犬同士が喧嘩する理由
遊びの延長
多頭飼いの場合、犬同士が喧嘩していると、飼い主としては心配ですね。でも、遊びの延長で喧嘩に見える場合もあります。
犬同士の遊びが激しくなり、お互いにうなり合ったり、大きな声を出しながら取っ組み合ったりすることがあります。こういう時、犬はかなり楽しんでいるので、心配することはありません。
子犬の社会化のため
先住犬が大人で、新しく迎えた犬が子犬の場合、新顔の子犬が先住犬にちょっかいをかけることがあります。体当たりしたり、歯を当てたり、かなりしつこくしていると、飼い主はハラハラすることになります。
でも、痛い場所を噛むなど、子犬が一線を越えると、先住犬は必ず怒ります。こうして、子犬は犬同士の関係や、遊びの加減を覚えていくので、このようなケースも心配ありません。
ストレス
例えば、狭い場所でたくさんの犬を飼うなど、犬にとってかなりストレスな状況にあると、それが原因で深刻な喧嘩が起こることがあります。
筆者も非常に痛ましいケースを聞いたことがあります。個人で犬の保護活動をしている方のお宅にお邪魔したとき、とても狭いスペースで1歳未満の子犬がぎっしりと飼われていました。個人で保護しているから、スペースに限度があるのは仕方ないとしても、こんな状況ではストレスになるのではと心配になりました。
後日、その方が保護している犬同士で喧嘩が起こってしまい、1頭の犬を他の犬達が激しく攻撃したため、その子は重傷を負って死んでしまったということです。子犬であっても、ストレスにさらされると、相手を死なせるほどの攻撃性を発揮するのだと、ゾッとした覚えがあります。
このケースはやや極端かもしれませんが、犬をストレスフルな状況で飼育すると、深刻な喧嘩が起こる1例です。
飼い主を巡る嫉妬
多頭飼いの場合、飼い主への愛情が理由で、犬同士の喧嘩が起きることがあります。外出から帰った飼い主が、誰を一番に撫でるかなど、犬同士の序列と噛み合わない場合、嫉妬した犬が他の犬を攻撃するなどします。
特に理由なく、先住犬と後輩犬が一方をいじめている場合などは、嫉妬が理由であることも考えられます。
発情期の喧嘩
避妊手術をしていないメス犬がいる場合、オス犬同士が発情期のメスを巡って、激しい喧嘩をすることがあります。これは本能によるものなので、しつけでどうにかなる問題ではありません。
犬に限らず動物は、基本的に喧嘩を避けるものですが、発情期ばかりは人(犬?)が変わったように興奮して、オス同士の激しいバトルが繰り広げられます。見ている飼い主があっけにとられるほどの豹変ぶりです。
たいていの場合、相手に大けがを負わせるほどエスカレートしませんが、時には興奮のあまり、本気で噛みついてしまうので、注意が必要です。
犬の喧嘩と多頭飼い
しつけ
多頭飼いしている犬同士の喧嘩は、しつけ不足が原因の場合があります。飼い主がリーダーシップをとって、家庭内のルールを教えることで、喧嘩を防ぐことができます。
家の中で犬を好き放題させていると、ごはんやおもちゃなどの些細なきっかけで、犬同士がすぐに喧嘩を始めてしまいます。このような場合は、飼い主がリーダーシップをとって、少しずつしつけを行うことで、犬同士の関係も改善します。
些細なことで喧嘩を始めた犬を「ダメ!」と言って、止められるようになれば、喧嘩の回数も減っていきます。
犬同士の順位づけの問題
多頭飼いをしている犬同士の順位づけが不安定な場合や、順位づけが欠如している場合、頻繁に喧嘩をすることがあります。特に年齢が近い多頭飼いの場合には、順位づけに注意が必要です。
このような場合、飼い主は犬の序列を乱さないように心がける必要があります。犬同士の関係をよく観察して、順位が上の犬を優先させるようにしましょう。体の大きさが違うと、どうしても小さいほうの犬をかばってしまいますが、大きいほうの犬が上の場合、きちんとその序列を守ってあげましょう。
犬同士の嫉妬
多頭飼いで犬同士の中で順位づけがはっきりしていても、飼い主への愛情が深いのは、どの犬も同じです。時には、飼い主の愛情を巡る嫉妬のために、喧嘩が起きてしまいます。
特に喧嘩になりやすいのが、留守番のあと、飼い主が帰宅した時です。飼い主が帰ってきたうれしさで、犬は興奮します。興奮状態の中で、飼い主が誰を一番先になでるかなどで、嫉妬心のあまり、喧嘩になることがあります。
このような場合は、興奮状態が喧嘩を引き起こすため、犬が落ち着くまで、飼い主は平然と帰宅後の片付けをしたほうがいいです。上着を脱いだり、買ってきたものを整理したり、自分の用事をしている間に、犬も落ち着いてきます。
犬の喧嘩はやめさせても良いの?
犬同士が喧嘩していたら、飼い主としては止めたくなってしまいますよね。見ていて心配だし、人間同士の喧嘩と同じように考えて、喧嘩はしないほうがいいと考えますね。
でも、止めないほうがいい喧嘩もあります。先述した、子犬の社会化のための喧嘩がそれに当たります。また、多頭飼いの犬同士が喧嘩するのも、犬の序列を決めるための大事な行動です。ひどいけがをさせるような場合は別ですが、犬同士の関係を決めるための喧嘩は、見守りましょう。
犬同士の順位づけに関係なく、頻繁に多頭飼いの犬が喧嘩するような場合は、飼い主が仲裁に入ったほうがいいです。その時に気をつけなければいけないのは、弱い犬をかばうことです。飼い主から見ると、弱い犬、小さい犬が強い犬にやられているのがかわいそうで、どうしてもかばいたくなります。でも、その行動が犬の序列を混乱させ、かえって喧嘩が絶えないようになることもあります。犬の順位づけを乱さないように、仲裁に入りましょう。
犬の喧嘩の止め方は、飼い主が直接割って入らないことです。小型犬同士であれば、両方の犬の首根っこをつかんで引き離すこともできます。サイズの大きいわんちゃんの場合は、飼い主が噛まれてしまう可能性がありますので、素手で止めるのは危険です。
中型犬以上の犬の場合は、モップのような長い棒状のものを使って、喧嘩をやめさせましょう。犬同士を引き離し、再び喧嘩をさせないように、別々の部屋に追いやります。
散歩中に自分の犬が他の犬と喧嘩になってしまったときは、古典的な方法ですが、水をぶっかける!が一番効果的です。よその犬とは喧嘩させないように気をつける必要がありますが、いざという時のために覚えておきましょう。
犬の喧嘩の注意点
1頭が集中攻撃される
犬同士の関係を確立するために、喧嘩も必要ですが、1頭を集中攻撃する場合は注意が必要です。これはもう通常の喧嘩の範囲を超えています。先述した子犬の死亡事故も、このケースに当たります。
3頭以上の多頭飼いや、ドッグランでの喧嘩で、1頭が集中攻撃にあう場合があります。最悪の場合、死亡することもありますので、このような喧嘩はやめさせなければいけません。
けが
犬同士がひどい喧嘩をして、けがをしてしまうことがあります。噛み傷は治療で治りますが、けがをしてしまったこと、恐い思いをしたことが原因で、ショック状態になる可能性があります。
ショック状態のため、尿が出なくなり、急性腎不全に陥ることがあります。腎不全は、慢性より急性のほうが危険で、急激に症状が悪化して、死亡に至る可能性もあります。
基本的に、犬は無駄に他の犬を傷つけないものですが、ストレスや過度の興奮のため、歯止めが効かなくなることがあります。深刻な喧嘩が起こらないように、飼い主が常に注意する必要があります。
犬の喧嘩の解決方法
犬同士の相性を見極める
多頭飼いで喧嘩が絶えない場合、犬同士の相性が悪いのが理由かもしれません。相性の悪い者同士を近くに置いておくと、喧嘩になってしまうのは、人間も同じですね。
相性が悪い場合の対処法は、互いのテリトリーを分けてあげることです。近くでごはんを食べさせない、それぞれのお気に入りのおもちゃを近くに置かないなど、犬同士が適切な距離をとれるようにしてあげましょう。
ストレスをためない
犬がストレスをためてしまうと、興奮しやすくなって、喧嘩が起こりやすくなります。これは、多頭飼いでも1頭飼いでも同じことです。
きちんと散歩に連れて行って、犬がストレスをためないようにする。基本的なことですが、一番大事な対処法です。屋外で運動して、適度に疲れると、むやみに攻撃的になることはありません。
しつけをする
散歩中など、他の犬に会ったときに興奮するような場合は、他の犬を見たときに「お座り」をさせるようにしつけるのも効果があります。
犬がカッとなって興奮する前に、「お座り」をさせて落ち着かせます。これは、飼い主との信頼関係ができていて、飼い主が危険だと知らせない限り、落ち着いていて大丈夫と犬が理解することにもつながります。
喧嘩早い犬には気長な対処法になりますが、ぜひ試してみてください。
まとめ
犬同士の喧嘩には、必要なものとそうでないものがあります。子犬の社会化や、犬同士の序列を決める喧嘩は、犬にとって必要なものです。
ですが、多頭飼いで頻繁に喧嘩になる場合や、1頭を集中攻撃する場合は別です。大けがに発展しないうちに、やめさせるようにしましょう。また、普段からストレスをためないようにして、喧嘩をしない犬にしておくのも大事ですね。