犬が人間の言葉の理解することについての研究
「犬は人間の言葉をどのくらい理解しているのか」というテーマの研究は今までにも数多く発表されています。中でもハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学はこの分野において興味深いリサーチを行い多くの論文を出しています。
最近のものでは「人間の言葉を聞いた時、犬の脳は人間と同じように反応するという研究結果」があります。
人間の言葉を聞いた時、犬の脳は人間と同じように反応するという研究結果
今回、同大学の神経倫理学の研究者が、犬が音声を聞き取る際のスキルと弱点について実験を行い、その結果を発表しました。
音がよく似た言葉を聞いて区別することができるだろうか?
この実験の狙いは、犬がよく知っている言葉、知っている言葉と音声的に似ている言葉、知っている言葉とあまり似ていない言葉を聞いた時に、犬がそれぞれどのような反応を示すかを探るというものです。
実験には17匹の家庭犬が参加しました。犬たちは起きている状態で頭に電極をテープで貼り付け、いくつかの言葉を聞かせた時の脳波が測定されました。
犬たちには3つの言葉を聞かせました。実験に使われた言語はハンガリー語です。
まず「伏せ」を意味するFekszikという言葉を聞かせます。次に母音を1つだけ入れ替えたFakszikという言葉を聞かせます。最初の言葉と音は似ていますが、この言葉は実際には在りません。最後に母音と子音の並びが同じであるだけのMatszerという全く違う音の言葉を聞かせます。この言葉も実際には無いものです。
日本語で置き換えてみれば「伏せ」「ファセ」「グメ」という3つの言葉を聞かせたという感じです。
実験の結果は、FekszikとFakszikの両方で脳波が活発に動きましたが、Matszerではほとんど反応しませんでした。つまり犬はコマンドとしてよく聞く言葉を認識しているが、音が類似した単語を区別することはできないということが分かりました。
犬は人間の言葉にしっかり耳を傾けている
この実験の結果をさらに詳しく述べると、言葉の音の細かい違いはあまり気にせずに認識するという点は生後14ヶ月齢の乳児とほぼ同じレベルの言語理解ということになるそうです。
また実験の前に興奮してしまって参加が中止になった犬も何匹かいたそうですが、その脱落率も人間の乳児研究の際とほぼ同じだったということです。
人間の音声を言語として理解する能力は14ヶ月齢から20ヶ月齢くらいの間に目覚ましい発達を見せるのですが、犬が音声を処理する能力は多くの場合ここから大きく伸びることは無いようです。
しかし過去の研究から犬は人間の声のトーンやイントネーションを理解できることも分かっていますし、今回の研究でもよく知っている言葉は認識できていることも分かっています。
言葉のちょっとした音の違いは犬にとって大きな問題ではないが、言葉に込められたトーンや感情は重要であると知っておくことは大切ですね。何よりも犬は私たちが発する言葉にちゃんと耳を傾けてくれているということがこの実験でも示されたのは嬉しいことです。
まとめ
犬は普段よく聞くコマンドの言葉と、それに音がよく似た言葉を区別することはできないが、知っている言葉に対しては脳が活発に反応するという実験の結果をご紹介しました。
考えてみれば、私たちも外国語の勉強を始めた時など発音のちょっとした違いの区別に苦労することがよくあります。それを思うと、人間同士の言葉の壁よりももっと大きな「種の違い」を超えて私たちの言葉に耳を傾けてくれる犬は何と寛大で素晴らしい生き物かと改めて感嘆したくなります。
皆さんも愛犬に何か指示を出したり話しかけたりする時、言葉に込めるトーンや感情を意識してみてくださいね。
《参考URL》
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.200851