犬の視覚は人と少し違う
夢中になってテレビを見ている犬は、画面の犬をちゃんと犬だと思っているのでしょうか。
犬は、日中動いていない物体を見る力、いわゆる視力はそれほど発達していません。人であればかなりの近視で、0.2~0.3程度しかないとされています。その一方、動くものをとらえる動体視力は大変優れていて、1㎞先の小動物も認識できるほどだなのだそうです。これだけ動体視力がよいと、テレビにうつる映像は犬にしてみればコマごとに止まる、ギクシャクとしたぎこちない動きに見えると考える研究者もいます。
犬は画像にうつる犬を区別できているの?
テレビの中で鳴いたり吠えていたりすれば、それが犬であることはわかりやすいでしょうが、音無しの画像だけだったらどうでしょう。匂いに頼れない中で、犬は画像にうつる犬を同じ「犬」として認識できるのでしょうか。
2013年に発表された研究論文(※)で、犬は写真(静止画)だけでも犬を区別できるとの報告があります。そもそも犬は、家畜化された哺乳類の中でも人為的につくられた品種が非常に多い動物で、現在ゆうに300以上の犬種が存在します。よって外見もさまざまあります。チワワとグレートデンが学術的には同じ犬に属するなんて、野生動物ではまず考えられないことです。それだけ外見にバリエーションがあるにも関わらず、散歩などで実際に合う他の犬を、「あ、こいつ犬ね」とわかるのは、主に犬が嗅覚や音声で判断しているからでしょう。
しかし、写真では匂いはあてになりません。音もしないので判断材料は静止画像だけとなります。
この実験では、モニターを使ったテストができるよう訓練された、9匹の犬が使われました。その犬たちの目の前に、人間を含む他の哺乳類動物とさまざまな種類(雑種含め)の犬の写真を見せたところ、なんとその中からちゃんと犬を選んだのだそうです。しかも、その写真はすべて頭部だけが写ったもの。つまり、犬は顔写真だけなのに、犬種に関わらず、犬と他の動物とをきちんと区別できたということなのです。
※https://link.springer.com/article/10.1007/s10071-013-0600-8
テレビの中の犬に対する反応
というわけで、犬はテレビの中の犬を「犬」として視覚的にちゃんと認識しているらしいということがわかりました。
ただし、その犬に対する反応のしかたは、その子の性格によって変わるようです。
縄張り意識の強い子は、テレビの中の犬も許さないでしょう。相手が吠えたりすれば、自分も興奮して吠え返すかもしれません。あるいは、追い出そうと思ってテレビの裏まで調べにいく子もいるでしょう。好奇心が強ければ、興味津々でモニターの犬を目で追うことでしょう。
でも他のイヌに関心のないタイプの子は、あれはテレビの中だけのこと、と思ってちらっと見ただけで興味がなくなるかもしれません。あるいはもしかしたら、現実世界とテレビの中の世界をちゃんと区別している可能性もあります。
面白いのは、嗅覚の動物である犬が、近眼にも関わらず、わりと視覚からの情報でも判断しているということ。これは、犬が家畜化されて人とコミュニケーションをとるうえで、例えば飼い主の表情を読み取るなどが必要になり、徐々に培われていったものだと考えられています。
まとめ
犬がどの程度テレビの内容まで理解しているかはわかりませんが(おそらく画像を追っているだけで当然のことながら詳しい内容はわかっていないと思います)、テレビを楽しんでいるならば、もっと一緒に見たいと思ってしまいますよね。
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50代以上 女性 おかあ