パニックになりやすいシチュエーションを知っておこう
家の中でもパニックになることがある!
意外と多い非日常的な音
人間にとっては理由がわかっているので恐怖感がない音も、日常的でない音は犬にとっては怖い音です。
その代表的なものとして打ち上げ花火の音がありますが、毎年花火大会の音に驚いて家から脱走して迷子になる犬が非常に多いので注意が必要です。
また、雷や激しいサイレン音、地域によってはサル追いなどの空砲が鳴ったりと、パニックを引き起こす原因は生活の中に潜んでいます。
パニックになると飼い主の声掛けも耳に入らず、ただただ身体的に反応してしまうことが多いので、普段から玄関や門扉などの脱走対策はしっかりしておきましょう。
監修ドッグトレーナーによる補足
犬の性格など個体差がありますが、激しい雨音や暴風音、廃品回収や豆腐屋さんのスピーカー音にもパニックを起こす可能性があります。
聞き慣れない大きな音が聞こえたら、怖がっていないか、パニックを起こしていないかなど、愛犬の様子を観察しましょう。
お散歩中にパニックを引き起こす原因は?
車やバイクが苦手な犬
普段は車やバイクとすれ違うことに問題のない犬でも、曲がり角を曲がった時など、たまたま工事中の大型の車両が並んでエンジン音が大きく聞こえたり、郵便局や配達のバイクの大きなエンジン音に加え、止まったり走ったり忙しなく犬の近くで方向転換されるなどのときも要注意です。
車やバイクだけでなく猛スピードで走る自転車も、犬の興奮のスイッチをいれる要因になります。パニックになると、我を忘れて突進しようとする犬もいるので大変危険です。
散歩中の犬や猫など
うちの子は犬が苦手といっても、多少の距離があれば大丈夫だったり、距離があっても、他の犬が見えただけでも激しく反応してパニックになる犬もいるでしょう。
また、猫が苦手な場合、散歩中に突然目の前を横切られた、駐車している車の側を通ったら、下から急に飛び出してきて威嚇されてしまったことで、愛犬がパニックを起こしてしまったということも。
他の犬や猫だけでなく、甲高く大きな声をあげながら走っている子どもに思わず飛びついてしまったなども少なくありません。
散歩中の犬の目線で見回してみれば、日常の生活の中にもドキッと驚いてしまうことや、ゾクッとしてしまう恐怖の要因がたくさん見つかるものです。
あなたの犬が興奮しやすかったり少し怖がりな性格なら、散歩のルートや、生活環境を見直してみてください。避けられる要因は極力遭遇させない努力をしましょう。
パニックになってしまう愛犬にやりがちなこと、逆効果のこと
パニックの余韻に慣れさせようとする
系統的脱感作(けいとうてきだつかんさ)は犬に優しいか
パニックの対処法としてよく使われるのが、系統的脱感作(けいとうてきだつかんさ)というしつけ。犬が苦手とする刺激を気付かないほど弱いレベルで与え、少しずつ慣らしていくというものです。
決して無理強いしない、犬が落ち着いているときに行う、犬のストレスを最小限に馴化のプロセスを進めるので効果があるとして犬の学習理論の中でよく登場する訓練です。
しかし、これを始めるには「おすわり」や「まて」の指示を理解し、落ち着いているとご褒美がもらえると犬に学習してもらわなければなりません。
そして毎日、対象の刺激(恐怖の対象となっている音や物など)を少しずつ与え、落ち着いていられたらおやつを使ってアイコンタクトを教えていきます。犬が対象の刺激に意識しないレベルから徐々に時間をかけて繰り返すことが必須です。
系統的脱感作は、犬が刺激に反応してパニックなどを起こしてしまったら最初に戻ってまた犬が反応しないレベルの刺激からはじめなければなりません。何度も繰り返されたりじっとしていること自体、犬にはストレスになることもあります。
この方法の確立は40年ほど前で、雷恐怖症の犬が3日で克服したといわれていますが、それでは他の刺激に対してはどうなのか、また、学習していない音や刺激に出会った時に同じように落ち着いていられるのか、というと根本的な解決にはならないでしょう。
素人判断で逆効果になってしまう危険もありますし、トレーナーに預けて嫌なものに慣れさせるのも、犬にとってストレスになる事の方が多いですから、あまりよい方法とは言えないかもしれません。
まさにパニックその時に逆効果なのは?
- 犬と一緒に走ってしまう
- 思わずリードを強く引いてしまう
- 一緒にあぜったりおろおろしてしまう
- おすわり!まて!などと命令してしまう
- 犬の真正面にたちはだかってしまう
散歩中などに突然のパニック状態になると、飼い主も焦っておろおろしてしまいがちですが、飼い主の心の乱れは犬に伝わってしまいます。ですので、犬がパニックになっても大声を出したり、おろおろしたりしないようにしましょう。
パニックになった犬は、走って逃げようとしたり、逆に突進しようとする場合もあります。興奮してリードを噛んだり、急に後ずさりされると、首輪やハーネスが抜けてしまい大変危険です。
飼い主も一緒に走ってしまったり、突進を止めようと強くリードを引いてしまうことは、犬が敏感に感じ取って不安をあおるだけなのでやめましょう。
また、飼い主さんのよくある行動として、苦手なものを見せまいとして犬の真正面に立ちはだかる場合がありますが、これも効果的とは言えません。特に犬の方を向いて目の前に立ちはだかるのは、威圧感を与えて後ずさりさせてしまうなど、かえって危険です。
その他にも、パニック状態の犬に「おすわり」などのコマンドも通じないことが多く、一時的に指示に従ったとしても、犬に強いフラストレーションがかかってしまい、興奮を引きずることになりかねません。
飼い主がやってしまいがちなこれらの方法では、どれもパニックの要因に対する恐怖、不安や興奮に犬が自分で確認して対処するようにはできないのです。
パニックになってしまったら
予測不能な避けられない出来事に、犬がパニックになってしまったら、とにかく慌てず騒がず、犬の横にしゃがむなどしてゆっくりと胸を撫でて静かな声で、「大丈夫だよ」と声掛けしながら、落ち着くまで待ちましょう。
できるだけ不安や恐怖を和らげて、安心感を与えてあげることを最優先することが大切です。
監修ドッグトレーナーによる補足
できれば犬が落ち着いた後にご褒美をあげると良いでしょう。
パニックを開けるために日ごろから対策を
室内での対策
犬が室内にいるときに起こるパニックは、花火や地震、雷などが多いため、家の中を安全にしておくことが基本です。
花火や雷などある程度予測可能なものは、「犬を一人で留守番させない」「雨戸を閉める」「安心できる場所を作る」などの対策をして、しばらく見守りましょう。
押し入れや洗面所に入りたがる場合は、安心できるクッションなどを置いてあげるのも良いでしょう。犬が震えていたらそっと胸を撫でたり、横に座ってしばらく一緒にいてあげると落ち着きますよ。
飼い主ががうろうろ歩きまわらず落ち着いていることで、犬が自分で判断して音が鳴ったり地震で揺れたときなどに、飼い主の傍にきてピタッと体をくっつけて座ってくれるようになります。「こうしていれば安心」と、犬が自分で対処できるようになるものです。
犬だけで留守番させるのは極力避けたいところですが、どうしても無理な場合もあると思います。
留守番中に身動きが取りにくいケージなどに閉じ込めていると、パニックにが起きたときに恐怖が倍増してトラウマになったり、不安のあまり自分の足やしっぽなどを舐め続けたり噛んだりしてしまうことも。いつも犬が自由にできるスペースは安全にすることが基本です。
監修ドッグトレーナーによる補足
犬がいるスペースでテレビやラジオ、好きな音楽などを流すことで、外からの音が聞こえにくくなるのでおすすめです。
散歩中の対策
散歩中は、パニックになってしまう要因と遭遇しないように工夫しましょう。
ゴミ収集車など、時間が決まっているものならその時間帯を避ける、苦手な犬の散歩時間がいつも同じなら、会わないように時間をずらしたり散歩コースを変えてみる、車の音を怖がるなら、静かな道を探すなど、できる限り安心してゆっくり歩ける時間とコースを考えましょう。
また、人や他の犬とすれ違う時には、愛犬と対象の間にそっと割って入るよう、普段から心掛けておくことも大切です。車やバイクなどとすれ違うときも間に入って少し立ち止まり、通り過ぎたらまたゆっくり歩くようにすると、車がきても犬自身が飼い主の後ろや脇に移動するなどして落ち着いて過ごせるようになります。
小型犬なら、抱っこして回避するのも一つの方法です。苦手なものを前方に見つけたら、犬が反応する前に横道に逸れる、引き返すのも大切。
パニックになりそうな気配なら、一旦立ち止まってやさしく声掛けしながら胸を撫でてやり過ごしましょう。苦手な物が見えなくなってもしっかり落ち着くまで待って、確認ができたらゆっくり歩きだしましょう。
興奮状態のまま速足でぐんぐん歩かないように、普段からゆっくり、のんびりと散歩を意識することで立ち直りも早くなっていくでしょう。
そして、いつかパニックを起こす前に、犬自身で引き返せたり、飼い主の指示に応えて方向転換するなどもスムーズに行えるようになります。
散歩用のリードは、短いものよりも3m位の長さのリードをたぐるように持つ方が安全です。パニックになるとリードを噛んだり、後ずさりする場合があります。短いリードは、緩める余裕がないため、首から抜けてしまう危険が高いのです。
フレキシブルリードも落とすとガシャンと大きな音がするので、その音に驚いて走り出してしまったり、リードが地面にぶつかる音が追いかけてくように感じてさらにパニックになって事故などの危険があるため、おすすめできません。
監修ドッグトレーナーによる補足
首の太いフレンチブルドッグなどは、首輪が大変抜けやすい犬種です。できれば首輪とハーネスの両方を装着するのがおすすめです。
脱走癖や怖がりな犬などはダブルリード(首輪とハーネスを両方装着しそれぞれにリードをつける方法)もおすすめ。犬種や状況、タイプに合わせて選び、しっかりと装着されているかを確認することが大切です。
まとめ
愛犬をパニックにさせないために、またパニックから立ち直ってもらうためには、飼い主が犬にとって安心感を与える存在になるよう心がけることが大切だと言えそうです。
パニックの克服には、慣れさせるよりも「大丈夫」という安心感を犬自身が感じるようになることがポイントです。
興奮はパニックを引き起こしやすいので、普段の生活も落ち着いたのんびりしたものに変えていくと、犬も飼い主も正常で安定した思考回路が働き、判断能力もついてきますよ。
犬の目線で快適に安心した生活を提供して、愛犬がパニックを起こさず落ち着いていられるようにしてあげましょう。