ワクチン接種を拒否する飼い主の増加
「YES! ペットのワクチン接種はするべきです。NO! ワクチン接種で自閉症は起こりません。」
これはイギリスの獣医師協会がワクチン接種推進のためにペットの飼い主に向けて発したメッセージです。
イギリスやアメリカでは「ワクチン接種は自閉症を引き起こす」という理由で、犬にワクチン接種をしない人の増加が問題になっています。
ペットの感染症の流行は飼い主の家庭だけの問題ではなく、公衆衛生の問題でもあるので、現状に危機感を募らせた獣医師協会がこのようなメッセージを発信しました。
アメリカでも、多くの獣医師が同様の情報を発信しています。
ワクチンと自閉症の関連は科学的に否定されている
このようなワクチン接種への拒否理論はどこから出てきたものなのでしょうか?
根拠になっていると考えられるのは、1998年にイギリスの研究者が発表した「麻疹および風疹のワクチンが子供の自閉症に関連する」という理論です。しかしこの研究は、その後何度も反証され間違いであることが判っています。
人間については、自閉症はワクチン接種では引き起こされないと証明されており、犬を含めた動物に関しても、自閉症とワクチンの関連性を示す信頼できる科学的な証拠はありません。
感染した場合のリスクを考えよう
ワクチンには法律で接種が義務付けられているもの、飼い主の任意で接種するものがあります。任意のワクチンでもコアワクチンと呼ばれるものは、いったん感染すると症状が重く致死率の高いものです。
個々の犬に対しても、社会全体にとっても、ワクチンを接種することで病気から保護されるというメリットが副作用などのデメリットを大きく上回っていると考えられるものです。
ワクチン接種をしていない犬が増えて感染症が大流行した場合に、愛犬を守る最良の方法はワクチンですし、もしも接種をしていなければ感染して命を落としたり後遺症が残ったりする危険にさらされることになります。
特に狂犬病のワクチン接種は法律で定められているものであり、飼い主が勝手に拒否するべきものではありません。
日本は狂犬病の清浄国と言っても、外国からの船に外来種の生物が入り込んでいたりして狂犬病が入ってくる可能性は大いにあります。
そんな万が一の時に、愛犬には感染の危険がないと証明できる唯一の方法はワクチン接種だと心しておきたいものです。
不安なことは積極的に相談しよう
自閉症とは関連がないとは言え、ワクチン接種の副作用というのは確かにあります。けれどもその多くはかかりつけの獣医さんと相談することで解決できることがほとんどです。
その時の体調によって接種を延期したり、以前にアレルギー反応を起こしたワクチンに関しては別のメーカーのものにしてもらう、抗体価検査をする、などの対応が可能ですので、心配なことは積極的に獣医さんに相談して大切な愛犬を病気から守りましょう。
我が家の愛犬も、ワクチン接種後に発熱したことがあり、それ以降は接種前の抗ヒスタミン剤の投与をお願いしています。また何か反応が出た時に備えて、ワクチン接種は午前中の早い時間にすることも意識しています。
まとめ
犬のワクチン接種をしない人の増加に危機感を持ったイギリスの獣医師協会が「ワクチン接種は犬の自閉症を引き起こさない」というメッセージを出したことをご紹介しました。
人間の子供のワクチン接種を拒否する親が増えたことで、感染症の流行が問題視されていますが、ペットの世界でも同じことが起こっています。
致死率の高い重篤な病気から愛犬を守るために、獣医さんとの連携を取りながら安全にワクチン接種をしたいですね。
《参考》
http://time.com/5258627/dogs-vaccination-autism/