犬に見限られることがあるって知ってましたか?
甘やかしがもたらす立場の逆転
私と家族の恥ずかしくもあり、多くを学んだ今は亡き愛犬との体験談をお話したいと思います。私と両親が初めて犬を迎えたのは今から15年前のことでした。
当時、生後3カ月だった犬のしつけや世話はほぼ私と母が行っていました。
私は犬のしつけ本を購入したり、色んな人のアドバイスを参考にして、遊びとしつけの両立を上手く取り入れ、犬と家族全員の良い関係が築けたと思っていました。
しかし、愛犬が2歳になったばかりの頃、私の転勤が決まり、私は単身海外へ行かなければならなくなりました。
愛犬は残った家族が面倒をみることになりました。
その頃、時期を同じくして父が定年退職を迎え、ほぼ朝から晩まで家で犬とずっと一緒にいるような生活になりました。
父の退職以降、犬の態度が短期間の間に急変しました。父は可愛さのあまり、犬の言いなりになっていたのです。
犬は「おやつが欲しい」とねだれば貰える。
「散歩に行きたい」と吠えれば連れて行ってくれる。
父の食事中にねだればおこぼれが貰える。
ねだれば何でも手に入るということを覚えてしまったのです。
犬はそれからというもの父にベッタリになりましたが、一方で思い通りにならない時や歯磨きやシャンプーや爪切りなど自分の嫌なことをされそうになると噛みつくようになりました。
犬は父の間違った可愛がり方から「家族は自分の言うことを何でも言うことを聞いてくれる」=「自分がこの家族のリーダーなんだ」と認識するようになったのです。
母と犬の関係も急変しました。
犬は私たち家族の上下関係をしっかり観察しているのです。
父はいわゆる亭主関白主義な昭和の頑固おやじタイプの人間でした。
母には「メシ」「風呂」というように命令するようなタイプだったため、母がしつけを徹底的にし直すという提案も聞く耳をもたず、その結果犬の問題行動もエスカレートしていったのです。
犬は母を父の下に位置する者とみなし、家族で一番下位の人間だと認識していったのです。
犬は家族の上下関係を、自分をトップに位置づけ、続いて父、母という順序で上下関係の構図をピラミット型にしてしまったのです。
母の言うことは一切聞かなくなり、母への噛みつきが一番酷くなっていきました。
父は犬が言う事を聞かないと苛立ちを見せ、噛み付くと言葉で強く叱りました。
犬にとって、何をしても自分の思い通りになり、嫌だと吠えて威嚇をすればしなくていい。
リーダーである自分を叱りつける父が理解できず、叱ると更に反抗するようになりました。
犬は今まで家族に守られていた立場から一転、家族を守らなくてはならないという家族のリーダーとしての責任感が芽生え、常にピリピリと神経を張り巡らせるようになりました。
今まで守られてきた立場の犬が守る立場になる器などないのです。
そんな犬はストレスで尻尾の毛を噛み、常にイライラしているようでした。
愛犬に見限られる飼い主のNG行動
これだけはヤメて!
甘やかすということと可愛がるということは違うのです。犬は人間ではないのです。言葉で説明してもわからないのです。だからこそ躾が大切なのです。悪い事をしたときはダメだと叱り、言うことを聞いたときはときは、思いっきり褒めてやる。そして何をするにも主導権は飼い主が握らなくてはいけないのです。犬が飼い主をリーダーとして見限るNG行動について考えてみます。
- 犬にねだられて散歩やご飯を与える
- 大声を出して叱ったり、感情的になって攻撃的な仕草をする
- 散歩で犬に誘導される
- 怒り口調で命令する
- 犬の機嫌をとる
犬のペースに巻き込まれないことが大切なのです。何をするにも飼い主の都合に合わせて行動してください。
そして常に堂々として穏やかに自信を持って犬と接するようにし、怒鳴ったりすることなく冷静に振る舞いましょう。
リーダーである飼い主が動揺したり、取り乱したりすると犬はその感情を感じ取り不安に陥るのです。
散歩では常に飼い主がリーダーシップを握り、誘導しなくてはなりません。犬が飼い主の先を歩き、好きなところで排尿(マーキング)を繰り返すようなことを許していてはいけません。
自分の後についてくる飼い主を自分より下位の者とみなし、「守らなくてはならない」という思いから、散歩中に他の犬に出会うと吠えて威嚇したり、攻撃的な行動をとるのです。犬は、「飼い主は行きたい所へ行かせてくれて優しい」などとは思わないのです。
この甘やかしは犬にリーダーになることを強制しているのです。
これらに加えて、犬に命令をするとき、褒めるときに必要となるのは自分の目線の位置です。
命令をするときは必ず犬の目線よりも高い位置からでなくてはなりません。
そして言葉は短く、ハキハキと、低い声で行ってください。言うことを聞かないからといって怒り口調で命令をすると、怒られると思い言うことをきかなくなります。
そして叱った後にしょんぼりしている姿をみて可哀想と思い、オヤツをあげるなどの機嫌取り行為をしてはいけません。
良い行いをして褒めるときは、犬の目線と同じ位置で、優しく高めの声で、笑顔でご褒美とボディータッチをしながら褒めてあげて下さい。
まとめ
私の日本帰国後しばらくしてから、私たちの13歳になった犬に癌が見つかり、日に日に弱っていきました。噛みつく元気もなく寝たきりになってしまった犬の介護を私たち家族は24時間体制でしました。犬は、自分はもはやリーダーではないと自覚したのでしょうか、家族に守られて横になっていることに安心しているようでした。最後の最後に家族に甘え、ずっと家族に寄り添い安心している姿こそが、本来犬が求めていた姿だったのかもしれません。
犬を上手くコントロールするにはアメとムチの使い分けが大切なのです。まだ小さいから叱るのは可哀想とか、小型犬だからこのくらいは大丈夫などと問題行動を軽視してはいけないのです。
犬は飼い主であるリーダーに躾けられ守られると感じることで、安らぎを感じ安心して生活することができるのです。