出生時に低体重だと肥満になりやすい?
近年の人間の肥満に関する複数の研究では、出生時に低体重だった人は成人後に肥満になりやすい傾向があることが分かっています。
犬の肥満もさまざまな疾患につながり、太り過ぎている犬が増えていることも長きに渡って問題視されています。しかし犬の出生時の体重とその後の肥満の関連を調べた研究は今までありませんでした。
この度フランスの国立トゥールーズ獣医大学の研究所とガイド犬の繁殖育成を行うNPOが共同で成犬の体重と出生時の体重を比較分析するリサーチを行い、その結果が発表されました。
ガイド犬繁殖施設の犬がリサーチに参加
リサーチのためのデータ収集には、盲導犬などのガイドドッグの繁殖育成に携わっている非営利団体出身の犬たちが参加しました。
この施設では純血種のラブラドールだけを育てており、母犬や生まれたばかりの子犬たちの生活環境がよく管理されて均一であるため、データの比較に理想的です。
子犬は生後9週まで母犬や兄弟と一緒に施設で生活します。生まれたばかりの時点から定期的に体重を測定し記録が残されます。
母犬はこの施設の出身で、規定の年齢になると繁殖を引退してボランティアの家庭で生活します。この施設で生まれてガイドドッグになった後に引退した犬も同じくボランティア家庭で生活します。
これらボランティア家庭の現在の飼い主が犬を研究所に連れて来て、身体測定とデータ収集が行われました。
生まれた時に小さい犬は、成長後に太っている率が高い
こうして同じ施設出身で生後9週目までほぼ同じ条件で生活していたラブラドールレトリーバー93頭のデータが収集されました。データは年齢や性別などの基本データの他に、体重、体脂肪率、視覚と触診による9段階の体型評価スコアです。
93頭全ての繁殖施設時代の体重データと現在のデータを比較分析したところ、明らかな傾向が浮かび上がりました。データは犬の年齢や避妊去勢の状態などを考慮して調整した上で比較されています。
- 現在の体重が標準をオーバーしている犬のうち59%が出生時の体重が中央値よりも低かった
- 同じく現在体重オーバーの犬のうち出生時体重が中央値より高かったのは41%
- 現在の体重が標準以下の犬のうち64%が出生時の体重が中央値よりも高かった
- 同じく標準体重以下の犬のうち出生時体重が中央値より低かったのは36%
このように出生時に低体重だった犬の約6割が体重過多または肥満と測定され、生まれた時に中央値よりも重い体重だった犬の約6割が標準体重以下と測定されました。
人間の研究では、出生時に低体重つまり母胎内でも低体重だったために生まれた後に効率よく栄養を摂取できる低代謝(省エネ型)の体質になるよう、遺伝子が調整されるのではないかと考えられています。
犬の場合、これらの関連やメカニズムを知るためにはさらに調査研究を重ねる必要があります。
まとめ
生まれた時の体重が低かった犬は成犬になった後、体重過多や肥満になるリスクが高いというリサーチの結果をご紹介しました。
低体重で生まれることが悪いというのではなく、このようなデータを知っておくと早い段階で将来の健康リスクを予測でき対策を立てることができ、犬の健康と福祉の向上に役立ちます。
《参考URL》
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0243820