▲デビュー当時のコーダはまだまだふわふわのパピー毛。
モデル犬ってどうやったらなれるの?
モデル犬登録オーディションを終えて、合否が発表されたら所属登録費用を払ってモデル犬の始まり。
登録費用は事務所によって違うと思いますが、各企業に配られるモデル犬・猫のカタログに載せる宣伝材料写真、略して宣材を撮影する費用が含まれているそうです。
オーディションはビジュアルも必要ですが、オスワリ、マッテとフセ、マッテ、立ったままマッテでバチバチフラッシュをたかれて、ピピピピピと言うようなカメラの機械音が鳴って、写真を撮られても平気で居られる犬なら合格すると思います。
モデル犬事務所としては純血種から雑種犬まで様々なビジュアルの犬を集めておき、企業に提案できるように準備しておきたいので、よほど吠えるや、コントロール不能とか、攻撃性があるとかいう犬でなければ不合格はほぼありえません。
一番必要なのはマッテ
初仕事は雑誌
コーダの初仕事は、20代から30代の女性に人気の某ファッション誌でした。
都内某所の待ち合わせ場所に、事務所のエージェントに指定された時間の最低30分前には現地に到着しておきます。どんな仕事でも当たり前ですが、遅刻は厳禁です。
トイレと水飲みは済ませておき、すぐに撮影に入れるようにブラッシングをしておきます。
スタジオに入る前は綺麗に四肢とお尻まわりを拭いておき、撮影の2日前までにシャンプーやトリミングを済ませて綺麗にしておきましょう。
そうは言ってもコーダは犬なんです。
車を降りて待ち合わせ場所に到着し事務所のエージェントに挨拶をして、さぁ行きましょうかと言った時にくるくるまわりだし元気よく立派なウンチをしました。失敗してウンチをちょっと踏み、ふわふわサラサラの飾り毛をウェットティッシュで拭いてからの湿ったスタートです。
スタジオ入り
現場はハウススタジオと呼ばれる家型スタジオの場合や、屋外・室内の撮影スタジオなど色々ありますが、初仕事はハウススタジオで、「お家デートをする男女とその愛犬」と言う設定で撮影するとのこと。男性モデルの方はテレビでも見たことがあるとてもイケメンな方で、女性の方も雑誌専属の綺麗なモデルさんです。
概ね皆さん気さくで犬を見ると声をかけにきてくれたり触りにきてくれたりします。現場のスタッフさんが名前を聞いてくれたらはっきり伝えましょう。するとあとで雑誌に愛犬の名前を載せてくれる媒体もありますよ。
コーダの場合「え、ゴーダ?」「え?コーラ?」「コータ?」なんて何度も聞きかえされてしまう事も多いので「▽あーだこーだのコーダです」と言うと「コーダくんですね!」とご納得いただけます。
現場の雰囲気を大切に
そこで気を付けたいのが、スタッフさんに吠えたり、触られそうになったら威嚇すると言う犬では現場の空気を凍り付かせる事になります。私が思うに、モデルさん達は雰囲気や空気感をすごく大切にしています。
スタッフの皆さんも、より良い空気になるように皆明るく振る舞っているので、写真には写らないけど現場では音楽がかかっていたり、モデルさんも男女であったりすると撮影しながら何だかおしゃれな世間話をしたり、本物の恋人っぽく接したりしているので、モデル犬はその空気の中の住人にならなくてはいけないのです。
カジュアルな服なら元気の良い犬、大人な服なら賢くかっこいい犬、可愛い服なら可愛い犬に見えるようハンドリングするのが、モデル犬ステージママの腕の見せ所です。仕事数をある程度こなしたプロのモデル犬は現場の空気を読んで行動できるようになります(多分)。
しかし初めての仕事では、そんな事考える余裕もなく、ともかく1歳にも満たない仔犬なわが犬をカメラからフレームアウトさせないように必死です。周りの目よりも撮影をスムーズに進行させる為には、どんなことをしてでも愛犬をコントロールしなくてはなりません。
マテヨ、チョッ、マテヨ
「マテ~」「マテヨ~」「マテヨマテヨ~~~マテヨ~チョ、マ~テ~ヨ~」
片手を前に突き出し手のひらを大きく開いてまるで歌舞伎。
呪文のように、マテヨ~と。
髪型をヘビメタっぽくして「マテ…ヨォォ~ッ」と言いながら顔を白塗りにし、目の周りを黒と赤で隈取ると次から現場に呼んでもらえなくなるので注意が必要です。
しかし初心者ステージママはマテヨさんになってしまうのです。
オフ会とかで集合写真撮る時も、よく言ってませんか?
マテヨ~マテヨ~、チョッ、マテヨ~って。
その時の撮影では外でお散歩をしたり、室内でフセて天井を見上げるポーズでをしたり、男女のモデルさんの飼い犬として甘えた感じの演技をしなくてはなりません。目線をとらなければなりません。
それも30名位の大人と機材に囲まれて初対面の男女と仲良くし、かけ続けられるマッテの指示。動いてはいけないと念が送られてくるし、ママは必至だから多分これはマテばいいのかな?と思ってくれたのかな、奇跡的にコーダはポーズをとったまま動きません。
私が現場のステキな音楽もかき消すくらい必死にマテヨマテヨ言っているので、スタッフの誰かがマテヨーマテヨーって結構クセになりますね、マテヨー、マテヨー。と真似し出す始末。
私は脂汗をかきながら、気合と脅し声と奇声をあげてその場にコーダをとどまらせたのでした。今では、声で指示しなくても手のサインだけでオスワリ・フセ・マッテ・タッテ(起立)が出来るようになったのでもう▽マテヨさんにはなりませんよ!
コーダさん
数カットの撮影が終わり、
「コーダさん撮影終了です、ありがとうございました。」
と、現場のスタッフさんに言われて、
『へぇ!撮影現場ではコーダは”コーダさん”になるのか、そうか、かっこいいなぁ』と、ますます自分の犬が宝石のように素敵な存在に思えるのでした。
「はぁ〜終わった!面白かった」
『撮影現場ってなんて素敵なんだろう。一生の記念になったなぁ。コーダが雑誌に載るだなんて』と思っているところに事務所のエージェントから、「コーダ君は才能ありますよ」なんて言われたら、ますます燃えてしまいます。
「よぉし。めざせ大スター☆」
きっと誰にでも言っている初仕事を労う社交辞令のお世辞を、本気でとらえたあの頃の素直な私。
ジャンプで木にかけのぼる。タレントじゃなく忍者になるつもりか?!
その日から始まる謎のドッグトレーニング。
謎だけど、ついてきてくれるコーダ。
仕事が終わったらまっすぐ家に帰りコーダを連れて公園の隅で、日が暮れるまで、今思うと一体何やってたんだろうって言うトレーニングをひたすらしました。
もちろん目標は大スターです。
夕方、公園を通って帰宅する中学生達に陰で「達人」と呼ばれ馬鹿にされていたのを私は知っています。
▼【連載】コーダのテイクわん!記事紹介
前:コーダのテイクわん!~目指せ!わんこの星~
今:コーダのテイクわん!~初仕事の巻~
次:コーダのテイクわん!~闇雲トレーニング時代の巻①~
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