アメリカの動物シェルターで起きた悲劇
犬をはじめ、ペットが家族のように愛されるのは、程度は違うとしても、どの国でも同じです。
そして、ペットの飼育を無責任に放棄し、ペットを殺処分しなければならなくなる問題も、程度は違うにしても、どの国も抱える問題です。
そういった飼い主が飼育放棄したペットを扱う施設は、日本では保健所や動物保護施設になりますが、アメリカでも同様の施設があり、それを「シェルター」と呼びます。
シェルターをさらに細かく分けると、殺処分を行う「キルシェルター」、極力殺処分を行わない「ローキルシェルター」、殺処分を行わず終生飼育を行う「ノーキルシェルター」の3つに分類されます。
アメリカにおけるシェルターに対する考え方は、州によって様々。
殺処分が禁止されている州もある一方で、殺処分が許されている州もあります。
オクラホマ州もそのうちの一つで、今回の事件の舞台になります。
ある事件が、オクラホマ州のブリストウ町という小さな町のキルシェルターで起きました。
その事件の重要なポイントは殺処分の方法でした。
殺処分の方法といえば、一般的には、一酸化炭素などのガスを用いるものや筋弛緩剤などの薬品を用いるものなどがあります。
日本では、二酸化炭素による安楽死(窒息死)が用いられており、この方法は麻酔作用・鎮痛作用があると言われ、世界的な安楽死として認められています。
アメリカでは、殺処分の方法は州によって異なり、今回のオクラホマ州では、「人道的な方法で行うこと」とされていますが、具体的な方法は定められていません。
そんな中、今回のキルシェルターにおける一部の殺処分に銃が使用されました。
これを知った地域住民が「非人道的だ」と激しい非難の声を上げたのです。
「殺処分を安く済ませるためではないか?」という見方もされました。
シェルターのあるべき姿、自治体のあるべき姿、そして、飼い主のあるべき姿
この事件の争点は、問題となっているシェルターが行った「銃による殺処分」が「人道的」か「非人道的」であるか、ということです。
銃刀法により銃の所持が禁じられている日本人にとって、銃社会に住むアメリカ人の銃に対する考え方は理解しにくいところはあります。
ただ地域住民から「非人道的だ」という声が上がるということからも、アメリカ人の中でも、銃に対する考え方は様々なのでしょう。
法律で「人道的な方法で行うこと」と決められていたとしても、シェルター側は、主観的ではなく、客観的・一般的な観点から、殺処分の方法を判断をすべきでした。
「ペットが家族」という文化が強いアメリカだからこそ、非難に拍車が掛かったのだと思います。
しかし、すべてはこのシェルターに問題があるのでしょうか?私は違うと思います。
殺処分の方法について、法律で具体的に決まっていれば、このような事件は起きなかったと思います。
上にも述べたように、「人道的な方法」とは、人それぞれ、捉え方が異なります。
シェルターの担当者と地域住民との間に、「人道的な方法」の捉え方の違いがあったため、今回のような事件が起きたのだと思います。
さらに、殺処分を行うには税金が使われます。
殺処分は自治体の財政を圧迫する一つの要因になります。
地域住民から「殺処分を安く済ませるためではないか?」という見方をされたように、税金を抑えようと、安価で行える銃での殺処分が頭をよぎってしまったのかもしれません。
命を扱うデリケートで難しい問題であるからこそ、法律や自治体は、きちんとした指針を示してあげる必要があると思います。
そして何より最も大事なのは、ペットがシェルターへ行く必要がないように、飼い主が責任を持って、最後まで飼ってあげることです。
無責任な飼い主が飼育を放棄することで、シェルターが溢れかえり、殺処分が行われます。
それは、銃での殺処分よりも、よっぽど非人道的であると思います。
人間と犬の共生。それは人間が求めたものです。
それまで、野生で生きてきた犬を、ワーカーとして、そしてペットとして変化させてきたのは私たち人間です。
犬以外のペットもすべて同じです。
ペットとともに生きていくために、飼い主として、社会の一員として、当事者意識・責任感をもって人間は生きていくべきだと思います。
そうすれば、そもそも根本から、犬をはじめ、ペットを殺処分する必要のない社会になるのではないかと思います。
まとめ
今回の事件は、シェルター側の担当者と地域住民の「人道的な方法」に対する意識の差によって起こりました。
しかし、その背景には、曖昧な法律や、無責任に飼育を放棄した多くの飼い主により増えた殺処分があります。
表面的には、シェルター側の担当者が悪いように感じられますが、この問題の根底はもっと深いところにあります。
私たちがペットと共生するためにはどうすれば良いか、当事者意識をもって、人間も犬も暮らしやすい世の中を作っていく必要があるのではないでしょうか。