止のためにも薬の継続が重要です。

ボクサー、バーニーズ・マウンテンドッグといった若い大型犬や、ビーグルが発症しやすいとされています。

好酸球性髄膜脳炎(EME)

好酸球性髄膜脳炎(EME)は、寄生虫や真菌が原因で発症する比較的珍しい脳炎です。蚊の媒介によって寄生するフィラリアなどが病原体だと言われており、全ての犬に発症の可能性があります。

特に若い犬や雄、犬種でいうとゴールデンレトリバーやロットワイラーといった大型犬に発症のリスクが高いです。

犬の感染性脳炎

ウイルスや細菌、寄生虫などの病原体が原因で発症する脳炎を、感染性脳炎と呼びます。感染症の末期症状として病原体が脳に入り込んでしまっており、治療をしても後遺症が残ったり死亡したりするリスクが高いです。

主に病原体となるのは犬ジステンパーウイルスや狂犬病といったウイルス、各種細菌、クリプトコッカスやトキソプラズマなどの真菌、線虫類などの寄生虫とされています。犬種や年齢を問わず発症の可能性がありますが、ウイルスが原因で発症するのは子犬やワクチン未接種の犬が多いです。

犬の脳炎の診断方法

獣医師にだっこされるマルチーズ

まず獣医師は、犬の臨床症状から脳炎か診断を推測していきます。

突然の犬のてんかん発作、運動障害、眼振、斜けいなど、神経症状が現れた場合はもちろん、脳炎以外の原因も考えられるため診察のとき、症状が犬に現れたときのことを獣医さんに、具体的に説明できるようにしておきましょう。

余裕があれば動画で、犬の様子を撮影しておくことをお勧めします。このとき、犬種や年齢、既往歴、予防歴も獣医師が診断するに当たり大切な情報となります。

犬の検査方法

犬の脳疾患以外の原因が除外されたら、MRI検査(画像検査)、脳脊髄液検査(CSF検査)を受けます。これらの検査結果で犬の脳炎は診断されます。しかしこれら検査は、大学病院や、2次診療病院などでしか受けられません。

かかりつけの病院でこれら検査が難しい場合は、紹介状を書いてもらうか、MRIの施設がある動物病院を受診しましょう。ただしいずれの検査も、犬には全身麻酔が必要なため、高齢犬や麻酔を受けるのが難しい犬の状態であれば、検査を受けずに試験的に治療を開始することもあります。

犬の脳炎の治療法

お薬とジャックラッセルテリア

  • 免疫抑制療法
  • 抗てんかん薬
  • 放射線療法

免疫抑制療法

犬の脳脊髄液検査(CSF検査)により感染性脳炎が否定できれば、免疫抑制療法を行います。犬の脳炎の症状が緩和すれば、初期治療よりもお薬を減らしていくことが出来るかもしれませんが、基本的には長期的な投薬が必要となります。

抗てんかん薬

犬の脳炎にて、てんかん発作がある場合は抗てんかん薬を用います。抗てんかん薬は長期間の服用が必要となります。犬のてんかん発作が増える場合は、お薬の種類や投薬量を増やして治療しないといけない場合もあります。

放射線療法

犬の肉芽腫性髄膜脳炎の場合、免疫抑制療法と合わせて放射線療法を用いることもあります。

犬の脳炎治療の費用

犬の脳炎診断において、MRI検査を受ける場合はMRI検査代で大体5万~10万円かかります。

犬の治療薬としてステロイドのお薬は比較的安価ですが、シクロスポリンなどの免疫抑制剤は少し高めです。お薬の内容や種類は、犬の体格によって金額は前後しますが、いずれにしても、お薬は長期間飲ませないといけないので、1か月のお薬代だけでも最低5000円はかかると思います。

もちろん治療に合わせて診察や検査も必要になりますので、その費用も加わることを考えると、初期治療費は1か月に2万~3万円はかかるかもしれません。

犬の脳炎治療は治るのか

犬の壊死性髄膜脳炎および壊死性白質脳炎の場合は、有効な治療法はなく、現状では犬に免疫抑制療法と抗てんかん薬での、症状をコントロールする治療維持が一般的です。パグの場合は治療への反応は乏しく、予後もよくありません。

犬の肉芽腫性髄膜脳炎は、他の腫瘍や炎症性疾患との鑑別が難しいため、犬に他の病気がなければ治療に対しての経過は良好だといえます。最終的には休薬が、犬の脳炎の治療目標です。

犬の脳炎の予防法

撫でられる犬

犬の脳炎は現在のところ原因が、はっきりとわかっていないために予防法はありません。ただし早期発見をすることで、脳炎の症状が進行するまえに治療を開始することができます。早期診断するためにも、以下、犬に症状がみられた場合は診察を受けましょう。

  • 発作を起こしたことがある
  • うまく立てない、歩けないことがある
  • 物にぶつかりやすい
  • 突然、攻撃的になることがある(自傷行為など)
  • 首が傾いている

これらの症状は、もちろん脳炎以外の犬の病気でみられることがあるため、該当する場合は診察を受けて原因を調べることをお勧めします。

また原因が明らかではない非感染性脳炎は予防の手立てがない一方で、感染性脳炎の一種である犬ジステンパーウイルスが原因の脳炎はワクチン接種による予防が可能です。かかりつけの獣医師と相談のうえ、愛犬に定期的に混合ワクチンを接種させるようにしましょう。

犬の脳炎は若い犬でも発症します。犬の年齢に安心せずに、普段から犬の行動の変化に気づけるよう、よく観察してあげることが大切です。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    女性 もふころ

    脳炎の検査だけでもだいぶ高額なんですね。すでに心臓病のお薬で月1万かかっているので大きいです。
    心構えが欲しかったので、検査前にどのくらいかかるものなのか知ることができてよかったです。
  • 投稿者

    50代以上 女性 ダイヤ

    愛犬2歳半のトイプードルが脳炎と診断されました。入院、全身麻酔、MRI 、投薬、3ヶ月後に再びMRIを行います。原因は解りませんが、新型コロナ関係でドックランなど、人やワンコとのふれあいはかなり減りました。極度にさみしがりやです。二頭飼いしてあげれば良かったのかしらと思います。短命になるけど、いっぱい愛してあげようと思います。食事はグレインフリーのフードにかえてみました。一日でも長くいてもらいたいと願います。
  • 投稿者

    女性 ポメ三姉妹のパパです

    初めまして。ポメ三姉妹のパパと言います。ダイヤさん、コメントを拝見させて頂きました。とても辛い病気で悲しいですね。お気持ち本当に理解出来ます。頑張って下さいね。
  • 投稿者

    30代 女性 匿名

    朝方はじめてけいれんおこし5分10分間隔でおき救急や片っ端から電話するもつながらずけいれんがおさまらなくなりかかりつけが30分かかるため診察開始時間1時間前でしたがつれていきすぐ処置していただき今入院してます。意識は戻ってはくれてましたがまだもうろうとしています。今まで数匹みおくってきましたがけいれんは初めてで本当につらいです。治療費の心配もありますが苦しまずにすこしでもよくならないか祈ることしかできずつらいです。
  • 投稿者

    女性 匿名

    数日前に壊死性髄膜脳炎と診断された1歳のチワワのママです。
    発作を起こしたので病院へ連れて行きました。最初はてんかん疑いでしたが服薬しても発作が減らないのでMRIを撮ったところそのように診断を受けました。
    MRIは6万円、麻酔が2万円、その他エコー、血液検査、内服薬もろもろで10万円強かかりました。ここ2ヶ月間で総額20万円程かかっています。どなたかの参考になればと思います。
    正直まだ気持ちの整理ができていません…
    発作も日に日に酷くなるのでしんどいです。
  • 投稿者

    40代 女性 匿名

    9歳の女の子のポメラニアンで、ウイルス性脳炎と診断されました
    検査のためMRI CT 脳髄検査で20万ちょっとかかりました
    その後、ステロイドやけいれんを抑える薬などで毎月5000~10000円費用が掛かっています
    本日、脳炎と診断されて初めて痙攣がありました
    深夜の救急病院へ走り、点滴をしてもらい 約20000円
    愛犬が病気になると、人間以上にお金がかかりますが、大切な家族にお金を惜しみたくない、お金で愛犬の元気が買えるのであればという気持ちで治療をしています。
    ちょっとでも様子が違うと感じたら、すぐに病院へ行くことをお勧めします
    愛犬の元気がお金で買えるのであれば安いものです。
  • 投稿者

    40代 女性 匿名

    脳炎と診断されて1年10カ月になります。最初の投薬はステロイド、シクロスポリンなどでした。一度は回復したかのように元気になり、ステロイドを飲まなくてもよくなりました。シクロスポリンだけ続けていたのですが、発症から1年2カ月が経ったころに再発の症状がでました。今は定期的に抗がん剤の注射をしていただき、シクロスポリン、ステロイドなどを服用しています。抗がん剤の注射は最初は1日2回を2日続けることを3週間ごとに4回、4週間あけてを4回…間隔を長くしていくんだそうです。ステロイドを減らすとふらつきがでてしまい、なかなか順調には減らせません。治療費はかなりかかりますが、少しでも長く一緒にいるためにも頑張っていきたいと思ってます。
  • 投稿者

    40代 女性 匿名

    8歳トイプードルのママです。5歳の時に初めて痙攣を起こし、1年に1回程度だった痙攣が今では月1回になりました。大きな発作がこれまで2回あり、MRI検査もしてもらった結果 脳炎と診断され、投薬治療を続けながら今に至っています。今年起きた発作の予後が思った以上に良くなく、一時は死んでしまうのではないか…と、愛犬の顔を見るたび涙していましたが(旋回・発作・視力障害が続きました)時間はかかりましたが、奇跡的に普通の生活ができるほどまで落ち着きました。出来るだけお薬の量を減らすため状態を見ながら調整してもらっていますが、減薬すると発作が出たり…なかなか難しいです。初めて痙攣を起こしてから3年経過しました。発作の頻度は横ばい状態ですが、視力障害はここ1年の間にかなり進みました。日によって差があり、見えていない時はぶつかったりつますいたりするので、部屋のディスプレイを変えたり、ぶつかり防止の赤ちゃん用のスポンジ材をコーナーに貼り付けたり。愛犬仕様の部屋になっています。寂しがり屋な上に見えない…となるとかなり不安だと思い、出来るだけ家族が側にいてあげられるように努力しています。ストレスをためないように、お散歩も1日4回しています(外でないと排泄しないということもあります)治療費もかなりかかり、フードもアレルゲンフリーに替え、こちらも気力体力保つのに大変ですが。すべては愛犬のため!1日でも長く!1日でも快適に楽しく過ごしていけるように!!頑張ります。同じような状況の方もいらっしゃると思います。お互いがんばりましょう!
  • 投稿者

    20代 女性 匿名

    1年7ヶ月前に、両目失明してしまい、MRIの検査は異常なかったのですが髄液の検査で少し炎症がみられるとのことで、恐らく脳炎だろうと診断されました。それからずっとステロイドを飲んでいます。大きな発作がこれまでに2回ありました。酷い眼振と身体が凄くつっぱってしまう発作です。苦しそうで発作がでたときは本当に見ているのが辛かったです。最近は大きな発作はありません。たまに目の瞳孔の大きさが左右違うことがあり、これも脳炎の発作のひとつだと言われました。そして脳炎診断から半年後に糖尿病にもなってしまいました。ステロイドの副作用なのかは、分かりません。私の至らないせいで糖尿病にしてしまったのかもわかりません。なので今はステロイドの薬とインスリンも毎日2回打っています。幸い保険に入っていたので負担は軽減されていますが、やはりお金がかかります。でも出来ることならなんでもしてあげたい。少しでも長く一緒にいたいと思うからです。目は見えないし薬は沢山だけど元気に散歩をして、今のところ元気にしています。ただ、病気発覚後から4キロほど痩せてしまいました。これからも元気でいてほしいものです。
  • 投稿者

    女性 みる

    我が家のMダックスは脳炎になりました。
    壊死性ではなかったのですがMRIでおよそ10万円。
    その後はステロイド剤投薬、抗てんかん薬投薬、免疫抑制剤投薬で月に12万円ほど、幸い70%の保険に入っていたので全額ではないですが、回数制限もあり計算しながらになるので月に9万円弱はかかりました。
    しかし発症後半年で薬代は月に(保険利用で)3.5万円くらいになりました。
    その他定期検査やメディカルトリミングで別途かかりますが、ひと安心しています。
    行動には特に問題も認められず、元気にしています。
    初期はステロイド1日2錠、発作止め1日3錠、免疫抑制剤mg2種を1日各2錠計4錠飲んでいたのですが、今では、朝は免疫抑制剤1錠、発作止め1/2錠、夜は発作止め1/2錠になっています。
    このまま元気でいてくれれば、と思います。
    初期はやはり費用的にも負担は大きいです。
    我が家の場合は徐々に減ってくれたので少し楽にはなりました。
    すべてのわんちゃんが元気で健やかに過ごせるよう毎日祈っています。
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