犬と自然の中に出かけるとき知っておきたいこと
犬と暮らしていると、一緒に海や山など自然の中に出かける機会が増えるものです。普段の街の中の散歩とは違う楽しみを見つけてあげたくて、リードを外して自由に遊ばせるという人も多いかと思います。
自然の中での犬のオフリードについては、犬を飼っている人にとっては「愛犬のための貴重なレクリエーション」という認識の場合もありますが、犬を飼っていない人にとっては街中と同じく迷惑な行為と考えられます。
また自然の中では、たとえリードを付けていても犬が自然環境に影響を与えることがあります。スペインのバレンシア大学の研究者が浜辺に巣を作る野鳥と人間、犬、乗り物との関係についてのリサーチ結果を発表しました。犬と暮らす者として知っておきたい調査内容をご紹介します。
地中海のビーチに住む野鳥に人間が及ぼす影響
バレンシア大学の生態学の研究者が調査したのは、人間の存在が地中海のビーチで繁殖するシロチドリの孵化に人間の存在がどのくらい影響を与えるかということです。
「人間の存在」というのは人間に付随する犬や乗り物も含みます。具体的には「散歩する人間」「犬と散歩する人間」「バイク、ヘリコプター、飛行機」が近づいたとき、地面の上の巣で卵を温めているシロチドリの行動に変化があるかどうかが観察分析されました。
観察はカステリヨンとバレンシアの4箇所のビーチで行われました。シロチドリは浜辺に巣を作って卵を温めており、浜辺から少し離れたところに舗装された小道があり、人や犬が散歩を楽しめるようになっています。
野鳥の行動に最も悪い影響を与えたのは犬
シロチドリの行動で最も注目されたのは卵を置いて巣を離れたかどうかでした。少し意外かもしれませんが、巣から見える位置をバイク、ヘリコプター、飛行機が通っても、シロチドリの行動にはほとんど影響がありませんでした。卵を置いて巣から飛び立つという行動も見られませんでした。
人間が単独でビーチ沿いの小道を歩いたときには、巣を飛び立った鳥は12.9%でした。シロチドリの巣にもう少し近いビーチを人間が単独で歩いたときには、飛び立った鳥は47.6%でした。
人間とリードを付けた犬が小道を歩いたときには、巣を飛び立った鳥は80%で、人間とオンリードの犬がビーチを歩いたときには飛び立った鳥は93.8%にも上りました。さらに犬がオフリードでビーチを歩いた場合は100%の鳥が巣から飛び立ってしまいました。
親鳥が卵から離れて飛び立ってしまった場合、卵の温度が低下したり、反対に直射日光で高温になり過ぎたりして孵化することができなくなる場合があります。また、あまり頻繁に親鳥が危険を感じることがあった場合には、巣を放棄して完全に離れてしまう場合もあります。
研究者はこれらの結果からシロチドリの繁殖に最も悪い影響を与えるのは犬であり、たとえリードを付けていても野鳥の繁殖時期にはビーチへの犬の立入りを禁止する必要を訴えています。
また鳥の営巣地と人間が利用するエリアの間に緩衝地帯を設けることで、鳥が脅威を感じることなく人や犬に慣れることを助け、自然保護とレクリエーションの両立に役立つのではないかと述べています。
まとめ
スペインの地中海沿岸で巣を作っているシロチドリが、人間や犬が近くに来ることに脅威を感じて卵や巣を離れてしまい繁殖に悪影響を及ぼすというリサーチ結果をご紹介しました。鳥の種類や環境に違いはあっても、同じような現象は他の国でも観察され問題視されています。日本も例外ではありません。
愛犬を自然の中で遊ばせてあげたい気持ちは山々ですが、地球に住んでいるのは人間とその周辺の動物だけではないこと、犬は自然の一部ではないことを改めて認識して、自然環境を破壊しないようにしたいものです。大切な愛犬を悪役にしたくはないですものね。
《参考URL》
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/ibi.12879