はじめに
僕は訪問型ドッグトレーナー兼ドッグリハビリスト。犬のしつけはもちろん、犬自身のサイコロジーリハビリテーション(※1)や、飼い主さんに犬の本質や知識、犬との関わり方をレクチャーするお仕事をしています。
愛犬家のお悩みにも様々なものがあり、緊急を要するものからそうでないものまで、本当に様々なご依頼を賜ります。
その中から、特に印象に残ったエピソードをここでご紹介します。
あなたの、幸せなドッグライフのヒントになりますように。
(※1サイコロジーリハビリテーションとは、犬が本来持つ、穏やかで安定した精神状態を取り戻す為のリハビリテーションのこと)
おてんばバーニーズ姫『さくら』
今回のお話は、僕のPCに一本のメールが送信されてきたことから始まります。
『わんぱぱさん!7ヶ月のバーニーズマウンテンドッグの女の子を飼っています。身体も大きくなり、飛びついたり引っ張ったり凄い力です。言う事を聞きません。こんな状況ですがトレーニングは可能でしょうか?』
(ふむふむ♪なるほど)すぐに返信しました。
『メールありがとうございます。もちろん可能です♪早々にお伺いしますのでトレーニングプランをご相談しましょう』
全体的に大型犬の飼い主さんは小型犬の飼い主さんに比べ、しつけに関心がおありですね。
そりゃ大型犬が人に飛びついたりしたら、子供さんや女性やお年寄りは転倒して怪我をしてしまいますから。でも、犬には何の悪気もありませんけどね。
今回は僕も大好きな人気の大型犬バーニーズマウンテンドッグ。僕の印象は「気は優しく力持ち!」でとても扱い易い犬種です。
しかし一つ間違えばパワーがあり過ぎて「暴れ馬」になってしまいます。
何せ数百キロの荷車をグイグイ引っ張る作業犬ですから、女性なんか軽く引きずります。散歩中に数十メートル引きずられて、全身傷だらけになった飼い主さんも過去におられました。
当日、僕は少し早く到着してご自宅の前に停車して待っていました。何気にバックミラーをふと見ると、遠くに犬を散歩させる?女性の姿が映りました。
「んっ?」とよく目を凝らすと、道路で大きな犬に「右に左に」と引っ張られる女性。正に右往左往とはこのことです。
「あの方かな?」と思って見ていると、
「ちょちょちょちょっと待って!さくら〜!だーめー!こら!待ちなさい!こら〜!さくら〜〜!」という声が聞こえてきます。体をくの字に曲げ今にも転びそうです。
「あらあら」と、慌てて車を降り、駆け寄りました。
「ハァハァ、あっ!わんぱさんですか?」
「はい♪大変ですね。持ちましょう」
リードを受け取りフッとさくらを見ると、天真爛漫キラキラした無邪気な目で僕に飛びついて来ます。「ドーン!」なかなかのパワーです!でも体は大きいですがまだまだパピーですね♪
でもその時、明らかに主従関係が逆転しているのが判りました。犬の本質として6ヶ月齢辺りで「群れの順位」が確定するんですね。
「先ずは興奮を抑える事ですね。そして犬の本質からご説明しましょう。そして接し方を。さくらのリハビリテーションは僕がやりますから♪」
「はい!よろしくお願いします!」
これでプランは決まりました。
カウンセリングサマリー
カウンセリングサマリー | |
症状 | 犬が興奮するのでしつけが出来ない。飼い主さんが力負けする。 |
原因 |
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対策 |
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さぁレスキューです!
最初にご説明しますが大型犬の興奮癖は危険防止の為、必ず抑える必要があります。愛犬家の方がよく勘違いされている犬が興奮している姿を「喜んでいる♪」と思っている事です。
犬の本質として、犬が興奮するのは特定の場合であって普段は「のんびり穏やか」なのが正常な状態なのです。
あなたが帰宅した時、犬がピョンピョン飛び跳ねたり走り回ったり興奮状態になるメカニズムは、犬が「こうすれば良いんだ♪」という間違った認識を刷り込まれたからです。
つまり飼い主さんが助長しているのです。犬が帰宅を歓迎してくれて「○○ちゃん♪ただいま〜!お利口してたねぇ♪うれちーの~よちよち♪」と撫で撫でする。
可愛がることを悪い事とは言いませんがこれは「興奮状態を褒めている」ことなのです。
犬にとって興奮しっぱなしは結構疲れるしストレスなのです。我々もそうですが誰と会っても相手が喜ぶと思い、気を遣い「ヒャッホー!イエ~イ♪」とテンションアゲアゲは疲れますよねぇ。
だから日常から「穏やかさ」を教えてあげなきゃいけないんです。
さくらにも「こうすれば楽なんだよ♪」という事をリハビリテーションの中で教えます。何より体力が有り余っている状態を解消してあげるために、当初7日間毎日訪問させて頂きました。
散歩をし、さくらと取っ組み合いのプロレス遊びをして発散と服従トレーニングを織り交ぜていくと、日に日に変化が現れました。
さくらは陽気で朗らかな性格で教えればどんどん吸収してくれるんです。ほんと憎めない無邪気なおてんば娘でした♪
僕が飼い主さんにお願いした事
僕は飼い主さんにこうアドバイスしました。
「7日間が終わりました。あとは飼い主さんが時間の許す限りさくらとプロレスごっこして下さい。女性にはキツイでしょう。しかしこれは良いスキンシップ、コミニケーションになります。そして終わる時は必ずあなたが勝って終わる事です。主従関係が改善されていく事が狙いです。それに飼い主さんに体力につけて頂く為です。それと散歩中は主導権は人だと言う事を教えながら歩いて下さい。全てに於いて力で対抗してはダメです。負けますよ。あなたの穏やかな雰囲気と毅然とした態度で言葉ではなくエネルギーで伝える訓練をして下さい。そしてポイントはさくらを犬扱いして下さい。人間の子供の様な扱いは絶対してはいけません」
その後、週一で訪問させて頂き、さくらより飼い主さんを徹底的に指導しました。結果は早く現れ、さくらは飼い主さんを認める様になり、コマンドも入り始めました。今回は本当に飼い主さんがアザを作りながら頑張って頂けたのが功を奏しました。
僕がいくら指導しても実践して頂けないと成果が出ません。数ヶ月後、さくらも穏やかになり飼い主さんも楽しく散歩できる様になりましたよ♪
そして今さくらは家族の一員としてとても大切にされ、楽しく過ごしています。
最後に
犬と楽しく幸せな暮らしを望むのであれば、犬の知識を勉強して下さい。真の本質を知る事で犬が幸せになれるのです。
例えばあなたの恋人が外国人だとしましょう。あなたはどうやってコミニケーションを取り親密な関係に発展させますか?身振り手振りゼスチャーですか?もっと簡単な方法がありますよね?
そうです。あなたがやる気になって相手の文化を知り、相手の母国語を覚えれば嘘の様にコミニケーションが簡単になり、意思疎通が上手くいくはずです。
犬にも全く同じ事が言えます。犬の事を知れば知るほど、あなたは犬を幸せにしてあげられるのです。バニ姫さくらとご家族は絆の元、とてもドッグライフを楽しんでおられます♪僕にとってこの仕事をしていて良かった〜♪と思える瞬間です。
わんぱぱ 《今日の格言》
犬の欲求を満たす優先順序は、
1、体力発散 2、ルール 3、LOVE
あなたは逆になっていませんか?