幼い子犬は数を認識できるだろうか
犬が物の数を認識できるかどうかという研究は過去にも複数発表されており、数の区別ができているという証拠が示されています。新しいものでは、MRIを使って犬の脳の活動を観察したことで犬が数を認識していることを示した研究があります。
犬の脳は物体の「数」を人間と同じ部位で処理していることが判明!
しかし過去の研究のほとんどは成犬を対象にしており、幼少期の認知発達に関する研究はとても数が少ないのだそうです。
イギリスのクイーンメアリー大学の生物科学の研究者が、生後2ヶ月の子犬を対象にして彼らが食べ物の数を認識しているかどうかの実験を行い、その結果が発表されました。
お皿に乗せた食べ物の数を比較
実験に参加したのは49匹の生後2ヶ月の子犬たちです。犬種は様々で、実験は犬が暮らしているブリーダーの自宅で行われました。つまり未知の場所である実験室に行って馴染みのない研究者と実験を行うのではなく、馴染みのある静かな場所でよく知っている人と実験をしたということです。
実験は次のように行われました。
2つのお皿にトリーツを乗せて子犬に提示します。一方のお皿にはトリーツが1個だけ、もう一方のお皿には複数個のトリーツが乗っています。犬は2つのお皿のどちらか1つだけを選ぶことができます。
2つのお皿のトリーツの数は1対8、1体6、1対4の3種類が用意され、子犬はこれらを見せられて好きな方を選んで行きます。
実験の結果は、1対8と1対6の場合にはほとんどの子犬が数の多い方を選択しました。しかし1対4になると数の多い方を選択するという統計は成り立たなくなり、どちらを選ぶかはランダムな結果になりました。
また1対8の時は両方のお皿を見比べる時間が短く、すぐに8個の方を選んだのに対して、1対6では見比べる時間が少し長くなり、1対4ではさらに長くなって必ずしも多い方を選ばなくなったと明確な違いが観察されました。
犬も少しずつ複雑な数を認識できるよう学習していく
トリーツが1個のお皿と6〜8個のお皿では確実に多い方を選ぶのに、4個になると結果が曖昧になるというのは、2つの比較対象の差が小さくなると判断が難しくなることを示しています。
そしてこれは生後2ヶ月という幼い子犬でも数を比較するという先天的な能力を持っているということです。
同じ実験を成犬を対象に行った場合、犬たちはより難しい数の対比も区別できるのだそうです。このことから犬は数を認識して区別する能力は、限定的ではあるものの幼い頃からすでに持っており、成長と共により複雑な対比も認識できるよう学習していくことが示されています。
まとめ
生後2カ月齢の幼い子犬でも簡単な数値の比較を理解することができ、その能力は年齢を重ねるにつれ複雑なことも理解できるよう学習していくという実験の内容をご紹介しました。
私たちは人間が理解できることを犬も理解することに対して当然のこととして受け止めたり、反対に犬が理解していることを「犬に分かるわけがない」と誤解していることがたくさんあります。
しかし犬が何をどのくらい理解しているのかを正確に知ること又は知ろうと努力することは、犬とのより良いコミュニケーションに不可欠です。このようなリサーチの結果が、一般の飼い主が犬を理解する手助けになるのはありがたいですね。
《参考URL》
https://europepmc.org/article/med/32253517