動物病院でよく見る「初夏に起こりやすい犬のトラブル」3選

動物病院でよく見る「初夏に起こりやすい犬のトラブル」3選

動物病院でお仕事をしていると、季節ごとによく見かけるトラブルがいくつか出てきます。それは病院のまわりでよく飼われている犬種や、その地域の環境などによっても異なりますが、季節ごとに起こりやすいトラブルがそれぞれ異なります。ここでは、初夏に起こりやすいトラブルについてお話させていただきます。

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記事の提供

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

初夏に起こりやすい犬のトラブル1:外耳炎

犬の耳を拭いている獣医

ご存知の飼い主さんも多いかもしれません。初夏の気温や湿度の上昇で起こりやすくなるのが「外耳炎」です。

では飼い主さんはどんな変化に気を付け、どのような対処をしたらよいのでしょうか。

どんな変化が起こる?

外耳と呼ばれる部分で炎症や感染を起こすのが外耳炎です。

外耳炎の原因は様々なものが考えられますが、この時期に起こりやすいのは細菌性外耳炎マラセチア性外耳炎です。

細菌性のものもマラセチア性のものも、わんちゃん同士で感染しあうのではなく、もともと皮膚のコンディションや耳道の環境などによって、自身の持っていた原因菌が増殖することによって起こります。

炎症によって痒みや痛み、違和感などが起こり、ひどくなると中耳炎や内耳炎にまで炎症が波及する場合があります。

また感染が悪化すると悪臭がしたり、化膿するなどの変化が見られる場合があります。

どんな子が気を付けたらいい?

どんな子でも起こり得る変化です。

しかし、垂れた耳の子脂っぽい皮膚のコンディションの子皮膚がデリケートで皮膚炎を起こしやすい子などが起こりやすい子として挙げられます。

湿度や温度の問題で、初夏になると毎年のように外耳炎になる子もいます。お家の子の傾向が把握できると早期の発見もしやすくなるでしょう。

飼い主さんはどうしたらいい?

耳の奥までのケアは、お家では傷つけてしまったり、嫌がって動いてしまったりして難しいと思います。こまめなチェックと表面に出てきた汚れの除去を行うことで早期に発見が可能です。

自然に治ることもありますが、点耳薬や内服薬の投与により改善が可能です。気付いたら、少しでも早く負担を軽減するためにも早期の受診をおすすめします。

初夏に起こりやすい犬のトラブル2:気温変化による体調不良

ぐったりしている犬

昼間は蒸し暑く、朝晩は冷えたり、雨の日が続いたり、気温などの変化が起こりやすい時期でもあります。

温度調節を行うことも難しく、体の負担になってしまうことがあります。

どんな変化が起こる?

疲れや体力消耗などにより、免疫力の低下や腸運動などの身体機能の低下が見られる場合があります。

もともと免疫力の低下している子犬ちゃんや老犬の子たちは感染の程度が悪化することが見られます。子犬ちゃんであればケネルコフなどの感染性の疾患、老犬の子たちであれば歯周病や鼻炎などの化膿性病変が悪化することがあります。

元気な成犬でも腸運動の機能低下などで下痢や嘔吐などを起こす子も多いです。

どんな子が気を付けたらいい?

特に子犬ちゃんや老犬の子は体力の消耗が起こりやすく、ちょっとした変化でも体調不良や免疫力の低下に繋がるので、ケネルコフなどの感染性病変に注意が必要です。

持病があって体力が消耗している高齢の子やお家に迎えたばかりの子犬ちゃんなどは小さな変化にも気を付けた方が良いでしょう。

元気な子でも体調不良などには陥りやすいので変化には注意をする必要があります。

飼い主さんはどうしたらいい?

どんな子にも起こり得る変化です。ちょっとした体調変化に気を付けましょう。食欲の有無、元気の有無、寝ている時間の長さなどは元気のバロメーターになります。

毎日の行動パターンを把握しておくと、平均的な睡眠時間の長さや、普段している遊びをしないなどの変化に気づきやすいです。

下痢や嘔吐、咳などの症状が現れた場合は、頻度の増加や体調の変化、合わせた症状などを見ながら受診することをおすすめします。

初夏に起こりやすい犬のトラブル3:熱中症

涼んでる犬

真夏に起こりやすい疾患と言えば熱中症はよく知られていますが、初夏の暑くなり始めた時期でも起こる可能性の高い疾患です。

起こりやすいシチュエーションなどに気を付けて、予防すると安心でしょう。

どんな変化が起こる?

体温の上昇や脱水、呼吸の異常、意識の消失などが起こります。軽度の熱中症であれば下痢や嘔吐などの消化器症状も併せて起こる場合もあります。

呼吸のしづらさからパンティングと呼ばれる、口を開けた状態で浅くて速い呼吸をする動きが見られることもあります。

重度になると意識消失や神経症状なども起こる場合があり、最悪の場合死に至る危険性もあるため注意が必要です。

どんなシチュエーションに注意が必要?

温度や湿度が高い場合に起こりやすい傾向があります。昼間の気温が高くなっている時間帯のお散歩や、お留守番中の室温の上昇、移動中の車内の気温の上昇などが挙げられます。

キャリーケースの中の通気性の悪さや、予想外の温度の上昇、お留守番時も日が当たる場所の変化などでわんちゃんの居場所が予想以上に高温になってしまっているケースもよくあります。

わんちゃんの居場所や時間帯での温度の変化を把握し、エアコンや送風機などで湿度や温度を管理することがおすすめです。

飼い主さんはどうしたらいい?

悪化すると死に至る危険性もあります。異常に気付いたら速やかに行動しましょう。

まず、エアコンなどで部屋や空間の温度や湿度を下げてあげてください。

併せて体温の上昇が見られる場合は、太い血管の走っている首の部分やわきの下、太ももの付け根の部分を保冷剤を用いて冷やしてあげましょう。

できれば早めに動物病院を受診することも大切です。お出かけ先で、熱中症トラブルと遭遇することもあります。

お出かけ先の動物病院をピックアップし、診察時間などを調べておくと安心です。

まとめ

人間にとっての気温や室温、湿度の感じ方とわんちゃんの感じ方は異なります。

快適に過ごしやすい環境に整えてあげることも大切ですが、季節の変わり目で起こる体調変化に早期に気づいてあげることで負担を軽減してあげることができます。

お家でもこまめにチェックしてあげてくださいね。

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