低体重で生まれた犬は将来肥満になるリスクが高いという研究結果

低体重で生まれた犬は将来肥満になるリスクが高いという研究結果

出生時の体重と、成犬になってから体重過多や肥満になる率の関連を示したリサーチ結果が発表されました。その内容をご紹介します。

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記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

出生時に低体重だと肥満になりやすい?

眠るラブラドールの子犬

近年の人間の肥満に関する複数の研究において、出生時に低体重だった人は成人後に肥満になりやすいことが分かっています。そして、豚、ネズミ、モルモットにおいても同様の報告があるそうです。

しかし犬については、出生時の体重と成犬になってからの肥満との関連を調べた研究は今までありませんでした。世界中の犬の20~40%が体重過多または肥満であると言われており、犬の肥満の原因として犬種や避妊・去勢手術を行ったかどうか、運動量、食事内容などが指摘されています。犬においても人においても肥満は生活の質と寿命の両方に悪影響を与えるため、大きな問題となっています。

この度フランスの国立トゥールーズ獣医大学の研究所とガイドドッグの繁殖を行うNPO、そしてロイヤルカナン社が共同で、出生時の体重と成犬になってからの体重過多/肥満になる割合を比較分析するリサーチを行い、その結果が発表されました。

ガイドドッグ繁殖施設の犬がリサーチに参加

ラブラドールの子犬と母犬

リサーチのためのデータ収集には、盲導犬などのガイドドッグの繁殖に携わっている非営利団体の犬たちが参加しました。

この施設では純血種のラブラドールだけを育てており、母犬や生まれた子犬たちは均質な環境で生活していますし、データの採取と管理もきちんと行われているため、信頼できるデータを比較することができるそうです。

子犬は生後約9週まで母犬や兄弟と一緒に施設で生活します。生まれたばかりの時点から定期的に体重を測定し記録が残されます。

今回の研究では、この施設出身の繁殖用の母メス犬と既に引退したガイドドッグの合わせて93頭、1歳から9.5歳までの犬が対象となりました。繁殖用のメス犬は、出産の2週間前から子犬が生後9週でフランス各地の訓練所に行くまでの間は施設で過ごし、それ以外の期間はボランティア家庭で生活しています。この施設で生まれてガイドドッグになった後に引退した犬も同じくボランティア家庭で生活します。

研究対象となった犬を飼うこれらボランティア家庭の飼い主に犬を研究所に連れて来てもらい、成犬時の体重データ収集を収集しました。

生まれた時に小さい犬は、成犬時に太っている率が高い

太めのラブラドール

こうして同じ施設出で生まれ、生後約9週目まで同じ環境で生活していたラブラドールレトリーバー93頭のデータが収集されました。データには、出生時から子犬期の体重と成犬時の体重以外にも、年齢や性別、避妊または去勢手術を行っているか、視覚と触診によって判断された9段階の体型評価スコア(BCS)、体重とBCSから計算された体脂肪率、生後0日から2日の成長率、生後2日から15日までの成長率が含まれます。出生時の体重は、93頭のデータの中央値より少なかった犬を「低体重で生まれた犬」としました。また、成犬時のBCSについては5が理想的な体型であり、BCSが6以上の場合に体重が標準をオーバーしているとしました。

これらのデータを様々に比較してみたところ、既に知られているように、年齢が高くなるほど、または避妊や去勢手術をしている犬ほど体重過多/肥満が多いことが示されただけではなく、低体重で生まれた犬は成犬時の体重が標準をオーバーしている割合が高いことが示されました。この結果は、犬の年齢や避妊や去勢手術実施の有無を考慮して調整しても変わりませんでした。

  • 低体重で生まれた犬のうち、70%が成犬時の体重が標準をオーバーしていた
  • 中央値以上の体重で生まれた犬では、47%だけが成犬時の体重が標準をオーバーしていた

低体重で生まれた犬が成犬時に体重が標準をオーバーしやすい理由については不明で、さらなる研究が必要ですが、人間の研究において唱えられている仮説は、出生時に低体重であること、つまり母体内の発育が悪かった場合、少ないエネルギーで生きていくのに適した倹約型の体質となり、生まれた後には環境が良いと栄養を効率よく摂取しながらも省エネ運転をする体質であるため太りやすくなる、というものです。今回の研究結果から、犬における出生時の低体重と成犬時の体重過多が関連している理由について新たに示された点があるそうなのですが、今回の研究では対象となった犬の数が少ないことから、それが犬全体にあてはまるかどうかは犬の種類と数を増やして研究を重ねる必要があるとして、詳細は公開されていません。

また、今回の研究では新生子期の成長率と成犬時の体重との関連も調べられましたが、過去に報告されたことのある研究結果とは異なり、生後0~2日と生後2~15日の成長率と成犬時の体重が標準をオーバーしていることには関連が見られませんでした。このことより、低体重で生まれた子犬に積極的に栄養補給をすることの安全性が示されたと、研究者らは述べています。

まとめ

走るラブラドールの子犬

人での研究結果と同様に、生まれた時の体重が少なかった犬は成犬になってから、体重過多や肥満になる割合が高かったというリサーチの結果をご紹介しました。

犬においても世界中で体重過多/肥満は問題となっているので、このようにどんな犬が太りやすいかを知っておくと、早い段階で将来の健康リスクを予測でき、より適切な食事プログラムの作成などによって予防策を講じることができ、犬の健康と福祉の向上に役立つと研究者らは述べています。

《紹介した論文》
Mugnier A, Morin A, Cellard F, Devaux L, Delmas M, et al. (2020) Association between birth weight and risk of overweight at adulthood in Labrador dogs. PLOS ONE 15(12): e0243820.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0243820

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