犬も心臓病になるの？
犬も人間と同じように心臓病を患うことがあります。特に高齢の犬では心臓病の発症率が高まり、適切な管理が重要になります。
本記事では、犬の心臓病について、「犬も心臓病になるの？」「先天性の心臓病」「後天性の心臓病」の3つの観点から、初心者にもわかりやすく解説します。
犬の心臓病とは？
「心臓病」と聞くと、多くの人が人間の心筋梗塞や狭心症、高血圧といった病気を思い浮かべるのではないでしょうか。これらは主に血管の詰まりや動脈硬化による疾患ですが、犬ではこうした病気はほとんど見られません。では、犬の心臓病とはどのようなものなのでしょうか？
犬の心臓病は、大きく「先天性」と「後天性」の2つに分けられます。先天性の心臓病は、生まれつき心臓に異常がある病気で、若齢期に発見されることが多いのが特徴です。一方、後天性の心臓病は、加齢に伴って発症し、特に中高齢の犬で多く見られます。発症する根本的な原因は未解明である病気が多いですが、遺伝的な要因などが考えられています。
犬の心臓病の主な症状には、咳、疲れやすさ、運動を嫌がる、呼吸が荒い、失神などがあります。特に咳は「年を取って喉が弱くなっただけ」と誤解されやすいですが、心臓病のサインであることも少なくないため、注意が必要です。
先天性の心臓病：生まれつきの異常
先天性の心臓病は、生まれつき心臓の構造や機能に異常がある状態を指します。発症頻度はそれほど高くありませんが、犬種によってかかりやすい病気が異なります。
小型犬で多い「動脈管開存症（PDA）」
ポメラニアンやトイプードルなどの小型犬では、「動脈管開存症（どうみゃくかんかいぞんしょう、PDA）」が比較的多く見られます。
動脈管とは、胎子のときに血液を循環させるための血管ですが、出生後は自然に閉じるはずのこの血管が開いたままになるのがPDAです。PDAがあると血流が異常になり、心臓に負担がかかるため、早期の手術が推奨されています。
大型犬で多い「大動脈狭窄症」
ゴールデン・レトリーバーやジャーマン・シェパード・ドッグなどの大型犬では、「大動脈狭窄症（だいどうみゃくきょうさくしょう）」が比較的多く見られます。これは、心臓から全身へ血液を送る大動脈の一部分が狭くなり、心臓が通常よりも強く働かなければならず、心臓に常に負担がかかってしまう病気です。重症になると、運動時に失神することもあり、手術による狭窄の改善や薬による管理が必要になります。
先天性の心臓病は、子犬の時期に心雑音として発見されることが多いため、定期的な健康診断が重要です。早期に治療すれば寿命を延ばすことも可能なため、獣医師の指導のもと適切な対処を行うことが大切です。
後天性の心臓病：加齢に伴う異常
後天性の心臓病は、成長後に発症する心臓の病気で、中高齢の犬に特に多く見られます。その中でも、最も一般的な疾患が「疣贅性僧帽弁閉鎖不全症（ゆうぜいせいそうぼうべんへいさふぜんしょう）」です。
僧帽弁閉鎖不全症とは？
僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の左心房と左心室を隔てる「僧帽弁」が正常に閉じなくなる病気です。その結果、血液が逆流し、心臓に負担がかかります。この病気は小型犬に特に多く、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルやマルチーズ、シーズー、チワワなどがかかりやすいとされています。
主な症状
初期の段階ではほとんど症状がありませんが、進行すると以下のような症状が現れます。
- 慢性的な咳：特に夜間や横になると悪化
- 疲れやすい、運動を嫌がる
- 呼吸が荒くなる
- 重症化すると失神することもある
この病気は進行性で、手術をしない場合は完治することはありませんが、早期発見・薬物治療により寿命を延ばし、生活の質を向上させることは可能です。治療には血管拡張薬や利尿剤、強心薬などが用いられ、病状に応じて調整されます。
また、体重管理や塩分の少ない食事も病気の進行を遅らせるため、日常生活でのケアが重要になります。
まとめ
犬の心臓病には、生まれつきの「先天性」と、成長後に発症する「後天性」があります。先天性の心臓病では、小型犬では動脈管開存症、大型犬では大動脈狭窄症が多く見られます。一方、後天性の心臓病では、小型犬に多い僧帽弁閉鎖不全症が代表的です。心臓病は早期発見・早期治療が重要なため、定期的な健康診断や生活習慣の見直しを行い、大切な愛犬の健康を守りましょう。
