全ての保護犬・保護猫に家族ができたのです
アメリカのテキサス州にある「Dallas Animal Services」というシェルター(動物保護施設)には、約200頭の保護犬・保護猫がいましたが、"Closed No More Pets"のメッセージを残して、一時閉鎖されました。
念のため言っておきますが、一時閉鎖した理由はネガティブなものではなく、全ての保護犬・保護猫に家族が見つかったためです。
約200頭の様々な事情を抱えた保護犬・保護猫全てに家族を見つけるのは、とても大変なこと。どんなアイデアで家族が見つかり、シェルターが一時閉鎖できたのでしょうか?
「Clear the Shelters」開催!
日本を含め、多くのシェルター(動物保護施設)にいる動物達には、検査や治療、ワクチン接種にかかる費用や、食費などの経費がかかるため、シェルター(動物保護施設)から動物を引き取る際には、ケースにもよりますが、ある程度の金銭的負担を求められます。
ちなみに、アメリカでシェルター(動物保護施設)から動物を引き取る際には、50~500ドル(5千円~5万円)程度かかるとされていますが、この引き取る家族の負担を0にする日「Clear the Shelters」というイベントを1日だけ開催したところ、「Dallas Animal Services」の約200頭の保護犬・保護猫達、全てに家族が見つかった、というわけです。公式Face Bookでは、たくさんの笑顔の写真が掲載されています。
Dallas Animal Services FACEBOOK
https://www.facebook.com/dallasanimalservices
このイベントは全米で大変反響を呼び、後日、全米中で再び「Clear the Shelters」を開催したところ、20,000近い動物達に新しいファミリーができたようです。
「Clear the Shelters」
直訳すれば、「シェルターを空っぽに!」
シェルター(動物保護施設)の存在自体が人間のエゴからはじまっている以上、どこかで人間が決着をつけないといけないだろう!?
日本で、このような感覚イベントを大々的に開催することはむつかしい面もあるでしょう。でも、綺麗事や正論で解決できないことを動かすためには、時に強引過ぎる心意気や勇気が必要なのかもしれない、そう感じませんか?
あなたの命はいくらですか?
動物福祉ネットワークによる草の根ポスタープロジェクト
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~s-kodama/Animal_net/
日本にもあるシェルター(動物保護施設)
ここ1~2年程でしょうか。私の住む地域にある動物病院やペットショップで、全国で1年間に殺処分された“いのち”の数が、犬2万8570、猫9万9671頭にあたることをストレートに伝えているポスターを見かける機会がぐっと増えました。
人間の都合で遺棄された犬や猫には、殺処分という最悪のシナリオが待っているケースがあります。それだけは避けたい!と願う人間が多いのも事実で、規模の大小様々のシェルター(動物保護施設)に類する施設があり、多くの犬、猫が保護されています。
新しい家族(里親)との出会いを待ちながら過ごす多くの犬や猫達が、みんな、新しい家族に出会える可能性は、けして高いものではありません。特に、持病がある子、人間に裏切られ傷ついた心が癒えない子、高齢の子達は、シェルター(動物保護施設)に類する施設内で大切にされながら、生を全うすることもままあります。
世界中の様々な取り組み
殺処分をなくす、シェルター(動物保護施設)に類する施設に預けられる犬や猫を一頭でも減らす取り組みは各国で行われています。殺処分0、殺処分場すらないドイツの取り組みが有名です。その一部を取り上げると
- 生体販売ショップがない
- 犬を飼う場合はブリーダーかティアハイム(動物保護センター)を訪れるのが主流
- 犬に(飼い主に)税金が課せられる
- 犬を飼う環境についての法律、躾の義務化
が挙げられます。また、
- 電車やレストラン等、犬と共に利用できる施設が多い
- ノーリードで散歩できる公園や広場が身近にある
- 公園に無料のウンチ袋が設置されている
など、犬に対するしっかりとした躾を含めた飼い主さんの良識ある行動や責任を前提に、日本よりもずっと犬と暮らしやすい環境があるという仕組みです。この話題は一時期頻繁に取り上げられましたが、ドイツ在住の方々を中心に「殺処分0」が本当の意味で実現されているわけではないという声もあがっています。
ティアハイム(動物保護センター)内で安楽死が行われている現状もあれば、ティアハイム(動物保護センター)に引き取られなかった場合は、かかりつけの獣医の元で安楽死が行われるetc… 真実を確認するのはむつかしい事ですが、様々な法律や規制を設けても、簡単なことではないというのだけは現実です。
まとめ
日本でも殺処分をなくすための取り組みは行われていないわけではありません。
保健所が犬や猫を引き取る際のハードルをあげましたが、引き取って貰えなくなったブリーダーが多数の犬を放置・餓死させる事件が起こっていたり、譲渡会の実施やwebでの飼い主募集も多くありますが、詐欺の横行場となっていたり、民間の有志で取り組んでいる「地域猫」についても、猫嫌いの方、猫の糞尿の被害に遭っている方からの理解は遠く得られなかったり・・・諸外国と状況は違いますが、解決にはほど遠いのが実情です。
長い歴史の中で、犬は猟をする、家や家畜の番をする存在として、猫はネズミや小動物を狩る等して、生活の中で「働き手」としてなくてはならない存在でした。時には戦争にも利用されていた犬や猫達が過酷な生活を余儀なくされていた事は否定できませんが、その瞬間、人間自身も平等に生きるか死ぬかの歴史を刻んでいたという背景があります。現代の様に、犬や猫の存在をペットとして・・・語弊はありますが「楽しみ」のために利用していたわけではありません。
「生後91日以上 2000円(生後91日未満は10頭につき2000円)」
これは、私の住む街の保健所が、並々ならぬ理由があり方々を手を尽くした末という条件の元に、犬や猫を引き取る(原則として殺処分)際に設定している価格です。ちなみに、近隣の市町村では2800円だったり1700円と金額の違いはありますが、ペットショップやブリーダーさんが販売している子犬や子猫の価格と比べると「0が一桁足りないのでは?」と感じませんか?
ペットは「愛玩動物」と訳されます。
そばに置いてかわいがったり、姿やしぐさ、声などを楽しんだりすることを目的に飼育される(出典:デジタル大辞泉)という意味です。様々な法律や規制があっても、それは人間が人間の都合で人間のためにつくられたもの。生きるか死ぬかを共にしていた時代と異なり、ペットという名称が与えられた時点で、どこかで、命の重さに上下をつけてしまった・・それが根幹にある事を認めなければならないのではないでしょうか?ペットと暮らす先進国で、自身の両親や配偶者、兄弟、こども、大事な恋人や友人に「2000円」という価格設定なんてできるわけないのです。
どんな場所にも見解の相違や歪みは生じますが、ペットを迎えるなら、ペットと生きていくなら、本当の意味で「家族」「パートナー」と捉え、飼い主それぞれが、もっともっと強く「貫くのが当たり前」という社会になるように、努力していくしかないのでしょう。
最後に、弁護士の大淵愛子さんのブログを紹介します。
予てより愛猫(シェルターから保護した兄弟)と暮らしており、妊娠中にも弱っていた子猫を保護、色々な経緯があり出産・育児も、挟み、色々な経緯の中下した判断、周囲の意見、懺悔などが書かれております。猫と愛息子、どちらも大事なのだという言葉が本当に胸に沁みます。そして、ペットを「愛玩動物」ではなく「家族」とするのは、飼い主の感情(愛情)だけでは制御できないシーンがあることも、赤裸々に綴られています。
「猫と赤ちゃんの問題」
http://ameblo.jp/ohbuchi-aiko/entry-12074628531.html
ユーザーのコメント
女性 めめ
女性 リュンヌ
保護される対象がうまれることがまずもって悲しい事実です。避妊や去勢にはそれぞれの飼い主様の考えがあり、正解はないと思いますが、手術をしない以上子供が生まれる可能性はゼロではありません。発情期に入ると妊娠させる気はなくても妊娠してしまっていることもあると思います。動物の赤ちゃんはたくさん生まれます。飼い主はすべての行動や判断に責任をもってほしいです。飼えなくなる事情などもいろいろあるとは聞きますが、ひとつの命です。様々な現場で働いておられる方は、もっといいたいこともたくさんあると思います。
私は一飼い主ですが自分の愛犬には何があろうと責任をもちたいと思っています。天災など非常の事態などがもっとも怖いです。
アメリカのシェルターのお話は、今まだ保護下にある動物達には明るいニュースですね。希望が広がりますように。
20代 女性 てとめる
40代 女性 SUSU
ただ、5000円~50000円の引き取り料が無料となったことをきっかけに家族に迎えることを決めた家庭が、この先、動物達にかかる経費(食費、医療費、その他の雑費)をどのくらい理解してその決断をしたのか、及び、シェルター側からそれらの確認はあったのかどうか、については不安を覚えるのも事実です。
また、そこのシェルターの本来の譲渡条件はそのままその日も適応されたのか、譲渡先の家庭環境の確認やその後のフォローは行われたのか?などの言及が記事になかったのが少し気になるところなのかなと思います。
動物保護に関しては、綺麗事ではすまされない背景があります。日本の保護団体でも内部の人間関係や資金をめぐるトラブルなど、善意から始まった活動でも維持していくのは簡単なことではありません。
このアメリカの試みは、多少、強引なことをしてでも現状を改善したいという現場の方のご意見から行われたことなのだと思います。この試みが失敗とされない為にも、譲渡先の里親さん達の責任は重大ですね。譲渡された全ての動物達が幸せになってくれることを祈っています。
なお、記事の最後にあった大渕愛子さんのブログを拝見しました。ちょうど一年前頃、友人が同じような状況で悩んでおりました。やはり動物と赤ちゃんが暮らすことはとても難しいことなんだな~と痛感致しました。
その友人は彼女が独身の頃からワンコと暮らしておりましたが、結婚後、妊娠をした際に、彼女の実家からワンコは預かるから落ち着くまでは離れて暮らすようアドバイスされていました。生後間もない赤ちゃんは免疫力も低く、ワンコと暮らすことを心配してのアドバイスだったそうで、友人も一度はその提案を受け入れていました。ただ、離れるんだと決心をしてから友人は体調を崩してしまい、自分がどれだけそのワンコを大切にし、そして癒しをもらって過ごしてきたのかを痛感したそうです。結果的に彼女はワンコを実家に預けることはせずに、自分で赤ちゃんとワンコの両方を面倒を見ることにしました。
体力には自信があったつもりだけど本当にしんどかった、でも後悔はしていないと話していたのが印象に残っています。
40代 女性 みけ