甘やかしすぎる、とは
犬を甘やかしすぎるのがどういったものを指すのか。それは人により様々な見方があります。甘やかし、甘やかしすぎ、には、これといった定義がなく、個人の感じ方によるところが大きいのです。実はこれはプロでも同じなんですよ。
ただ、判断する基準はあります。それは「その対応によって犬と人の関係が悪化しているか」という関係性の部分です。さて、ここからはその具体例を一緒に見てまいりましょう。
甘やかしすぎによって起きる悪いこと3選
これから出す例は甘やかしすぎている状態だと言えます。理由はいずれも犬の意思に飼主さんが従っている構図であり、それにより犬本位の関係になっているからです。
1.肥満、栄養不足
それがいけないのだと獣医さんに言われているけど、本当は愛犬のかわいいおねだりに負けてしまい、ついつい催促されるがままおやつをあげてしまう。という飼主さんは多いもの。
おやつは言わば犬の嗜好品ですから、与えすぎは肥満につながる可能性があります。また、おやつによる満腹感からきちんとご飯を食べない傾向にあります。愛犬に必要な栄養バランスを保つためにも、おやつは一日の量や時間を決めた方が良いでしょう。
2.苦手が増える
例えば身体を触られるのがもともと苦手な犬がいます。その場合、少しずつ少しずつ様子を見ながらトライして慣らしていきます。そうすれば、苦手がやがて平気に近づく日が来るでしょう。
犬が嫌がり唸ったからという理由で「あ、いやなのね。やめようね」。といったやり取りが何度か続けば、犬は「唸れば苦手なことをされずに済む」と学習してしまいます。これを繰り返すうちに結果として苦手なことが多い犬になってしまうというわけです。
犬により苦手ポイントは当然持っているものですが、色々な対策を用いて苦手を減らしていきたいですね。
3.周りに迷惑をかける
散歩時、犬がぐいぐいと先に歩き、飼主さんを引っ張っているかのような状態になっていませんか。そのような散歩の仕方が悪いわけではありません。ここで肝心なのは、いざというときに飼主さんがいつでもどこでも犬を制御できるかどうか。という部分です。
犬の気分の赴くままの速度や方向に飼主さんがついて歩くような散歩スタイルは、犬に自分本位で行動する権限を与えているようなもの。そうした甘やかしを続けるうちに、例えば犬同士のケンカや急な車道への飛び出しなどにつながることも考えられます。
周りに迷惑をかけないためにも、いつでも飼主さん主導で犬を制御できる状態でいたいですね。
関係性を見る
ここまで見てきた方は、甘やかしすぎは良くない結果を招くことがお分かりになったと思います。甘やかしすぎる行為が及ぼす弊害は、犬本位の状態にあります。平たく言うと甘やかしすぎは犬をワガママにさせます。
では、甘やかしすぎないために私たちはどうした態度で犬に接すれば良いのでしょうか。その答えは「厳しくする」ではありません。正解は、俯瞰して関係性を見る、です。犬と私たちの関係性を第三者的な目で見たときに「威嚇」「びくびくしている」「我がまま」「威圧的」「破壊する」「吠えたてる」などの行動や態度があるかどうかを確認してみるとよいでしょう。思うようにならなければ、吠えたり、噛みついてきたりといった行動を犬がすれば良好な関係が築けているとは言えないでしょう。我慢させたときに、指示を待っていたり、攻撃的な態度にならなければ良好な関係が築けていると考えてよいでしょう。その犬と家族との関係に問題がなく良好であれば甘やかしすぎているとは言えないのです。
まとめ
現代の訓練学では、犬は厳しくされるよりも優しくされた体験が多い方が温和に育つとされています。優しさと甘やかしの違いについては似ているようで非なるものであり、飼主は安定した精神と平等な優しさで犬に接するべきでしょう。
言うまでもなく過度な擬人化や、飼主の感情の上がり下がりは犬が混乱を起こさせてしまいます。
最後に、甘やかしすぎ、甘やかす、甘える、甘えさせる。これらの線引きは難しいものだと、訓練士のわたくしもいつも感じています。しかし「甘え」が優しさという気持ちに裏打ちされたものであれば、その先には良い関係が待ち受けています。犬の甘えたい気持ちを理解し、導いていけるような飼主さんになりたいですね。