犬の性格特性と年齢による変化
犬と暮らしている人にとって、年齢とともに少しずつ愛犬の性格に変化が出てくることはごく自然に受け止めていることだと思います。
同時に性格の中でもあまり変わらない部分と、大きく変わった部分があることも多くの飼い主が認識していることでもあるでしょう。
そのような犬の性格特性の変化について、ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の動物行動学の研究者が大規模な実験を行ってリサーチした結果が発表されました。
年齢によって犬の性格が変化していくという研究は、2019年にアメリカのミシガン州立大学の心理学の研究者が、飼い主への大規模なアンケート調査を行いその結果を報告しています。
今回は動物行動学という別の視点での報告です。さて、犬の性格はどのような変化を示したでしょうか?
ボーダーコリーを対象に性格特性をリサーチ
リサーチのための実験に参加したのは家庭犬のボーダーコリー217匹でした。
犬たちの年齢は6ヶ月齢〜15歳。1歳未満、1〜2歳未満、2〜3歳未満、3〜6歳未満、6〜8歳未満、8〜10歳未満、10歳以上の7つの年齢グループに分けられました。
犬はいくつかの性格特性を調べるための次のような種類のテストを受けました。
- 知らない人との挨拶など社会性を観察するテスト
- 目の前で食べ物をちらつかせる、非友好的な人が近づくなどストレスへの耐性のテスト
- 見慣れない物体に対する好奇心を観察するテスト
- ボールで遊ぶ様子を観察するテスト
- 飼い主から基本的なコマンドが与えられる服従テスト
- 蓋のついた容器の中の食べ物を取る問題解決テスト
全てのテストはビデオで録画され、犬の社交性、服従性、活動性、独立性、好奇心、問題解決能力、ストレス耐性などの性格特性の程度が分析されました。
犬の性格特性のうち一般的なものである恐怖と攻撃性については倫理面と安全上の理由から実験を行いませんでした。
性格特性の種類によって変化の速度はそれぞれに違う
年代別の傾向を見るために、年齢別に分けた7つのグループごとにテストの分析結果が比較されました。
さらに実験から4年後に参加した犬の飼い主にコンタクトを取り、再度実験に参加可能な37匹が同じテストを受け、その変化が分析されました。
活動性、独立性は1歳未満と1〜2歳未満の期間でもっとも減少しました。その後はゆっくりとしたペースで緩やかに減少が続きました。言い換えると、エネルギーのカタマリのようだった子犬期から1〜2歳の間に落ち着き始め、その後ゆっくりと大人になっていったということでしょう。
新しいものに対する好奇心は3〜6歳未満の時期まで大きな変化は無く、その後は着実に直線的に減少しました。
問題解決能力は6歳くらいまで増加を続け、その後は大きな変化がなく安定しました。
4年後に同じテストを受けた犬たちの変化では、当然ながら活動性は減少しました。一方でストレス耐性や社交性、服従性には変化のない犬が多かったということです。
しかし4年の時間の経過による変化は個体差があり、特に加齢に伴って身体的な能力の低下(視力、聴力、足腰など)があった場合には、性格特性にも大きく影響しました。
まとめ
犬のいくつかある性格特性の変化は年齢と共に一律に増加したり減少するのではなく、性格特性ごとに変化のスピードが違うこと、性格の発達や変化のスピードは個体差が大きいことがわかったというリサーチ結果をご紹介しました。
ストレス耐性、社交性、服従性という犬の性格の大きな部分を占める面は年齢による変化が小さいというのは、飼い主が心に留めておきたい点です。若い時期にこれらの性格特性を良い方向に伸ばしてあげることの重要性が伺えます。
研究者は今後別の犬種での実験など、より多様なサンプルを調査する必要があると述べています。
犬の性格特性が加齢によって変化する傾向の詳細が明らかになって飼い主の目安となるものができれば、子犬から飼い始めた愛犬の十数年後の様子を予測する助けになるかもしれません。
こういった研究が終生飼育のサポートとなる可能性にも期待したいですね。
《参考URL》
https://www.nature.com/articles/s41598-020-74310-7#MOESM1