犬の性格は時間とともに変化していくだろうか?
犬の個性や性格を調べるという研究は、比較的新しい分野です。
犬と暮らしている人なら「犬の性格が年をとるにつれて変わる?もちろん変わるよ。子犬から成犬になれば落ち着くし、年を取ると頑固になったりもするし」と思うかもしれませんが、データを集めて様々な事柄との相関を調べて、という作業から結論を導くのが「研究」です。
そんな研究を過去最大の規模で行ったのは、アメリカのミシガン州立大学の心理学の研究チームです。50種類以上の犬種とミックス犬を含む、1681匹の犬の飼い主を対象にして行った調査がベースになっています。犬の年齢は生後数週間〜15歳、性別はオスとメスがほぼ半々でした。
犬の性格が関連する3つの分野
この調査では、飼い主に対して「愛犬の性格の評価」「愛犬の行動」に関する細かい質問に回答してもらいました。飼い主たちは自分自身の性格についての質問項目にも回答しました。
これらを集計分析した結果「犬の年齢と性格」「飼い主と犬の性格の類似性」「犬の性格が飼い主との関係に与える影響」という3つの分野で、相関関係が見つかったということです。
年齢と性格では、
- 年を取った犬は若い犬よりも活動性、興奮性が低い
- 訓練に対する反応性は6〜8歳が最も高い
- 人や動物に対する攻撃性も6〜8歳が最も高い
- 服従訓練に最も適しているのは6歳前後
- 怖がり、不安の気質は年を経てもほとんど変わらない
飼い主と犬の性格の類似性では、
- 自分を外向的だと考える飼い主は、自分の犬を興奮しやすく活発と評価
- 自分を否定的な感情が強いと考える飼い主は、自分の犬を怖がりで訓練への反応が弱いと評価
- 自分を愛想がいいと考える飼い主は、自分の犬を人や動物への攻撃性が低いと評価
犬の性格と飼い主との関係では、
- 犬との関係性に幸福と満足度が高い飼い主は、自分の犬は活動的で興奮しやすいと評価
- 犬が攻撃的、不安感が強いことは、犬との関係性の幸福度においてそれほど重要ではなかった
犬と飼い主の性格の類似性については、評価そのものに飼い主の性格が反映されている可能性もあるので、ちょっと差し引いて考えた方が良いかな?という気もしますが、どれも興味深い結果ですね。
「氏より育ち」は犬にも当てはまるか?
英語には「Nature VS Nurture」という言い回しがあります。「生まれ持ったもの対育て培ったもの」、日本語の慣用句で言えば「氏より育ち」に当たる言葉です。
人間で言えば血筋や家柄、犬で言えば犬種や血統など持って生まれたものよりも、育った環境や教育、経験が個性や性格の形成に大きな影響を与えるという意味です。
研究者は、犬の性格が年齢=経験とともに変わっていくのは、まさにこの「氏より育ち」の結果であると説明しています。
服従訓練のクラスに参加した経験のある犬は、生涯に渡って前向きな性格特性を持つ傾向があったことも今回の調査からわかっています。
反対に社会化に失敗して極端に臆病な性格になってしまったり、間違ったしつけのせいで攻撃的になってしまったりした犬の例は日常的にたくさん見聞きします。
この研究は、犬の性格を形成する責任の大きな部分は飼い主にかかっているということを示唆する重要なものです。研究者は今後さらに踏み込んで、飼い主が犬に提供する環境が犬の行動を変化させる可能性を調査する予定だそうです。
まとめ
犬の性格は年齢とともに変わっていく、つまり訓練や経験さらには飼い主の性格が犬の性格の形成に大きな影響を与えているという研究の結果をご紹介しました。
日常的な経験から感じていたことではあるけれど、こうして統計をとった調査の結果と発表され、さらに踏み込んだ研究のステップになっていくことは犬の飼い主として心強い気がします。
そして改めて愛犬への責任を感じ、背筋が伸びる思いのする研究結果でした。
《参考》
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0092656618301661?via%3Dihub
https://phys.org/news/2019-02-good-dog-bad-personalities.html