ドッグショーとは
その犬種がどれだけ定められた犬種標準に近いかということを競うものです。その犬種本来の美しさが分かることから、時にビューティーショーとも言われることがあります。
犬種標準に近いかということを追及しているので、避妊手術、去勢手術をした犬は出ることができません。噛み癖のある犬、発情犬、皮膚病・感染症のある犬は出陳できません。
鈴木桂子
ドッグショーの目的は「純粋犬種を守り、後世に伝えていくこと」です。ドッグショーは、純粋犬種の保護、育成、発展、普及のために開催されています。純粋犬種の優れた血統を後世に引き継ぎ、繁殖の指針とするために行われます。
そして、それらに真摯に取り組んでいるブリーダーを評価し賞賛する場でもあります。
飼い主さん側の準備
団体の会員になる
まず、飼い主さんがJKC(一般社団法人ジャパンケネルクラブ)の会員になってないといけません。JKCの会員でないと血統書上の愛犬の所有者にはなれません。また、ショーに申し込む上でも会員である必要があります。
日本犬保存会も同じです。日本犬保存会に入会し、血統書の所有者を現在の飼い主に変更しておかなくてはなりません。入会したら、定められた期日までに出陳申し込みとお金を払えば愛犬を出すことができます。
JKCに登録された血統書か
愛犬に関してはJKCに登録してある血統書を持つ純血種でなくてはなりません。日本犬保存会も同じで、日本犬保存会に登録してある血統書を持つ日本犬でなくてはいけません。
JKCないし、日本犬保存会が認めている畜犬団体が発行している血統書を持っている場合でも、出陳が認められることがあります。
ハンドリングをどうするか
ショーのリングで愛犬をハンドリングしてくれるハンドラーを依頼するか、飼い主自身がハンドリングの勉強をしておく必要があります。日本犬保存会では、会員かその家族が犬を引くことと定められています。
ドッグショーの「ハンドラー」の種類
- オーナーハンドラー
- 出陳する犬のオーナー自身がハンドリングすること。飼い主さんなので犬とのコミュニケーションも良くなります。
- ブリーダーハンドラー
- 繁殖した犬を自ら出陣し、ハンドリングをすること。オーナーでもあります。
- プロフェッショナルハンドラー
- ショーでハンドリングをするプロ。オーナーから犬を預かり、ショーの結果次第で報酬を受け取ります。預かる期間は短期・長期とさまざまです。
- <マルチーズ>
- マルチーズは全身の毛を地面に付くまで長く伸ばして、頭は二つに結わきます。
- <ヨークシャーテリア>
- ヨークシャーテリアも全身の毛を地面に付くまで長く伸ばして、頭は一つに結わき、性別関係なく赤いリボンを付けます。
- <シーズー>
- シーズーも同じように長く伸ばして、頭の毛を結わきますが、扇形に整えます。
- <大型犬>
- 秋田犬
- <中型犬>
- 紀州犬・四国犬(土佐闘犬とは別種)・甲斐犬・北海道犬
- <小型犬>
- 柴犬
※日本スピッツや、狆、日本テリアは入りません。 - 頭部の構造
- 噛みあわせ
- 耳の付き方
- 首の太さや長さ
- 背中の状態
- 四肢の状態や角度
- 尾の付き方や形
- 全身の筋肉状態
- 被毛の状態
- 睾丸の確認
- 噛みあわせ
- 歯の数
- 舌の検査
- 睾丸検査
- 体高検査
- 出陣する犬に接触しない
- 審査間近のハンドラーや犬に声をかけたり、触れたりすることはやめましょう。出陳犬とそのハンドラーは、審査前にコンディションを整えて気持ちを高めていますので、静かに見守ることがマナーです。
- 商用目的の写真・ビデオ撮影はNG
- 見学者が個人的に使用する限りは、ショーの模様を写真やビデオで撮影することは可能ですが、主催者や出陳者、ハンドラーなどの許可なく商用目的として写真及びビデオ撮影することはNGです。(主催者は撮影機器または記録されたフィルム、データを没収する権限があります)
- ストロボ(フラッシュ)撮影NG
- 犬の正面からストロボを使用して撮影することはNGです。審査中にカメラのストロボが光ると、犬によっては気をとられ集中力を欠いてしまうなど、審査に支障をきたすことがあります。
- 参加者やオーナーに許可を取る
- リングの外側(審査中のリング内の撮影は一切禁止)で特定の犬の写真を撮る際は、参加者や犬の飼い主などにひとこと「写真を撮らせてもらってもいいですか」と声をかけるようにしましょう。 また、撮影した写真や動画をSNSに掲載する際には、そこに写っている方や犬の所有者の了解をとるのもマナーです。
- 愛犬同伴の際のマナー
- 愛犬が他の犬と仲良くするのが苦手や、飼い主の指示で落ち着くことができない場合は、連れて行くのを控えましょう。 また、会場内は必ずリードを付け、粗相した際の片付けグッズや、マナーベルトなどを着用すると安心です。 ヒート中やワクチン未接種の場合も同伴は見送りましょう。
鈴木桂子
ドッグショーに出陳する為に、各地のショーに参加することがあります。ハンドラーは基本的にJKCクラブ会員ならびにその家族に限られますが、最近はオーナーみずからラウンドするオーナーハンドラーから、専門のプロのハンドラーに依頼するオーナーが増えています。
ショーに出陳するには、愛犬のショーマナーのしつけも必要です。時間的にも金銭的にも余裕が必要です。
愛犬の準備
JKCのショーではJKCが認めている純血種となります。その際、トリミングの必要のある犬種では、犬種標準に沿ったスタイルを求められます。
プードル種の規定
プードル種でいえば、子犬時代は「パピークリップ」、成犬になれば「セカンドパピークリップ、コンチネンタルクリップ、イングリッシュサドルクリップ」でしかショーに出せません。
※国際畜犬連盟(FCI)ではトアレットモダンクリップも認められている
その他トリミングの規定
この毛を伸ばすには、長い時間がかかりお手入れも大変です。毎日ブラッシングし、毛を保護するために専用の紙で巻きます。その分け目は一日二回変えなくてはいけません。
日本犬保存会
日本犬保存会の展覧会は、国の天然記念物に指定されている日本犬6種のためのショーです。
審査内容
ショーや展覧会の審査では、歯や噛みあわせ、オスならば睾丸が二つ降りているかどうか、骨格、関節の状態、歩き方、立ち姿を見るので、知らない人にどこを触られても、口を開けられても大人しくさせておく必要もありますし、正しい美しい立ち姿でじっとさせておく必要もあります。
また、他の犬に際限なく吠えたり、襲いかかったり、審査員に襲いかかったりする犬は、失格になることもあります。ただし、日本犬ではそれも性格の一つ『悍威(かんい)』のあらわれとして良しとする場合があります。
鈴木桂子
基本的に犬は知らない人に身体を触られるのを嫌います。ですが、ドッグショーでは審査員に口を開けて見せさせ、噛み合わせを見るために口元を触られます。また、筋肉や骨格を調べるために体を触診されます。これに動ぜず対応できるマナーを覚えさせなくてはいけません。
ショーのリンク内では、他の犬と並んで同時に審査されるため、他の犬に気を取られたり攻撃的になったりしてはいけません。ショーに出すには美しく立つ姿、走る姿を覚えさせる必要があり、生後3~4か月あたりから訓練を始めます。しっかりとした骨格と筋肉のために運動量も必要になります。
ジャパンケネルクラブ(JKC)のショー
JKCのショーでは、『タイプ』『サウンドネス』『クオリティ』『バランス』『コンディション』『キャラクター』の六つを審査員は見ています。
タイプ
犬種ごとの特色です。つまり犬種標準に定められた規定に近ければ近いほど優れたタイプということになります。その犬種に求めれる外貌、体形、性質など基本的な特徴をもっているか等をチェックします
サウンドネス
精神的・肉体的な健全性です。JKCではショーに出陳する犬がすべて家庭犬としてふさわしい性格を要求しています。つまり、審査員が触診する時に過剰におびえたり、攻撃的であってはならないということです。また、外見も健全でなくてはなりません。
以下の項目を視診や触診で審査します。
クオリティ
クオリティとは、その犬の質の事です。犬種としての充実度や洗練度を審査されます。犬種らしい魅力が一層発揮されているかどうか、その犬質を見極めます。
バランス
バランスは、一部分が優れていることより、全体の調和が取れているかが重要な審査ポイントとなります。
コンディション
コンディションは、犬の健康状態を指します。毛づや、肉付き、目の輝きや動きです。また精神状態も合わせて審査対象となります。ショー当日に向けいかに状態を整えてきたかが重要です。
キャラクター
犬が何かきらりと光る、人を惹き付ける魅力があるかも大事な審査ポイントです。
日本犬保存会の展覧会
日本犬保存会では、本質、外貌を見ます。本質は悍威に富み良性にして素朴の感があり、感覚鋭敏となります。つまり、威厳があってキリッとしているということです。日本犬にとっては最も重要な本質です。
また、良性とあるのは、華やかな犬ではなく、素朴で地味な中に品位のある味わいのある犬を指します。オスはオスらしく、メスはメスらしくという、オスメスの性の特徴をとても大事にしています。過敏すぎてはいけないのですが、落ち着いた中に鋭敏な感覚があり、かつ警戒心を持っているというものです。
外貌は、オスは体高と体長の比が『100対110』で、メスは体高に対して体長がオスに比べるとやや長めになります。後は大きさで体高の上限下限が決まっています。
毛色は赤、黒、虎、胡麻、白とありますが、柴犬と四国犬の白は好ましくないとされ、減点の対象となります。
下記の項目を視診や触診で審査します。
ハンドラーは犬後方に立ち、背線から45度位の角度でリードを保持、三角歩行で犬の歩様を審査されます。
ドッグショーを見学する
ドッグショーに出陳するのはちょっとハードルは高いかもしれませんが、ショー会場に足を運んでみると、楽しみがたくさんあります。
審査以外の楽しみ方
出陣された犬を見ること以外にも、アジリティーやトリミングの競技会なども同時開催されたり、企業の展示ブースも出店しています。
ショー会場でしか買えないグッズ(服やおやつ、プロ仕様のトリミング用品等々)が人気のようです。
ドッグショーを見学する際のマナー
ドッグショーにはたくさんの人と犬たちが集まります。トラブルにならないよう、マナーを守りましょう。
まとめ
ドッグショーに出場するための最低限の事を紹介しました。ショーによる犬種標準を知ると愛犬の事がもっと好きになると思います。
ドッグショーは犬同伴可能なので、飼い主やブリーダー、犬同士の交流も楽しみの一つです。また、これから犬を飼いたいと思われている方は、何度かドッグショーに足を運ぶことで、子犬選びに役立つかもしれません。
鈴木桂子
ドッグショーに出す犬は、その犬種の「スタンダード」にいかに近いかを審査されるので、飼い主が充分に「スタンダード」を理解している必要があります。自分の愛犬を客観的に見れ、入賞した犬を称賛する誠実さが必要です。そして足りない部分を補う努力が求められます。
「見せ方」を知っているプロのハンドラーに依頼するのも一つの在り方ですが、飼い主自らが愛犬を出陳するのは大きな喜びです。勝ち負けを競うのではなく、犬種としての美を紹介できる喜びをもって、積極的にショーに参加していただければと思います。
ドッグショー会場へは愛犬を連れて行くこともできます。(ただし、ヒート中のメスや攻撃的な犬、病気の犬は同伴できません)これから犬を飼われる方は、ぜひ一度見学にいらしてください。良い犬を見ることは喜びですし、犬を見る目を養うことが、無駄な繁殖を減らすことにもなります。