愛犬コーダとの関係を改善するために受けた、AFC(ドッグスクール)での研修の主な内容は、犬や猫など保護されている動物たちのの身の回りのお世話と清掃、そしてインストラクター先生が行うレッスンを見学し、アシスタントをさせて貰えるというものでした。
犬の世話は責任と忍耐と愛情?!
犬のお世話は、これを読んでいる方なら殆ど経験のある方ばかりですが…。
以下は、AFC(ドッグスクール)での主なお世話の内容です。
朝
散歩に連れて行き排泄をさせて排泄物を処理し、1頭ずつ足を拭いて部屋の中に入れそれぞれのお部屋に戻して食事と薬を与え、フード皿を洗って、グルーミングや点眼などをして部屋を掃除。
昼
散歩に連れていき排泄をさせて排泄物を処理し、1頭ずつ足を拭いて部屋の中に入れそれぞれのお部屋に戻して犬達のお昼寝タイムの間は『レッスンの見学とアシスタント』。
夕方
散歩に連れて行き排泄物の処理をし、1頭ずつ足を拭いて部屋の中に入れそれぞれのお部屋に戻して食事と薬を与え、グルーミングや点眼などをして就寝させる。フード皿を洗って完了!
...このお世話を他のスタッフと手分けしても犬50頭+猫100頭をこなすと1日はあっと言う間に過ぎて行きます。
うし小屋のウシくん
だいぶお世話や掃除などの作業がこなれて来た日のこと。
犬たちの夜の散歩の支度をしていました。
いつもサークルの中で横になっている「白い小型犬のウシくん」を横目に作業していたのですが、その夜はウシくんに頭までタオルケットがかけられているのに気付きました。
老犬のウシくんは昨日までは横になって息をしていましたが、その日命が終わったのです。
※写真はイメージです
後で知ったことですが、ウシくんは酪農を営む老夫婦に飼われていた犬でした。
お婆さんが大切に可愛がっていたけれど、そのお婆さんが亡くなってしまいました。
残されたお爺さんは、ウシくんを牛小屋の傍に繋いで飼っていました。
小型犬が外で繋がれて飼われている事はあまりないし、毛もみすぼらしく汚れていて気の毒に思い、AFCが引き取った犬だそうです。
引き取った時、牛小屋に繋がれていて牛の糞の匂いがした犬と言う事で、ウシくんと名付けられました。
AFCに来てからはウシくんは、ある飼育スタッフの方にすごく可愛がられていました。
その方の贔屓の犬だったようで、静かに泣いておられました。
まだ体温が残っているウシくんを撫でて、棺のなかに花を飾りました。
亡くなった犬には施設の人全員で花をあげて、その後エントランス前に集い手を合わせて葬儀場へ行く車を送り出します。
火葬をして遺骨になったウシくんは、敷地内の山の中にある動物たちの墓場に埋葬されます。
ウシくんは、育った家を離れてからも泣いてくれる人が居て幸せだと思います。
可愛がってくれていたお婆さんのところへ行けたでしょうか。
研修の中で、犬の死に立会いました。
老犬の奇跡的な回復力を見ました。
元野良犬と絆を作りました。
失明している犬に嗅覚や聴覚を使ってコミュニケーションをとりました。
犬にとって心地のよい触り方で、犬のストレス軽減を考えながらグルーミングをしました。
そのほかにも今まで知らなかったたくさんの事を学ぶことができました。
最初は、勉強を習いに行く学生のような気持ちでいたので、「なぜインストラクターの研修に来たのに『犬のお世話』だけならまだしも、掃除や皿洗いまでするのだろう。もっとレッスンをたくさん見て勉強したいのに」と思っていました。
けれどお世話をしていくうちに、皿洗いをしている間にも、ずっと犬の事を考えていられるし、短い期間ではありましたが、あれだけの頭数・個性・年齢・大きさ・疾患・行動に注意して犬と接する事ができる環境は他にはありません。
研修を終えて帰宅する日、施設にいるすべての方に挨拶をして犬や猫には会わずに帰りました。
私にとって研修の最後でも、彼らにとっては毎日が新しいし、親しい人や好きな人に棄てられた経験がある子たちばかりなので、別れは悟られたくありませんでした。
どの子もみんな大好きで、家に連れて帰り家族にしたいと思いました。
けれど私には1番大好きなコーダという犬がいます。
まずはコーダとの関係を変えていかなければ。
しあわせな犬になってほしい。
久しぶりに帰宅したとき、コーダは階段の一番上の段から私に向かって飛び降りてきました。
階段の一番下の段にいた私は驚きながらも、10kg以上あるコーダを抱きとめました。
目や鼻など、パーツが削れて無くなってしまいそうなほど顔をなめられて、ヨダレでギトギトになりながらも涙が止まりませんでした。
人が変わると犬も変わる
犬は相手がどんな人間であろうと、無条件に愛してくれます。
私が「無知で間違えたしつけ方」でコーダに直接罰を与えたり脅したり怒ったりしていた事なんて、微塵も恨みに思っていません。(思っていないよね?!)
時間はかかりますが、接し方次第でこれからいくらでも変えられます。
私はコーダをほとんど怒らなくなりました。叱りもしません。
その必要がないし、問題が起きたのは環境を整えておかなかった自分の責任なので、むしろ謝らなくてはならないくらい。
カラーは締まるものではなく、バックルタイプかベルトタイプ。
もしくは脇の下に毛玉が出来なければハーネスを使います。
リードは小さな子供と手をつないでいるように安全に配慮しながら、お散歩の時もし危なくなければ一番長い状態にします。
間違ってもジャークするような事がないように、徹底的に練習しました。
叱らなくても良いようにまずは環境を整える。
望ましい事をしてくれたらほめて報酬を与える。
触り方を変える。
それをきっちり守る事で、コーダは全く咬まなくなりました。
それどころか研修で習った、犬の自発性を伸ばすトレーニングをはじめたところ、どんどん自信をつけて行き、教えれば教えただけ次々に色々な事を覚えてくれるのです。
犬が自信をつけるとどんな事ができるようになるのか、それをコーダで証明できるようになりました。
最後に、私の教室の生徒さんにお借りした「僕に生きる力をくれた犬 」というとても良い本があるので、ここで紹介させていただきます。
犬が人を変えた「プリズン・ドッグ」
「僕に生きる力をくれた犬 」
青年刑務所ドッグ・プログラムの3ヵ月
著者:NHK BS「プリズン・ドッグ」取材班 著
出版:ポット出版
舞台はアメリカの青年更生施設。
シェルターから引き出した犬を、譲渡できる状態までトレーニングして里親に引き渡す事を通じて受刑者の更生を促す「ドッグプログラム」に参加した、ある3人の青年たちを追ったドキュメンタリーです。
1993年から始動したと言うこのプログラム。
参加した青年たちはおよそ100人を超えていますが、出所後の再犯率がゼロと言うすばらしい結果も出ています。
殺人・誘拐・強盗などの重い罪を犯した青年でさえ、犬と心を通わせることにより優しくなります。
忍耐力・観察力・愛情がなければ犬は育たず、根気強く責任をもって世話やトレーニングをする必要があるからです。
犬と心を通わせ、本気で向き合うと人も変わる事ができる。
人が変わると犬も変わります。
私とコーダがそうであるように。
▼【連載】コーダのテイクわん!記事紹介
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