犬に罰を使ってしつけると誤解が生じる
愛犬家の皆さんは、ワンちゃんをしつける時に、罰を使ってしつけるのか、褒めてしつけるのか、意見の分かれるところだと思いますが、罰を使うよりも、褒めてしつける方が良い理由についてご紹介しましょう。
ワンちゃんに対して、罰を使ってしつけようとすると、ワンちゃんが飼い主さんの意図を理解できず、誤解が生じる可能性があります。
では、誤解の生じるロジックをトイレのしつけの例でご説明しましょう。
まず、ワンちゃんが、普段トイレとされている場所以外で排泄してしまった場合をイメージしてみてください。
ワンちゃんがトイレではない場所にオシッコを始めたのを見た飼い主さんは、慌てて「ダメダメッ!」と声をあげて叱ります。あるいは、悪いことをしたことをワンちゃんに教えようと、ワンちゃんの首を押さえつけ、鼻先をオシッコに近づけて「ここにしちゃダメだよ!」と言って、頭や背中を叩いたりします。これが、罰を使ってしつける方法です。
この場合、飼い主さんとしては、ワンちゃんに対して、やってはいけないことを示して分かりやすく罰し、タイミング良くしっかりしつけができたと思いがちですが、それは勘違いであることが多いのです。
犬は、自分の行動の結果、嫌なことが起こると、その行動はしなくなります。この場合の行動は、オシッコをすることで叱られたので、「オシッコをすると嫌なことが起こる」と理解します。しかし、オシッコをすることが悪いことだとは思いませんし、オシッコをすることは止められないので、嫌なことが起こらないように、飼い主さんの目の届かない場所で、隠れてするようになります。
また、ワンちゃんには、「してはいけない場所でオシッコする」原因行動があって、「叱られる」嫌な結果となったというふうに、結びつけられず、飼い主さんの意図していることが全く伝わらないことが多いのです。その場合は、「人は、こちらが何もしていないのに、急に怒り出す怖い動物だ」という考えが植え付けられます。このパターンは、子犬が人を恐れるようになる原因にもなります。
時には、プロのトレーナーが罰を使ったトレーニングをすることはありますが、プロは、様々な制約条件がクリアできて結果が出ることを認識して罰をうまく使っているのであって、素人に使える技ではありません。
では次に、その罰を使ったしつけをする場合の「条件」を挙げてみましょう。
罰を使った犬のしつけの条件は厳しい
罰を使った犬のしつけの条件は、素人がクリアするにはハードルが高いと思われます。下記にそのレベルがわかる事例を8個挙げてみました。
①止めさせたい行動を見て、瞬時に罰を与えなければならない。
ワンちゃんに、止めさせたい行動と罰を一緒に与えなければ、それがいけないことだと理解させられません。ということは、24時間の監視が必要になります。
②止めさせたい行動をした時には、いつも罰を与えなければならない。
それがいけないことだと教えるには、同じ行動をした場合は、見逃さず罰を与えなければ、してはいけないことだと理解させられません。ということは、罰があったりなかったりでは、犬はしてはいけないことを理解できず、戸惑いますので、こちらも24時間の監視が必要になります。
③与える罰の適切な強度の見極めが難しい。
弱すぎると罰としての効果がなく、強すぎると恐怖感を植え付けてしまいます。
④罰を何度も与えることで、身体への悪影響がある場合が想定される。
一般に使われ勝ちな、チョークチェーンなどは、素人が使うと気管障害を与える危険が否めません。
⑤罰を与えられることに恐怖を覚えると、似たようなシチュエーションを怖がる。
棒などで叩かれる罰のトラウマは、細い棒を見ると怖がったり、恐怖感から攻撃的な反応をするようになることにもつながります。
⑥罰を与えられる恐怖感から、攻撃行動が出やすくなってしまう可能性がある。
罰を与えられることへの防御本能から、攻撃的な行動をとるようになったり、元々気の荒い場合は攻撃性が増す可能性があります。
⑦罰の度合いがエスカレートする。
これは罰を与える側の問題ですが、罰の度合いがエスカレートして制御不能になる場合があります。罰を与えることによってストレス発散し、自分の怒りが収まることに快感を覚える危険があります。
⑧罰を与える=理想的な行動に繋がる、ではない。
罰を与えることでは、飼い主さんの理想行動は伝わりません。ワンちゃんにやってほしい行動は、罰を与えることでは伝わりません。理想の行動を、根気強く、愛情を持って教えるしかありません。
まとめ
ワンちゃんをしつける時は、罰を使ってしつけるより褒めてしつける方がいいとされる理由は、飼い主さんの意図がワンちゃんに伝わり難い点が多いということがあるためです。しつけたつもりの飼い主さんと、意図がよく分からないワンちゃんになって、いつまでも平行線のままです。
また、素人が罰を使うことは、時間制約や、度合いの見極めも難しく、また恐怖心を植え付けたり、飼い主さんの思わぬ怒りのはけ口としてしまったりと、罰を正しく使うことは難しいからです。ワンちゃんには言葉は通じませんが、出来たことを褒めていくと、飼い主さんの言葉を徐々に覚えて、教えられたことも上達して行きます。理想的な行動をとってもらうには時間はかかりますが、できたことを褒めてあげ続けることで、だんだん出来るようになって行くものです。
根気強く愛情を持って褒め上手な、笑顔いっぱいの飼い主さんだと、ワンちゃんもしつけに従えるよう、一生懸命に成長していくことでしょう。すてきな褒め言葉をワンちゃんに毎日プレゼントして成長を見守りましょう。