今回の記事は犬の勉強をするため、AFC(ドッグスクール)にて泊まり込みで研修をさせていただいた時のお話です。
その日はアメリカのインストラクターで『エクセレレーティッド・ラーニング―「イヌの学習を加速させる理論」』の著者、パメラ・J・リード先生がAFCでのセミナーの為に来日されていました。
犬の学習理論を勉強しているインストラクターなら必ず読んだことがある?!
闘犬の取材
「日本の伝統的なドッグスポーツである闘犬に興味を持っているので取材に行きたい」とのリクエストで、近くで土佐闘犬を飼育されているセンターに取材に行く事になったのです。私も誘っていただきインストラクターの皆さんと車に乗って向かいました。
パム先生の母国、アメリカではアメリカン・ピット・ブル・テリアが賭博の為に闘犬に使われています。
アメリカンでのピットブルのデスマッチ
賭け事の一端として闘犬が行われるケースがある。ルールなしのデスマッチ形式で、飼い主が相手の飼い主に謝らない限り試合は続行され、場合によっては死ぬまで戦わせる。現在では闘犬は動物虐待として扱われ、全50州で人道的な観点から法律的に禁じられている。ワイオミング州を除く全ての州で重犯罪に指定されており、厳罰が課される。
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki
先生の興味は「日本の闘犬のルール」と「動物愛護に配慮された内容なのか」と言う事でした。
土佐闘犬飼育場
到着した場所は土木建築関係のトラックが行き来する工場のようなところで、地面は砂利。
工事現場のように高い塀に囲まれていました。ゴールデンウィークの5月と言えど気温も低いし乾燥している日でしたが、あたり一帯は獣の様な強い匂いがします。
動物園のライオンの檻の匂いに似ていると思いました。本能的に、匂いの主に近づいて行きたくないような殺気立った匂い。
作業服を着た男性に案内されて奥へ歩いて行くと、平屋のプレハブの裏手に赤い檻とブロック塀とトタン屋根で出来た頑丈そうな犬舎が見えました。
私達に気づくと檻の中から、30頭位の土佐闘犬が怒号のように吠えて興奮しています。檻に飛びついて前足を掛けて立ち上がっている状態だと、人間の男性の背丈よりも大きく見える犬もいます。
檻が2重になっている犬舎にいる、とても大きなな真っ黒い土佐闘犬は、じっとこちらを見据えて吠えもしていません。檻に近づくのも嫌な位。檻が間違えて開いていようものなら…そう考えると自然に動悸が早くなります。恐ろしいと思いましたし、この興奮ぶりなら襲われてもおかしくないと思いました。
相次ぐ咬傷事件
私の自宅の近くにある土佐闘犬のセンターは、3回殺傷事件を起こし新聞沙汰になっています。その牙によって亡くなった人も居ます。檻がきちんと閉じられて居なかった事が原因で、犬が外へ逃げ出し出くわした人を襲ったのです。
土佐闘犬とは
土佐闘犬について紹介
- 大きさ 大型犬
- 体高 ♂60cm~ ♀55cm~
- 原産国 日本(高知県)
※FCIのグループではピンシャーやシュナウザーと同じ使役犬に分類されている
※JKCとして使役の用途は以前は闘犬、現在は番犬となっている
日本の土佐闘犬は戦う遺伝子を持った犬。戦える犬だけが残され繁殖されてきたので闘争心があります。海外で繁殖されているTOSAは、ジャパニーズマスティフと呼ばれ容姿も好まれており、比較的穏やかで家庭でも飼養できるような優しい性格の犬が多いと言われています。
出場条件
試合に出られる年齢は1歳半~7歳位。闘犬に使うのは雄のみで雌の犬は繁殖に使う以外、妊娠した雌の腹の中で殺してしまうそう。その殺し方は雌の子宮に手を突っ込んで潰してしまうと聞いた事がありますが、定かではありません。
現代では堕胎手術を行うのかもしれませんが、雌の犬にはかなりな負担がある事に間違いはないでしょう。
番付(強さのクラス分け)
土佐闘犬には、相撲と同じ呼び名の番付があります。番付とは大相撲の世界での強さの階級の事を言います。横綱が一番強いのはご存知ですよね?試合では同じ階級やその上下の階級同士戦うようになっています。
- 横綱
- 大関
- 関脇
- 小結
- 前頭
- 十両
- 幕下
…他
番付:wiki
体重
ボクシングの様に、体重によって出られる試合が違うそうです。試合前に必ず箱型の計量装置に入れて重さを測定します。
- 小型で33㎏~40㎏
- 中型は41kg~45㎏
- 大型で45kg~55kg
- 超大型で55kg~65kg
※100kg近くになる犬もいるそうです
ドーピング(増強剤や薬物使用)の有無
試合前には、興奮させるとか、筋肉を増強させるなどの薬物などはつかいません。試合の前の数日間はフードを生肉などに変えて、戦いに適した頑丈な体作りをしていくそうです。
勝敗ルール
- 声を出したら負け
- どちらかが逃げ出したら負け
- 30分以上試合が続いてしまったら引き分け
タイムをかける時がありますが、タイムをかけて試合を中断するときは、口蓋に自分の牙が刺さってしまった時、相手を攻撃しづらいのでタイムをかけて口蓋を元に戻すそうです。
試合への年間出場回数
年間約4試合程度
仔犬の購入金額
5~20万円位。値段の相場はあって無いようなもので、殆どが言い値だそうです。
闘犬を触ってみたい場合
飼い主がハンドリングしていたとしても(触って良いと言ったとしても)、他人は無暗矢鱈に闘犬を触らない方が良いとのこと。絶対人を咬まない・襲わないとは言い切れない犬だそう。
※闘犬として育てられた場合
調教
土佐犬の調教には「咬ませ犬」を使うそうです。若い雄犬に、弱い犬や闘犬を引退した老犬をあてがい咬む事や戦い方、急所などを覚えさせて勝つことにより自信をつけさせるそうです。この「弱い犬」や「闘犬を引退した老犬」を咬ませ役として使います。
声を出したら負けになるので、無言で咬みつきます。これもまた皮膚がよく伸びるので咬み合っても痛くないと言う事ですが、痛くないならなぜ悲鳴を我慢したり、どちらかが逃げたりするのでしょう。それは当然「嫌だから」です。
戦えない闘犬は
中には雄犬でも戦いの意思を持たずに闘犬として使えない犬も居るそうです。そういう犬は多くの場合「つぶして」しまうそうです。殺処分です。
取材に行ったセンターでは終生飼育を心掛けているそうですが、終生飼育されている場所は犬舎の檻の中です。公共の場へのお散歩や一般的なドッグランにもつれていけないでしょうし、庭でフリーにさせる事もできない犬。日本では闘犬に生まれた時から、彼らは闘犬でしかないのです。戦いに強い犬を選り分けて繁殖されてきたため、リタイヤして一般の家庭に引き取られるのにも無理があります。
しかし生まれた時から戦いたい犬なんてこの世には存在しません。戦うように仕向けられ攻撃性を強調されて戦うのです。
取材に行って得たのは
今まで全く未知だった部分に触れられたのは大きな収穫と言えます。しかし、自分の犬が他の犬と喧嘩して傷だらけになるなんて絶対に嫌です。取材で檻から出して頂いた犬も、所々傷だらけでした。闘犬の場には獣医がいて怪我をしたら治療するそうですが、最初から犬に怪我をさせたくありません。
けれど取材に協力してくださった方は土佐闘犬が好きなのでしょう。決して嫌いで戦わせているわけではないのです。傷だらけの犬の体にポンポンと手を触れたりしながら、質問に淡々と答えてくれます。自分の犬が他の犬と喧嘩をして傷だらけになるのは、「皮が伸びるので痛くない」のでさておいているのでしょう。
自分が犬だったらどう思うか
動物愛護に配慮されているか
動物愛護法の闘犬の項目を参照してもグレーゾーンですね。
「虐待の防止」について
ですが、大切なのは「愛護法ではどうなのか」ということよりも、「自分が犬だったらどう思うのか」ということを考えてみてください。
他の犬と闘えますか?もしくは一生檻の中で暮らしたいですか?
エアコンの効いた家で快適に暮らし、飼い主と触れ合ったり、散歩や旅行に出掛け、色々な存在と関わって社会になじみ、健康維持のためのケアを受けて、美味しいものを食べて、豊かに暮らしたいと思いませんか?
動物福祉(アニマルウェルフェア)に尽くそう
コーダとの関係がこじれたのは、
- 犬の身になってものを考えられなかったから
- しつけについて世の中に氾濫している間違った情報を簡単に信じてしまったから
- 犬と言う動物についての知識が足りなかったから
私はこの先もずっと犬の味方でいます。コーダとの経験や、今後の活躍を通して『愛犬と飼い主』の関係がより良いものになるように普及することが使命と思いました。
「日本は動物愛護後進国で欧米に比べると100年程遅れている」と言う事は近年よく叫ばれていることですが、具体的に何が遅れているのか、どうすれば進むことができるのか考えていかねばなりません。
動物福祉:wiki
タレント犬コーダのテイクわん!~愛犬のために変わろう~につづく
▼【連載】コーダのテイクわん!記事紹介
前:コーダのテイクわん!~愛犬の可能性④~
今:コーダのテイクわん!~愛犬の可能性⑤~
次:コーダのテイクわん!~人が変わると犬も変わる~
一覧:コーダのテイクわん!