犬の慢性腸症とは?原因や主な症状、治療法まで獣医師がわかりやすく解説

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東京大学動物医療センター内科研修過程修了。一般診療と皮膚科専門診療を行い、国内・国外での学会発表と論文執筆も行う。現在は製薬会社の学術担当を務めながら、犬猫について科学的に正しい情報発信を行っている。Syneos Health Commercial 所属MSL、サーカス動物病院 学術、アニー動物病院 非常勤獣医師。

犬の慢性腸症とは?

元気がなさそうな犬

犬の慢性腸症は、長期間にわたる消化器症状(下痢や嘔吐など)が続く病気です。主に 食事反応性腸症、抗菌薬反応性腸症、炎症性腸疾患(IBD) の3つに分類され、特に 食事反応性腸症 が最も多くみられます。

本記事では、それぞれの特徴や診断方法、治療について詳しく解説します。

最も多い「食事反応性腸症」とは?

ぐったりする犬

食事反応性腸症は、特定の食事が原因となり腸の炎症を引き起こす疾患 です。食事を適切に変更することで症状が改善するため、比較的治療がしやすいタイプの慢性腸症といえます。

主な症状

  • 慢性的な下痢(特に軟便)
  • 体重減少
  • 食欲不振または異常な食欲
  • 嘔吐など

診断と治療

食事反応性腸症の診断は、食事療法の効果を確認することで行われます。具体的には、加水分解タンパクの療法食や新奇タンパク(これまで食べたことのないタンパク源)を使用したフード に変更し、1〜2週間様子をみます。

改善が見られた場合、食事反応性腸症と診断され、長期的な食事管理が治療の基本 となります。適切なフードを継続することで、再発を防ぐことが可能です。

抗菌薬反応性腸症の実態とは?

診察を受ける犬

抗菌薬反応性腸症は、腸内細菌の異常増殖が関与する腸症と考えられており、抗菌薬の投与によって改善するケースを指します。しかし、 近年の研究では、抗菌薬反応性腸症と診断される犬は非常に少ない可能性が指摘 されています。

診断と治療

抗菌薬反応性腸症の診断は、抗菌薬(例:メトロニダゾールなど)を試験的に投与し、症状の改善が見られるかどうかで判断 されます。ただし、抗菌薬の乱用は耐性菌の発生を引き起こすリスクがあるため、投与には慎重な判断が獣医師により行われます。

最近では、抗菌薬の代わりに腸内フローラ(腸内細菌のバランス)を整えるプロバイオティクス(乳酸菌など)の使用が推奨されることが増えています。

最も重症な「炎症性腸疾患(IBD)」とは?

検査を受ける犬

炎症性腸疾患(IBD: Inflammatory Bowel Disease)は、腸の慢性的な炎症が続く病気で、 免疫系の異常 が関与していると考えられています。IBDの診断には 他の病気を除外する必要があり、「除外診断」によって確定されます。

診断方法:内視鏡検査の重要性

IBDの診断には 内視鏡を用いた腸の組織検査が必要になります。これは、IBDとよく似た症状を示す腸のリンパ腫(腸のがん)との鑑別が重要だからです。特に、 柴犬は7歳頃からリンパ腫のリスクが高いとされており、より早期の内視鏡検査が推奨 されます。

治療法

  • 食事療法:低脂肪低アレルゲンの療法食を使用
  • 免疫抑制剤(ステロイドなど)の投与
  • プロバイオティクスやプレバイオティクスの活用

IBDは完全に治る病気ではありませんが、適切な治療によって症状をコントロールし、犬のQOL(生活の質)を維持することが可能です。

まとめ

獣医師と飼い主

犬の慢性腸症は、 食事反応性腸症、抗菌薬反応性腸症、炎症性腸疾患 の3つに分類されます。 食事反応性腸症が最も多く、食事の変更で改善するケースが多い ため、まずは食事療法から試みることが重要です。一方で、 抗菌薬反応性腸症は少なく、IBDは内視鏡検査を含む詳細な診断と積極的な治療が必要となります。特に 柴犬は腸のリンパ腫のリスクが高いため、早期の診断と適切な治療が不可欠 です。

愛犬の健康を守るため、症状が長引く場合は獣医師に相談しましょう。

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