「慣れること」は犬の問題行動の抑制になる

「慣れること」は犬の問題行動の抑制になる

犬は、何かに反応して嫌がる、怖がる、吠える、噛むなどの行動を取ることがあります。こうした行動は感情面からくるもので、反応を起こした対象に慣れさせることで、こうした行動を修正することができます。今回は、慣れについて考えてみます。

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記事の提供

【Healthy Dog Ownership 犬の行動心理カウンセリング ドッグビヘイビアリスト】DBCA認定ドッグビヘイビアリスト・JCSA認定ドッグトレーナー。 JDBA日本ドッグビヘイビアリスト協会理事長。ISAP国際アニマルプロフェッショナル協会正会員(MISAP)。心理学・動物行動学が専門。重度な問題行動のリハビリも行う。
《公式HP》Healthy Dog Ownership

馴化(慣れること)とは

興味を示している犬

心理学では、「慣れる」ことを馴化(Habituation)と言います。これは、ある刺激が繰り返し提示されることで、その刺激に対しての反応が徐々になくなっていく現象を指します。この馴化は、人だけではなく、ほぼ全ての動物に起こる現象として知られています。

人で例えてみましょう。赤ちゃんに目新しい物を見せると、赤ちゃんは視線を物に移します。こうした行動を定位反応と言います。この反応が現れたら、物を隠して、再度、赤ちゃんに同じものを見せます。すると同様に定位反応が起こります。しかし、これを繰り返していると、赤ちゃんは、この物を見なくなります。定位反応がなくなるわけです。これは、この目新しい物が、目新しくなくなったことを意味し、こうした反応がなくなることを馴化と言います。

また、別の例えでは、腕時計やメガネを初めて着けた時に、かなりの違和感を感じることがありますが、徐々に違和感は消えて装着していることすら忘れるほどに感じなくなります。つけ心地に慣れた後、時計やメガネを外して翌日にまたつけると、まだ多少の違和感があるかもしれません。しかし、これも繰り返していると気にならなくなります。これも馴化です。この場合、装着したのは自分の意思なので、馴化は早く進みます。

犬の馴化

首輪を咥える犬

馴化は主に、有害でも無害でもない刺激に対して起こりやすいものです。例えば、街の音、匂い、空間などがこれにあたります。

家の周りや街に対して馴化させることで、こうした環境を怖がらなくなるようになります。つまり、家の周りや、街の音に繰り返し晒すことで馴化ができます。しかし、すでに極端に怖がっている場合では、こうした環境からの刺激が強すぎて、反応が大きくなっている状態です。この場合では、刺激に晒すことでトラウマを作ることにもなるので注意が必要です。

首輪やハーネスに対しても馴化が起こります。子犬に初めて首輪やハーネスをつけると、大概は嫌がります。しかし、そのまま着けたままにしておくと、装着している刺激が無害だということがわかり、慣れていきます。この場合でも過度に嫌がっている場合では馴化は進まず、この首輪やハーネスが嫌いになり、着けようとすると抵抗し噛んだりもします。

この通り、馴化は刺激に晒し続けることで慣れることから、慣れた結果、ネガティブな印象を抱いたまま、慣れることも稀にあります。この場合では、「まぁ、嫌だけど仕方ないかぁ」のような感じでしょうか。

馴化の一歩先をいく社会化

子犬

馴化の難点は、極端に嫌がっている場合に通用しないことです。また、馴化は慣れている期間が短期間になりがちなので、再び抵抗感が戻ってしまうことがあります。このように馴化だけでは不十分な場合は、社会化のプロセスをとる必要があります。

例えば、首輪やハーネスを付けた後に、大好きなオヤツを数回与え、続いて好きなオモチャで遊ばせるなどの報酬を対に提示します。数日〜数週間かけて続けていくと、嫌なもの(首輪やハーネス)が、好きなものに変わっていきます。この場合では、首輪やハーネスを付けた違和感に慣れ(馴化)、その後に楽しく嬉しい出来事が続くことになるので、首輪やハーネスを付けることに楽しみや期待感を抱く(社会化)ようになります。

ただ単に慣れる(馴化)よりも、嬉しいや、楽しいと言った感情が生まれる(社会化)の方が、その効果は長く続きます。これが社会化プロセスのメリットといえます。

まとめ

何かを見ている犬

ここでは、首輪やハーネスなどを例に挙げましたが、対象はこれらに限りません。犬が新奇な刺激に遭遇し、嫌がるなどの反応がある場合は、馴化や社会化をさせることで慣れていきます。ここで社会化までできれば、その刺激をポジティブに受け入れることもできるようになります。しかし、これらの馴化や社会化でのプロセスは、トラウマには通用しません。

強烈なトラウマに対しては、系統的脱感作という別の方法を取るのが主流です。犬が子犬のうちであれば、トラウマはあまりないので社会化を行い、色々な物や事柄に慣れさせおくことが多くの問題行動の予防になります。

また、様々な状況において、犬が怖がることなく、楽しく過ごすためには、社会化をしっかりと行う必要があります。これは多くの科学者や専門家が指摘している通りです。皆様の愛犬が笑顔で過ごせるようになるためには、社会化が最強のツールになることでしょう。

《参考》
Rachael Groom-Marper(2015). The difference between Socialisation and Habituation,Chester Mason Ltd.,UK.

Menna Field RVN MBVNA(2016).Puppy Socialisation and Habituation,St Anne's Veterinary Group,UK.

SOCIALISATION / HABITUATION,A.P.D.T.UK,

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